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【キャラクター作成】

「私ね……アイドルになりたいんだ!」



 昔、幼馴染がそう言っていた。


 そのとき俺はアイドルになるのってどんな気持ちなんだろうな、と思った。


 もし、自分の思い通りに姿形を変えられたら、それはきっと楽しいだろうな、なんて思った。



◇◇◇




【あなたも"アイドル"になりたいですか……??】




「ん、何だこれ……?」


 そのアプリはある日突然、スマホの中に現れた。


「……【キャラメイカー】……知らないな?」


 こんなアプリをダウンロードした覚えはない。

 消そうとしても何故か消えない。


 開いてみるとホーム画面にアニメ調のキャラクターが表示されている。


 そして一つだけ【キャラクターを作ってね!】というボタンのみが押せるようになっていた。



 どうやらオリジナルキャラクターを作れるゲームアプリらしい。



【まずはアナタの写真を撮ってね!】

【▶︎設定:カメラ機能をオンにする】


 マジかよ、結構本格的だな。


 ちょうど暇だったので試しにアプリで撮ってみた。

 すぐさま画面に俺の写真が表示される。



「……うっわ……マジかよ…………」



 そうして画面は【キャラ作成モード】に移行した。

 問題なのは最初に出てきたキャラクターの容姿だ。

 

「………………これ、俺じゃん?」


 そこで表示されたキャラクターの外見はどこからどう見ても俺だった。


 低身長、印象のうっすいオタク顔。

 極めて平均的なその他の特徴。


 どこを取っても間違いなく俺だ。


 ………………言ってて何だか悲しくなってきた。



「クソ……嫌なものを見た……よし、改良してやる!」



 意地になって俺は設定画面をいじくった。


 どうせならホーム画面にいたみたいな可愛いアニメ調のキャラクターにしてやろう。

 

 どうせ作るなら自分の好きなものを作った方が楽しいだろうしな。


【性別:  ♂  ▶︎♀  (−100pt)】

【手足:  短め  ▶︎長め  (−100pt)】

【目 :  小さめ ▶︎大きめ (−100pt)】


 おい、待て……。


 何でコイツ、初期設定と逆にすればするほどどんどん美形になっていくんだ……。


 チクショウ……何か目から汗が…………っ。



「クッ、こうなったら全部反対の設定にしてやる……!」


【身長:  低め  ▶︎高め  (-100pt)】

【胸部:  小さめ ▶︎大きめ (-100pt)】




【失敗しました:(原因)ptが不足しています。】




「…………んっ?」


 途中で何故だかサイズを変更できなくなった。


 どうやらポイントが不足しているらしい。

 仕方ない……多少は妥協するか。


【身長: ▶︎低め  高め  (+100pt)】

【胸部: ▶︎小さめ 大きめ (+100pt)】


 サイズを戻したらポイントが増えた。

 やっぱり変えるために必要なポイントだったのか。


「んーでも……何か思ってたのと違うんだよな……」


 最初は色気ムンムンのお姉さんキャラを目指していたのに、背を低くして胸を小さくした後は何だかヤラシイ表情の女の子みたいになってしまった。


 これじゃメスガキじゃん……。

 せっかくお姉さんキャラを目指してたのに……。


 画面の中にはやけに色気のある笑みを浮かべた貧乳幼女の姿が映し出される。


 思い通りにならなかった姿にやる気が失せた俺はベッドにスマホを放り投げ、そのままウトウトして眠りについてしまった。


 ………………そして翌日。




◇◇◇





「んームニャムニャ……うぅ、もう食べられないよぅ……」





 何だかありがちな寝言で目が覚めた。

 しかし、身体中にどこか違和感がある。


「あれ、俺の髪ってこんなに長かったっけ……?」


 ガシガシと頭をかくと何だか髪の量が多い気がする。


 違和感はそれだけではない。

 

 立ち上がっても背が低すぎるし、声はキンキン甲高い。まるでアニメのキャラクターみたいだ。


「あ……アニメといえば!」


 ふと思い出してスマホを手に取る。

 確か昨日は変なアプリを見つけたはず。


 ところが電源を入れて見てみると、不思議なことに例のアプリはホーム画面から跡形もなく消えていた。


 消した記憶はないんだけどな……。

 小首を傾げつつ、洗面所へと向かう。



 その着いた先で見た光景に、思わず俺は固まった。




「えっ、誰……?」




 鏡の中の知らない少女が俺と全く同じに動く。

 まさかとは思うが「俺」……なのか?


「ウソ、だろ……どうして、こんなことに…………っ」



《み〜〜く〜〜、開〜〜け〜〜て〜〜!》



 不意の声にビクリと肩をすくめる。

 どうしよう。

 こんな時に来客だ。


《いるんでしょ〜〜? 私よ私、幼馴染の姫宮メル! ねぇ外、暑いんだからさぁ、早く中に入れてよ〜〜!》


 げっ、メルだ……。

 ワガママだから追い返しても絶対に帰らないぞ。


 とりあえずこの姿は誰にも見られたくないけど。

 どうやって誤魔化そうか悩むなぁ……。


「メ、メル、その、ちょっと今日は都合が悪くて……」


《は……? その声……誰、アンタ…………?》


「お、俺だよ! ちょ、ちょっと風邪気味で声が変でさ……だからその、うつしたら困るし、今日はちょっと、入れられないっていうか……はは……っ」



《いや……どう考えても女の声しょ。何、ミクのくせにアイツ、この家に女連れ込んでんの? 私に内緒で? は? ちょっと?? 無理なんですけど……???》





 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャッ!!





 ひぃ…………っ!!


 何か、めっちゃ怒ってるッ!?


 ……いやてか、何で怒られなきゃいけないの……?

 ……別にアイツ、彼女でもないのに……??



《開けなさいよ! ねえ! あ・け・て……!!》



 ドン・ドン・ドン……!



「ひぃぃーーーー……ッ!?!?」


 ぎゃーー!!

 ドアが叩き壊されるーーッ!!

 

 たまらず開けたドアの前に、肩を怒らせた女が一人。


「……………………てめぇか?」


「えっ?」


「うちのミクをだぶらかしたのは、テメェか……?」


「え、いや、ちょ、落ち着……っ」



「このッ……泥棒女ァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ……ぶっ飛ばすッ!!!!」


「ぐぇぇえーーーッ、ぢょっ、首、じまっぢゃっでるがらぁーーーーッ!?」


「あたしのミクを返せーーーーーーーーーー!!!! このっ、メスガキーーーーーーーーッ!!!!!!」



「お、落ぢ着いで……でが、ぞもぞも本名『ミライ』なんだげど……ごの歳で『みぐ』っで呼ぶの、いいがげん恥ずがじいがらぞろぞろヤメでぇ………………っ」



「ん、そのセリフ……まさか、ミク…………? ど……どうして急にそんな姿に…………!?」


「ま、まざが、ごの名前が役に立づ時がぐるどは……」


 怒り狂った幼馴染に押し倒され、薄れゆく意識の中で俺は初めて自分の変なあだ名に感謝した。

 需要があったら続きも書きたい。


 あとやっぱエッチなメスガキ(合法)って最高だよね…。

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