男のプライド
翌日も僕とステラさんは、前の日と似たようなありさまだった。
しょんぼりして宿屋に戻ると、ナギさんが誇らしげな顔で出迎えてくれた。
「見てよ、これ。やっと買えたよ」
ナギさんは得意顔でそう言った。
彼女の目の前のテーブルには、3種類のアクセサリーが並んでいる。
ひとつ目は紫色の魔法石がはめ込まれた指輪、ふたつ目は古代語で呪文が彫られた腕輪、最後のひとつが2連の鎖の足輪だ。
話を聞けば、指輪は精神力、腕輪は攻撃力、足輪は素早さを、それぞれ上げる効果があるらしい。
腕輪の呪文を読むと、「この者に力を授けたまえ」と確かに書いてある。
「アクセサリー屋を探すの、すごく大変だったんだからね」
ナギさんは戦利品についてひと通り話すと、僕らにそう言った。
もっともステラさんは、値段を聞いて少し渋い顔をしたが。
それでも彼女は抜け目なく、ナギさんに次のお題を出した。
「ありがとうございます。
では昨日言った通り、今度は道具屋を探してきてください。
もちろん、できるだけ安く買ってきてくださいね」
「わかってるって。
アクセサリーも一応、値引き交渉はしたんだけどな。
道具類は大量買いするからとかなんとか、言ってみるけど」
「あとできれば、マインまでの道のりを聞き込みしてきてください。
いくらこちらがドラゴン退治の方法を見つけても、現地まで行けなければどうしようもありませんからね」
「ステラ、あんた、やっぱりちゃっかりしてるよ。
あたしの方も、割と忙しいわけね。
わかった、調べてみる。
じゃあ、そっちはそっちで、引き続き調べもの、お願いね」
「ええ、お互いにできることをしましょうよ」
「うん、じゃあ昨日みたいに早くご飯を済ませて、さっさと寝ちゃおう」
「そうですね。
行きましょう、ダグラス」
僕はなんとなくうなずいたけど、自分が蚊帳の外だなとちょっと思っていた。
「やっぱり僕は、必要ない?」
そんな言葉が、つい口をついて出てしまった。
ふたりがぎょっとしたように、こちらを見た。
「あんた、やっぱりまだ不安?」
ナギさんが困ったようにそう尋ねる。
また彼女に気を使わせたくないが、図星なので僕はうんと返した。
「確かに今まで、あんた抜きで話を進めていたかも。
それはごめん。でもあんたがいなかったら、今回の調べ者はステラひとりに負担がかかっていたことになる。
だからそう、うまく言えないけど、あんまり卑屈にならなくてもいいよ」
ナギさんは考えながらそう言ってくれた。
ステラさんも優しい表情をして、言葉を続ける。
「そうですよ。
あなたが古代語を読めるから、私はずいぶん助かっているのですよ」
「うん、そっか。
ありがとう、ふたりとも」
僕はとりあえずそう答えた。
だけど実感はなくて、照れくさくなっただけだった。
3人の間に微妙な空気が流れる。
「じゃあ、ご飯にしよう。
お腹がすいているときに考え事なんかしても、ろくなことにならないからね」
ナギさんが状況を打破するかのように、そう言った。
僕はうなずいた。
でも王都に来るときといい、さっきといい、僕はずっと女性に励まされてばかりだ。
逆だ、逆。
女性が落ち込んでいるときにそれらしい言葉をかけるのが、男らしいというか、紳士にふさわしいふるまいだ。
僕はまた、自分が情けなくなってしまった。
でもここでそれを口にすると、また彼女たちに励まされる。
だから必死でこらえた。
まあ、いわゆる男のプライドなんて、引きこもり歴の長かった僕には、もう残っていないんだけど。




