49話 ぐぅの音もでない
「それで具体的には何を?」
レベル250の敵がでてくるダンジョンの中央。
かなり広いホールのような空間の真ん中で私たちは待機していました。
クライム君が不思議そうに聞いてきます。
正直レベルをあげるだけなら私が倒して、みんなは私にバフ魔法をかけていればいいのです。
このゲームはバフ魔法をかけていれば経験値がもらえます。
ですがそれでは彼らの自信にもつながりません。
「これです」
私が取り出したのは笛でした。
「え!?それはモンスターを呼び出す魔呼びの笛じゃないですか!?
こんなホールで使うとか正気ですか!?」
セディスがいいます。
「はい。皆で倒します」
「ってここレベル250ですよ!?」
「大人組が主力です、頑張ってください」
「ちょ!?鬼ですか!?」
私はセディスの言葉を無視して笛を吹きます。
ぴぃぃぃぃという音が響いて、ダンジョンが地響きが聞こえてきました。
ダンジョンに居るモンスターがこちらに一斉に向かってきているのでしょう。
身につけなければいけないのはピンチの時の応用力です。
いざという時のために倒す算段をつけなければいけません。
皆慌てるでしょうか?
と、チラリとフレンドsを見れば
「ここまでのレベル差があるといくら熟練度が高いとはいえ僕たちの攻撃は通りません!
攻撃は大人3人に任せましょう私たちは防御壁を!
大人組が前方だけに集中できるようしましょう!!!
南西の方向を入り口にしてフォーメーションDです!!」
笛とともにクライム君が叫び
「オッケー任せて!!」
リーチェが
「アースグラッド!!!」
と、私達の前方だけ開けた状態でに天井まで続く土の壁を作り。
「ミラージュレフィティ!!」
アリーシャが周りの景色と一体化する魔法をその土の壁にかけました。
さらに幻影作用もかけているので匂いも魔力もほぼダンジョンの壁となっていてこの偽装はなかなかのものです。魔法熟練度が高いからこそできる芸当でしょう。
「ダミーホルム!!!」
ジャンとリカルドが壁に体当たりされないようにでしょうか。
ヘイト(敵のターゲット)を集め気をそらさせる人形を左右に立てました。
これはなかなか。
土の壁をダンジョンの壁と誤認させ、ダミーの人形でヘイトを集めルートを逸らさせる作戦。
この魔法のおかげでモンスターは前方からしか襲ってきません。
「僕達は主力の3人の攻撃を邪魔しないように全力でサポートします!!
フォーメーションBです!!」
「「「「はいっ!!」」」」
クライム君の指示で、フレンドs達は各自それぞれの特性に合ったフォローに回ります。
流石です。
ここでいきなり敵に囲まれどうしようもなくなったときの絶望感を味わっていただく予定でした。
ぐぅの音もでないほどの絶望感を味わい、修行に打ち込むと言うよくある、俺つえぇぇ物の修行の開幕を真似したのですが。
ぐぅの音もでません。
私が。
ちょっと皆優秀過ぎではないでしょうか。
「君達連携とれすぎじゃないっ!?」
セディスが突っ込み
「もちろん!セレス様を全力サポートするために夏休み中に皆で練習しました!
皆さんを全力で補助させていただきます!」
「サポートは任せてー!」
「うん、私達もセレスちゃんの役にたたなきゃ!」
「おんぶに抱っこは性にあわないからな!!」
「サポートはお任せください!!」
と、フレンドs。
各々、大人sのさばき切れなそうなモンスターのターゲットをジャンとリカルドで交互にとり、気を逸らさせたり、アリーシャとリーチェが大人sの攻撃にさらにパワーが増す魔法をかけたり、クライム君が召喚で大人sが対応できるだけの敵が来るように調整しています。
なんていい子達なのでしょう。
私より強くなるのは無理と早々に判断し、サポート面での能力を身に着け連携を完璧にしています。
私が家族sと夏休みをのほほんと楽しんでいる間、フレンドsは集まって修行をしていたようです。
私もそれにまざりたかったです。
……全部クライム君に任せたほうがいいんじゃないでしょうか。
チートキャラが育成もできるというのはそもそもWebの俺つぇぇぇ小説の幻想です。
あれは頭がいいキャラだからこそできるのであって、元がおバカな私がやるよりも、頭のいいキャラに任せたほうがいいのかもしれません。
「皆、主力の三人にそれぞれサポート魔法をかけるのを忘れないでください!
補助魔法で経験値ももらえます!これはレベル上げの一貫です!」
と、手早く指示を飛ばすクライム君を見て思うのです。
眼鏡キャラはやっぱり頭脳派だと。











