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新メンバー加入……?

 翌日、俺とメルは作戦を考えるために俺の家の俺の部屋に集まっていた。


「私たちのデビューを目指すにあたって、真面目に経験を積んで小さなステージから活動を始めるっていう手もあるけど、手っ取り早い方法がある……これだ!」


 スマホで見せられたのは何かのサイトの画面だった。


「……アマチュアアイドル・コンテスト?」



「そ。いくつかの芸能事務所が主催して、勝ったグループはどこかの事務所からデビューさせてもらえるっていう有名なイベントがあるの」


「知らなかった。けど結構前からあるみたいだね」


「会場もここから近いし……ぶっちゃけ優勝できなくても、どこかの事務所の目に止まればスカウトのチャンスもあるってワケ」


「じゃあまずはそれに出場することを目指せばいいんだね?」


「そういうこと。ただし、いくつかの問題があって……」


 メルは画面の下の方を指し示す。……何々。

 ーー使用楽曲はオリジナルのものに限定します……だと?


「この大会はテレビで放送される都合上、既存の曲が使えないのよね。それから衣装や事前に公開されるPVなんかを自作する人たちも多いわ」


「すごいね。何か本格的だ」


「結構マジなコンテストだって分かったっしょ? 最終的に協力してくれる人たちを探さないとダメかもね」


「なるほど……」


 やることはいろいろとあるようだ。

 

「…………なぁ、ところでさ」


「え、急に何、メル?」


「アタシら、さっきから何でこんなに距離とって座ってんの?」


「え?」


 言われてみれば確かに、メルは学習机の椅子に座り、俺はその前のベッドに腰掛けて喋っている。


 でも今までずっとメルが家に来たときはそうだったし、特に疑問を感じることはないはずだけど……。


「前はそうだったけどさ、今のミクだったらもうちょい近づいてもいいのかなって」


「は、はぁ」


「ちょっとそっちいってもいい? ……てかいくわ」


「え、ちょ、め、メル……?」


 うんと言う前にメルは何やらイタズラっぽい笑顔でこちらに近づいてきた。


 そのままベッドのとなりに腰掛けると、不意に体をこちらに倒してもたれかかってくる。


「う、うわっ、ちょっと、何」


「何だよ。イヤなのか?」


「い、いや。別にイヤではないけど……誰かに見られたら恥ずかしいかな、って……」


「別にいいじゃん。周りから見たら女同士のじゃれあいにしか見えないっしょ」


「そ、それは、そうだけど……」


 どうしたんだろう。最近のメルは何だか前よりも少し甘えん坊になった気がする。


 女になったことと何か関係があるんだろうか……。


「アンタさぁ……最近クラスの女子たちからも人気出てきたよね……?」


「え? ……うん。まぁ、ね?」


「ちっ、うなずくなよ。ミクのくせに生意気な奴」


「……横暴だ」


「あんまりアタシ以外の子にデレデレすんなよ。勘違いされたら困る」


「困るって、誰が……?」


「……ちっ。いい加減わざとやってんのか? ……お仕置きだ、コノヤロー!」


「うわっ、ちょっ、やめ……っ!?」


 前触れもなく押し倒されてベッドに下敷きになる。メルは頭上で両手をわきわきさせながら何故かニンマリと笑った。


「くすぐってやる、うりうり……っ!」


「や、やめてよ! くすぐったい! あっ、お腹は……あはははははははは……ッ!!!!」


 まずい。こんなところ誰かに見られたら死んじゃう。


 けれどメルのイタズラはだんだんとエスカレートし、ついには制服の中に手を突っ込んで脇腹をくすぐってきた。


「ちょ、直接はだめぇ……っ!? くぅっ……ふうぅぅん…………っ!」


「意外とガマン強いな。……でも、どこまで耐えられるかな?」


「うっ……くっ……」


「お、顔赤くなってきた。女になってからやけに色気あんのよね……ちっ、ムカつくからもっとやってやる」


「うぅ……ふぅん……はぁっ! ダメ、もう…………ッ!」




 ガチャ。





「ミライ、洗濯もの乾いたから持ってきたわよ……って」


 時が止まった。


 ドアの前で固まる母さん。


 それを見てベッドの上で固まる俺たち。


 




「……………………ごゆっくり」






 キィィィ。


 パタン。



 



 何かを察したのか、母さんは一言だけ告げて帰っていった。


「……あちゃー。見られたったな。ま、アタシは別にいいけど」


「………………は」


「は? ……どうしたんだ、ミク?」


「………は、恥ずかしいぃぃーー……!!!! みっ、見られた! 母さんに見られちゃったよぉ………!?」


「ま、今さらっしょ。アタシらの仲だし、どうってことないって」


「よくない! 俺は毎日会うんだぞ!?」


「あー、そっか。……ま、頑張れ」


「うぅ……っ、そんなぁ…………っ!」


 メルの下敷きになりつつ、俺は顔を真っ赤にしたまま恥ずかしさに泣いた。


◇◇◇


 そのまたあくる日、俺は考え事をしながら昼休みの学校の廊下を歩いていた。


 練習するスペースの確保や協力者探しなど、やらなくてはならないことはたくさんある。


 何か一気に解決できるような方法はないだろうか……。




「……ちょっと待て、何でウチらが出ていかなアカンのや!?」




 ん?


 あれは確かダンス部の部室だよな……?



 何やら教室の前でちょっとした騒ぎになっている。外に出ているのは部員らしき三人組。


 中にいる先輩らしき女の人に何やら抗議をしている。


「何度も言ったでしょう。あなたたちの作った衣装や楽曲はウチの部の雰囲気に合わないのよ。分かったら練習のジャマだから早く帰ってくれる?」


「なっ、言わせておけば人を邪魔者みたいに……っ!」


「チッ……」

「あらあら……」


「本当のことでしょ。それじゃあね」



 ガラガラッ。


 目の前で無慈悲に閉められる扉。

 残った三人は静かになってから話し合いをはじめた。


「やっぱり納得がいかん……何でウチらだけ毎回こんな思いせんといかんの?」


「仕方ないわよ。ダンス部の方針とは合わなかったんでしょう」


「そうは言ってもねぇ、これじゃ部活やってることにならないし……そろそろ私たちも居場所がないっつーかさぁ」


「うーん、やっぱりウチらで新しい部活に入ることとかも考えた方がええんやろうか……」




 三人組は真剣な表情で話し合っている。

 それを見て俺はハッとした。


 そうだ、あの三人を誘ってみるのはどうだろう。

 メルと俺の協力者にうってつけじゃないか?


「あ、あの……すみません!」




「「「えっ………………誰?」」」


 自然と声が重なる。


 勇気をもって俺は目の前の三人組に話しかけた。

一体どんなヤツらなのか……?

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