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見つけた!

 3日目も僕らの方に変化はなく、ただナギさんが持てる限りの道具類を買ってきてくれただけだった。

4日目もと言いたいところだが、相変わらずと言えるのは午前中だけだった。

昼過ぎに文字を追っていた僕の目に、一連の文字列が飛び込んできた。

「レウキオネ」。

一瞬何のことだか考え、やがてその単語が雪の女神の名前だと思いいたった。

慌ててその周辺の文章を読む。

「ドラゴンにひとつの傷さえつけることが能わなかったアルケラトスは、エピスティアに再び知恵を授けるよう頼んだ。

この女神は一計を案じ、従者デュナミスに雪深いバイス山に行くよう命じた。

かの山に住まう雪の女神、レウキオネの助けを得ようというのである。

デュナミスの申し出をレウキオネは快諾した。

レウキオネはすぐ、デュナミスにドラゴンのもとへ案内させた。

そして凍てつく吹雪を放って、怪物の動きを止めた。

アルケラトスは好機と見てドラゴンに立ち向かい、その心臓を剣で貫いた。

これにより怪物は息絶えた。

神々は勝利を喜び、酒宴を催した。

上座にはレウキオネが座り、その頭には寒椿の花冠が載せられていた」。


これなら行けそうだ。

レウキオネの吹雪は、氷属性の魔法で再現できるだろう。

あとはステラさんがナギさんに攻撃力強化の魔法をかけ、ナギさんがドラゴンにとどめをさせばいい。

僕は興奮して、ステラさんを何度かつついた。

彼女は集中していたのか、ぼんやりとした表情をこちらに向け、けだるそうに尋ねた。

「どうかしたのですか?」

「こ、これ。

これを見て」

「あの、私、古代語は読めないのですよ」

「ああ、ごめん」

 僕はそう謝ると、さっきの文を読み上げてから、思いついた作戦を伝えた。

ステラさんは真剣な面持ちで何度もうなずいて言った。

「なるほど。

確かにその方法は、なかなか有効そうですね。

では、その作戦で行きましょう」

「いや、もう少し調べてみる」

「そうですか。私の方でも、まだ調べてみますよ」

 僕らはそんな会話を交わし、夕方まで本にかじりついていた。

でも結局、ほかにめぼしい話は見つけられなかった。

だったらやっぱり、あの方法しかない。

名づけて「レウキオネ女神の吹雪再現してみる作戦」だ。


 僕らが宿屋に戻ったとき、ナギさんはまだ帰ってきていなかった。

もうすぐあたりが暗くなりそうだけど、大丈夫かなと思っていると彼女が帰ってきた。

「あ、先に帰ってたんだ。

待った?」

「いいえ、私たちもさっき帰ってきたばかりですよ」

「そっか、ならよかった。

ねえ、マインまでの行き方、わかったよ」

「本当ですか?

こちらにも、いい知らせがありますよ」

 ステラさんの言葉に、ナギさんは目を見開いた。

「ドラゴン退治の方法、見つかったんだ?」

「まだ可能性ですが、この方法にかけてみるしかないというところでしょうか」

「どっちから先に言う?」

「では、あなたから」

 ナギさんは軽くうなずき、町の人から聞いたというマインへの道筋を説明し始めた。

それほど複雑な道ではないが、行き先が炭鉱町というだけあって、途中から山道になるらしい。

僕とステラさんは、真剣に彼女の話を聞いていた。

聞き終わってからステラさんは、僕が昼間、王宮の書庫でしたのと同じ話をそっくりそのままナギさんに伝えた。

ナギさんは聞き終わると、真顔で言った。

「なるほどね。確かにそのやり方なら、あたしたちにもできそう。

ありがとう、ふたりとも」

 そう言われてステラさんは、かぶりを振った。

「私はなにもしていませんよ。

情報を見つけたのも、作戦を考えたのも、全部ダグラスです。

感謝なら、彼ひとりにしてくださいよ」

「そうだったんだ!

ありがとう、ダグラス。

あんた、やっぱりすごいね」

「う、うん」

 僕は一応、ナギさんの言葉にそう答えたものの、それ以上なにも言えなかった。

感謝されたうえに褒めてもらえて、うれしいというより恥ずかしい。

多分そのとき、僕の顔はいくらか赤くなっていたはずだ。


「道具は揃った、道もわかった、作戦も整った。

じゃああとは、マインに行くだけだね」

 ナギさんは真面目な顔でそう言った。

確かにこれ以上、マイン行きを先延ばしする理由はない。

というより、早くいかないとマインがどうなってしまうかわからない。

そんなことはわかっている。

わかっているのだが、怖い。

いや待て。氷魔法が使える僕は、作戦の要だ。

作戦が成功して、無事にドラゴンを倒せれば、僕らはマインの町民たちにとって英雄になれる。

そうだ、そう思うしかない。

自分が考えた作戦を信じなくてどうする。

「ねえダグラス、そろそろ寝たいから、自分の部屋に帰ってくれない?」

 僕の思考は、ナギさんのひと言で中断された。

仕方なく、おやすみと小さく言って、僕は自分の部屋に帰った。


 翌日僕らは王宮に行き、チャリス氏を呼び出してもらった。

この前と同じ応接室で待っていると、チャリス氏が悠然と現れた。

ナギさんは彼に、作戦を考えたのでこれからマインに向かうと告げた。

「そうですか、どうぞご無事で。

旅の安全をお祈りしております」

 それだけ言うと、チャリス氏はさっさと引っ込んでしまった。


ううむ、祈るだけで何もしてくれないのか。

ナギさんが言った通り、やっぱり僕らは嫌われ勇者とその一行らしい。

悔しくて仕方ない。

こうなったら、ますますマインを救って英雄になるしかなくなるじゃないか。

ドラゴンを倒した暁には、さすがの女王陛下も僕らを認めてくださるだろう。

ああ、だけど今回の作戦は、数ある異説のひとつに無理やりこじつけた、単なる思い付きだ。

それでも、僕らはこの作戦にかけるしかない。


「ダグラス、なにしているの?

早く行こう」

 いつの間にか先に進んでいたナギさんが、振り返って僕を呼んでいた。

一か八か、ここは自分の作戦にかけてみるしかなさそうだ。

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