51話 エルフの大賢者
時は少しだけ遡る。
薄暗い石造りの室内に大きな円卓があり、その周りをぐるりと魔族達が取り囲んでいる。
「どうやら聖王国と剣王国、魔術王国が同盟を結ぶ動きがあるそうです」
細身のほぼ人間に近い容姿の魔族が報告すれば
「どういう事だ?聖王国が孤立するように魔術王国と剣王国には聖王国を憎むようにする暗示をかけたはずだぞ!?」
魔術師風の魔族が叫ぶ。
「詳細はわかりません。ですが、動きがあるのは確かです」
「まずいな。魔王様復活の為には聖王国の国民と王の血が必要……下手に手を組まれると厄介な事になる」
「それならばいい手があります」
「ほう?どうすればいいと?」
「極秘にしいれた情報ですが今、サラディウスには聖王国の姫、剣王国と魔術王国の王子が学びに行っているらしいです。その3人を殺し、聖王国の姫の護衛が剣王国と魔術王国の王子を殺したことにし、聖王国には魔術王国と剣王国の手のものが姫を殺したと吹き込めば勝手に争ってくれるでしょう」
「……なるほど、それはいい考えだ。すぐに刺客を送れ」
「人間の世界が混乱するさまが目に浮かびますな」
「まったくです。久しぶりに楽しめそうだ」
と、楽しそうに笑う魔族達。
「さぁ、魔王様の復活に向けて、全力を尽くそうではないか!!!!」
一人の魔族が叫べば歓声が上がるのだった。
魔王(´・ω・`)<我滅んでるんだけどなぁ……
■□■
そして現在。バサバサと、風をきって魔族の羽音が空に響く。
魔族達はサラディウスにいる姫と王子二人を殺すため、山道を飛びながらサラディウスに向かっていた。
その数は20体。街につくなり彼らは人間になり、王子達をさらう手はずになっている。
「サラディウスに忍び込んで秘密裏に殺すのはいいが、結界はどうなっているんだ?
サラディウスに入れるのか?」
背の高い魔族が聞けば
「サラディウスは無能な人間を代表につけた。予算をケチって結界はおろそかになっている」
と、体格のいい魔族が答える。
「まったく人間はこちらが手を下さなくても勝手に自滅してくれる。楽なものだな」
くくくくと、魔族達が笑っていれば前方に何か人影のようなものが現れた。
全身をローブに身を纏った人間が少し小高い丘でまるで魔族達を待ち構えているかのように立っていたのだ。
「おぃ、前に何かいるぞ」
魔族が指させば、そのローブの男の顔を見るなり魔族の一人の顔が青ざめる。
「あれは……まさかエルフの大賢者ファンバード!?」
そう、目の前に現れたのは、神々から勇者を認定する使命をおび、魔王が現れるたびに勇者とともに魔王を封じてきた、エルフの大賢者。
ファンバード・ランドゥエル。
茶髪で端正な顔立ちのエルフの大賢者は魔族を見てため息をついた。
「やれやれ、勇者様を探す予定でしたが、まさかの魔族の襲撃に出くわすとは。
都市にはいられては面倒です、ここで滅しておきましょう」
と、杖を構える大賢者。
「たった一人で何ができる!!!」
「魔王が復活してない現在。あなた達が私に敵うとでも?」
エルフの大賢者がいいつつ、魔法を放とうとしたその時。
ばしゅ!!!
エルフの大賢者の前で、20体の魔族の頭が一瞬で粉々に吹き飛んだ。
「なっ!?」
粉々に吹き飛んだ魔族は一瞬で青い血をまき散らしながら、灰と化し消えていく。
「……魔族だけ……消滅した……この波動は……サラディウスから?」
エルフの大賢者は後方にある都市サラディウスをみつめるのだった。
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