新生ユニット・爆誕!
先日の一件のおかげで、学校でもからかわれることはなくなった。
しかし、有名になった俺たちには新たに別の問題が……。
「見て見てミク君〜〜!♡」
「この間の踊ってる時の動画だよ〜〜!」
「何かネットでバズってるらしいな」
「SNSって広まるの早いからなぁ〜〜」
【この二人組可愛すぎワロタwwwwww】
【→URL:×××××××××××】
【なにこれwww】
【かわいいw】
【下手だけど可愛い……笑笑】
【駅前通ったときに見かけたわ】
【あたふたしてて可愛いww】
【これ毎回やってくれないかな?仕事終わりに通りがかったら見にいくわwwww】
【分かる! なんか見てると元気出るよな!笑笑】
SNSに広まった動画は、どうやら上手いダンスを踊る制服の女の子とその横で頑張って合わせてる女の子、のような文脈で広まったらしい。
まぁ……当たらずとも遠からずだ。
「このままもっと人気になったら、本当にアイドルのスカウトが来ちゃったりして…………きゃっ♡」
「まあ確かに、メルは可愛いからね。実際昔は本当にアイドルもやってたし……」
「「「「え〜〜……っ!?」」」」
「し、知らなかった!」
「姫宮って本当は芸能人だったのか!?」
そう。実はメルは幼い頃から子役として活躍し、その後は読者モデルなどの経験を経てアイドルになった元芸能人。
しかし最近の活動頻度は高くなく、知名度は少しずつ薄れていっている。
先日のステージの上では輝いていただけに、メルが何故アイドルを休んでいるのかは俺も地味に気になっているところだった。
「いや、でもさ、ミク君だって人気だよ?」
「そうそう! むしろネットでバズってるのはミク君の方だしね!」
「うん、上手い子に合わせて踊ってる可愛い子、みたいな感じで……!」
「え、そ、そうなの、お、俺が……可愛い……?」
注目されてかぁっ、と顔が熱くなる。
「あ、赤くなってる! 可愛い〜〜♡」
「はいはい、もうからかわないの!」
「あーー、そうだった……姫宮さんに怒られちゃう」
「じゃーねー! ミク君、また明日〜〜!」
◇◇◇
みんなと別れた後、俺はずっと気になっていたことをメルにたずねた。
「ねぇメル、何で最近アイドルは休みがちなの?」
「ま、いろいろあってね……」
メルには言いたくない事情でもあるのだろうか。
けれど俺はめげずに食い下がった。
「もしよかったら教えてくれない? もちろん誰にも言わないから」
「えぇ、どうしようかな……」
メルは何だか悩んでいるようだった。
そして不意にチラリとこちらを見てくる。
「……アイドルを休みがちになったのって、いつごろだったか覚えてる?」
「えっと、確か小学生の途中の頃だよね……? それでその頃、俺がメルにその……」
「そ、アンタが告白した頃。ねえ知ってる? アイドルって好きな人とあんまり付き合えない、ってこと」
「うん、知ってる。アイドルはファンのことも平等に好きでなきゃいけないからね」
「それで思ったわけ。もし好きな人ができても、アイドルとしての人生と好きな人との生活、どっちを取ればいいんだろう……って」
「え!? す、好きな人? 好きな人がいるの!?」
「……気づかないのか?」
意味深な視線にうろたえる。
そうか、メルには好きな人がいたのか……。
悔しいけど、それは幼馴染として応援しなきゃね。
でもそう伝えると、メルは何だか微妙な目をした。
「はぁ……昔からこのニブささえなければもっとモテると思うんだけどな……」
「え、何の話……? そ、それよりメルはさ、結局アイドルはもういいの? それとも続けたい?」
「うーん、そうだなぁ。昔からの夢だしアイドルにはなりたい。けど好きな人とも一緒にいたいし……両方叶えるためにはそれこそ超・超有名なアイドルになって、結婚とかしても人気が揺るがないくらいにならなきゃダメだよな…………そうだ、ミク!」
「え、何?」
メルは名案を思いついたかのように目を輝かせてこちらを見てきた。……何だか急に嫌な予感がする。
「お前も付き合え! アタシと一緒にアイドルの頂点目指そう! 私たち二人ならトップに立てるって!」
「え、えぇ……!? お、俺がアイドルぅ……!? 応援はするけど、何で俺まで……!?」
「…………お願い、ダメ?」
「う……っ」
手を繋いで可愛い声でお願いされる。
こんなときに上目づかいなんてずるいよ……。
「わ、分かった。協力する……」
「よし! それじゃまずはデビューする計画を立てないとな!」
「もぅ、急なんだから……て、ていうか、結局好きな人って誰だったの……?」
「ん? ………………誰だと思う?」
ぎゅっ。
腕を掴まれてウインクされた。
メルの行動の意味はときどき俺には分からない。
展開本当に遅くてごめんね…!
次回、「新メンバー加入」!