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黒い人

 そういうのって遺伝するものなのかな、とにかく親子ともども霊感があったそうです。

 その人も、その人の父親も。


 子どもの時に、初めてそれを見た時、気持ち悪いものがいるって騒いだんですって。

 首のない男の人が歩いていて、それに大騒ぎした。

 でも、誰にも理解されずに、周囲の皆に何言ってるんだ、って顔をされたけど、父親だけはこっそりと、「おお、確かに首がないな」って。


 父親は拝み屋みたいな仕事をしていたそうです。幽霊退治、みたいなことをしていたのかも。


 その人は、別にそういう仕事をつぐことなく、ごくごく普通に成長して、普通に仕事をして、その中で私とも知り合いになって、その縁でこの話も聞けたんですけど、それはおいといて。


 大人になるにつれてそういう霊感が鈍るとかそういうこともなく、それでも自分の中で折り合いをつけて、そんなものを見ても騒がないようになっていったらしいんですけど、その人が困ったのが、幽霊ではなくて。


 黒い人、ってやつです。


 知っていますか、有名だから。黒い、影のような人型。黒い人。もうすぐ死ぬ人の側に現れると言われているやつですね。

 死神がその正体なんじゃあないかって言われていますけど。

 そうです。その黒い人も、見てしまっていて。それはかなり、大変だったみたいですよ。そりゃあ、そうですよね。もうすぐ死ぬ人が分かっちゃうんですから。なかなか折り合いをつけるのは難しい。


 父親に相談したらしいです。その時には、もうその人の父親は拝み屋も引退して、隠居みたいなことをしていたらしいんですけど、相変わらず霊感はあったらしくて、そういう方面ではまだまだ頼りになっていたから。


 父親も、やっぱり、何度も黒い人を見たことはあるそうです。

 それで、父親のアドバイスは、「気にするな、もし誰かの側に黒い人が見えたら、その人には優しくしてやればいい」っていう。まあ、でも実際、そうするくらいしかないんでしょうね。


 それから数年、その人はまた、黒い人を見かけたんです。よりにもよって、父親の側で。


 父親も、その黒い人は見えていて、ぼんやりと眺めながら「俺にも来たか」って、随分落ち着いてたそうですよ。それから、体調を崩した父親が入院したのはすぐだったそうですよ。

 あっという間に悪化していって、今夜が峠だって状態になって、その日、病室のベッドの側で、他の家族や親族と一緒に、父親を看取るためにその人は待っていたんですって。


 父親は数日意識を取り戻していないし、骨と皮くらいに痩せているし、もう来る時が来たな、っていうのはその人には分かっていたんです。それだけじゃあなくて、父親の寝ているベッドを取り囲むように、黒い人が何人も何人も、そこにはぎっしりと集まっていたそうです。だから、もう、今夜、父親を看取ることになるだろうって、そう分かっていたそうです。


 深夜3時頃。

 その人が見ている前で、突然父親が目を開けたんですって。

 そうして、周囲の黒い人を見回して、


「何だ、こいつら」


 他の家族や親族は、意識が朦朧としているから幻覚でも見ているんだろうと思ったんでしょうけど、その人だけは、同じものが見えているから、すぐに分かったんですって。だから、父親の耳に顔を近づけて、


「黒い人だよ。知っとるやろ」


 でもね、その人の父親は、それを聞くと苦しそうに首を振ったんですって。


「違う。何だ、こいつら。どろどろの」


 そう言ってもう一度見回してから、そうして、亡くなったそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お祓いなんかしてると [一言] つけがリボ払いになるのかしら。 (3話のは、ちょっと唸ってから思い至りました)
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