63話 もうやだこのチート親子 (ノД`)
「本当にこんなお願いでよかったのかい?
学園の試合に王族が参加して見ているだけでいいなんて」
ホテルの屋根の上で、父が聞いてきました。
執務中こっそり抜け出して父が私に会いにきてくれたのです。
テレポートのやり方を教えたら、あっさり父も覚えてくれました。
「やったー♪これでいつでも好きな時に子供たちに会える♪」と喜ぶ父の後ろでセディスが、「覚えられないから!普通教えたからって覚えられないからっ!!チートすぎてもうやだこの親子」と泣き崩れていたのは遠くもない秋の思い出です。
「……十分です。ありがとうございます」
と、私が言えば父は「うん、そうか」にっこり微笑んでくれました。
いつもと何らかわらない父の態度に安心します。
魔族を倒した後、あれほどの力を行使したのに、父は私の力について、何一つ責めませんでした。
目を覚ました私を笑って抱きしめてくれたのです。
何故秘密にしていたのか、一言も責めずに。兄のリュートも「無事でよかった!ありがとう」と笑ってくれました。
それがどれほど嬉しかったでしょう。
巨大な力故、母にも父にも愛されず、恐れられ、封印され、闇の中で泣き叫んでいた過去の私にはどれほど嬉しかったかわかりません。
恨みのあまり手に入れた力で、虐げていた両親や領民を力ねじ伏せて、無理やり従属させたけれど……恐怖で服従するさまに虚しさが増すばかりだったのです。
父が屈託なく笑って私を抱きしめてくれた時。
私は気づきました。
私の中には複数の記憶が存在すると。
それが具体的にどういった記憶で誰のものなのかは思い出せません。
戦っていた時はもっと鮮明だったような気もするのですが、よく思い出せません。
ベースは日本人な気もするのですが、私の中にはもう一つ別の記憶が存在します。
もしかしたらもっと複数の記憶が入り混じっているのかもしれません。
力を手に入れた代償なのか。0歳という自我が確立していない状態で闇の女神の力を手に入れ複数人の記憶を取り込んでしまい、自分が日本人だと思い込んでいるだけなのか……それはわかりません。
ただ、分かることは、私は今、欲しかったものすべてをちゃんと手に入れてる気がします。
恋焦がれていた優しい両親。心配してくれる兄弟。そして――友達。
魔族を倒し、父たちと別れ教室に帰れば、泣いて真っ赤になった目を隠すように微笑んでアリーシャが抱きついてくれました。
アリーシャだけではありません。クラスの皆私を心配してくれてました。
クライム君も、ジャンもリカルドもリーチェも。
今まで憧れて、切望しても、力のせいで恐れられるばかりで手に入れる事のできなかったものが、すべて手に入れられています。
こんなに幸せな事があるでしょうか。
自分でも、何故こんな優しい両親なのにちゃんと話す事ができないのか。
何故こんなに力をもっているのか。
私という存在が、本当にセレスティアなのかそれとも日本人なのかそれとも別の何かなのか。
そして何を恐れているのか……よくわかりません。
それでもきっと、ここに居る優しい人たちは私の事を受け入れてくれる気がします。
「ありがとうとございます。お父様」
私がそう言えば、父は私を抱き寄せて頭を撫でてくれました。
あとでちゃんとアリーシャやクラスのみんなを父に紹介したいと思います。
できれば母も学園に呼べると嬉しいのですが。
そんなことを考えながら久しぶりに父に甘えながら私たちは月夜を見上げるのでした。








