三人組とナゾの縁……。
「……じゃ、じゃあまずは自己紹介からお願いね?」
気を取り直してもう一回、例の逃げ出した子を含めた三人組が俺の部屋に集まった。
「分かったわ」
「りょうか〜い♪」
「は、はい……」
「あれ、ウタ、なんか借りてきた猫みたいに大人しいくない?」
「そう言えば、さっきからあんまり喋らないわね。何かあったの?」
「い、いや……な、何でもない……っ」
詩子と呼ばれた子はチラリとこちらを見るなり顔を赤くしてパッと目を背ける。
さっきのことを思い出しているんだろうな……。
メルは平気そうだけど、ちょっと気まずい……。
「じゃあ、私からね! 花守優映。ユエって呼んで! ダンス部では大会用のPVを作ってたわ♪」
頑張って覚えよう。
一人目はユエこと花守さん。三人組の中で一番背が高い。カールしたロングヘアーにおっとりとした喋り口調と優しい笑顔が似合う。のんびりした雰囲気で常に笑顔。
太っているという訳ではなく、女性的で丸みを帯びた体つきをしている。何だか母性を感じる人だ……。
「私は伊福部莉子。あだ名はリコ。ダンス部では衣装制作をやってたわ。よろしく」
二人目はリコこと伊福部さん。三人組の中では一番背が低くて身長が割と俺に近い。
ちょっとツンとした口調で外ハネしたセミロングの髪型が似合っている。目つきも鋭くどことなく気が強そうな印象だ。
「う、ウチは西宮……西宮詩子。ウタって呼んで。ダンス部では楽曲制作やっとった……よ、よろしく……」
最後の三人目がウタこと西宮さん。
身長は三人組の中では平均的。
内巻きのボブカットに関西弁が特徴的。さっきから緊張しているようだが多分普段はこんな性格じゃないんだろうな……。
というか三人とも可愛くて人気がありそう。
ダンス部ってそういえば可愛い子が多いって学校で評判だったような………………ってイテッ!?
「め、メル、何で急につねったの……?」
「いや、別に……」
いつの間にか背ろに来ていたメルにほっぺたをつねられて考えごとが中断した。
急にやめてよ、三人も驚いてるじゃないか……。
「で、みんなも二年生なのね。アタシも二年。姫宮メル。三人ともよろしく」
「……〜〜〜〜ッ!」
「なんでウタ、さっきから時々顔赤くしてるの?」
「さ、さぁ……?」
「……じ、実はかくかくしかじかで……アマチュアアイドルのコンテストに出たいんだけど、手伝ってくれる協力者を探してるんだ。三人とも興味ない?」
「なになに、それってリコたちも出られるの……?」
「私たちがアイドル……ちょっと急には想像できないけど、裏方ばっかりだった今までよりはやりがいがあるかしら。ねぇ、ウタはどう思う?」
「……えぇっ!? う、ウチ!? え、えっと……い、いいんちゃう……?」
「そっかぁ、ウタは賛成かぁ……」
「まぁ、私たちも、ウタがいいっていうなら……」
「ほ、ほんとに!? 急だったけど、いいの……?」
「私たち、ずっと三人組でやってきたし」
「今さら離れるのももったいないしね♪」
「あ、ありがとう……! これからよろしく!」
前途多難だけど、とりあえず協力はとりつけれらた。よし、まず一歩前進だな。
◇◇◇
「本当なら今後の方針とかを話し合いたいところだけど、今日は遅いから明日にしよう」
「そうね。ちなみに協力を頼みたいってことだったけど、各人の担当は元の経歴の通りでいいワケ?」
「ああ。慣れてる方がいいっしょ?」
「そうね、じゃあ衣装担当として最後にこれだけ伝えておきたいんだけど……」
帰り際、メルが伊福部さんと今後について話をしていた。
「今度衣装の採寸をさせて欲しいんだけど、みんなのスリーサイズって分かる? 分かるなら今聞いておいてもいい? 今後の参考に使いたいから」
「えっ、す、スリーサイズ……!?」
……って、おいおい。
なんか話が急に危険な方向に来てない????
「私は分かるわよ♪ 確か上から……」
「いや。待て」
「えっ、姫宮さん……?」
「スリーサイズは担当の人だけに伝えた方がいいだろう。ミクは照れ屋なんだ。だから後でアタシが測って伝える」
「あら、そういうことだったの。ごめんね、気を使わなくて……」
「い、いえいえ……だ、大丈夫ですっ!!」
花守さんが言おうとした瞬間にサッとメルに両耳を塞がれた。うっかり聞かせないぞという意思表示だろう。
「ん……? 後で、測って伝える……採寸……二人きり…………………………………ハッ!?」
「ウタ……何また顔赤くしてんの?」
「べ、別になんでもない! 気にせんといて……!」
あぁ、何だか先が思いやられる……。
それからほどなくして三人組が帰った後、メルから不意にたずねられた。
「なぁ、あの三人に声をかけたのは偶然なんだよな?」
「え、うん。そうだけど?」
「にしては三人とも可愛くないか?」
「ま、まあ、うちの学校のダンス部は可愛い子が多いって評判なくらいだから……」
「ちっ、また周りに女が増えるのか……そろそろキチンとその体が誰のものか教える必要がありそうね……」
「え、きゅ、急に何を言って……?」
「……脱ぎなさい」
「は……?」
「脱ぎなさいって言ってんの。採寸よ」
「え、ちょ、何で急にこのタイミングで……?」
「何でもだから。分かったらサッサと脱げっ」
「ひ、ひぃん…………ッ!?」
有無を言わさず制服の上を脱がされる。
とっさに胸を手で隠した。
「ふーん……へぇ……女になってからのアンタの体はそんな感じか……後でじっくり見ないとね……」
「は、恥ずかしいよぅ……メル……ッ」
ガチャッ。
「あー、そのー、すみません、ウチったらうっかりカバンを忘れてしまったみたいで、その辺に落ちてませんかね、ははっ。って……………………えっ!?!?!?!?」
「あっ」
「に、西宮さん……こ、これは、その……っ」
「し、し、し、失礼しましたぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ッ!!!!!」
「に、西宮さぁん!! ご、誤解だ!? ……ま、待ってぇ〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」
いや、我ながら何が誤解なんだ……? 見られてはいけない場面を二回も見られてしまった……っ。
西宮さんか。何か三人の中で一人だけ変な縁が出来てきてしまっているな……。