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43話 夏休み(ジャン視点)

「……で、ジャミル。お前につけたスペシャルナイトラステルの報告は本当なのか?」


 剣王国の謁見の間で剣王国国王に聞かれ、ジャンはこくりと頷いた。


「聖王国のセレスティア様の力は本物です。

 魔獣『グローズ』を一撃で倒しました。おそらくレベルは300以上。

 下手をすれば400あるかもしれません。

 セレス様よりレベルが上の聖王国国王については400以上だとお考えになった方がよろしいかと」


 と、国王に報告する。

 本来なら王族という身分を考えれば、もっとレベルの高い堕天使を倒した事を報告するべきである。

 だが国王との信頼よりもジャンはセレスとの信頼関係を選んだ。

 

 尊敬と敬愛、ともに世界のために魔王を倒すと言う目標――そしてここ数ヶ月で築いた友人関係。これらを壊したくないからだ。

 記憶を消しもせず、ジャン達を返したということはそれだけ信頼しているという事を示している。それを裏切るわけにはいかない。

 堕天使の事はセディスに口止めされているため話すわけにはいかなかった。


「しかしあのグローズを一撃とは……」


「ラステル」


「は」


 言われて、ジャンの護衛ラステルがファティナの株を25本とりだした。


「それは……」


「ファティナの株です。

 先日セレスティア様と取ってきました」


 このように大量に株を手に入れるには一撃で倒したからに他ならない。

 実際は餌でおびき寄せたのだが、セレスの見つけ出した攻略法をセレスの許可なく伝えるつもりはない。そこまで説明する必要もないだろう。


「なるほど。一撃で倒したというのは間違いないようだ」


 と、国王は頭を抑えた。


「ジャミル」


「はっ」


「……お前の方からもそれとなく謝罪をしておいてくれ」


 いつもの威厳などなく情けない表情で頼む国王にジャミルは苦笑いを浮かべるのだった。



■□■


「なんだ、平民に格下げされたわけじゃなかったのか?」


 国王との謁見を終え、部屋を出て自分の住む宮殿に戻ろうとしたジャンに話しかけてきたのは、第一王子だった。

 母方の血筋もよく、剣術もジャンよりも格段に上だったため、王位継承権が一番高い。それが故、王位継承順位の低いジャンをずっと下に見ている相手だ。


「はい。サラディウスには調査で入学しただけです」


 ジャンがにっこり笑って言えば、


「そうか、ならしばらく稽古をつけてやってなかったな。1時間後練習場にこい。

 稽古をつけてやる」


 と、兄は笑ってその場を後にする。

 いつもの事だった。

 練習場に観客を集めた状態で、ジャンを負かし笑いものにするのが彼――第一王子の楽しみでもある。そもそも実力差もあるが、12歳の少年と19歳の青年では体格差が違い過ぎる。勝てるわけがない。


 いつもなら屈辱的で憂鬱な時間だったが……。


 どれくらい強くなったか試せる!


 と、ジャンは心躍らせた。

 クライムたちと修行はしているが、彼らも一緒に強くなっているため以前と比べどれくらい強くなったのかまでは実感がわかないでいたからだ。

 一学期の間でどれくらい実力がついたのか、試せる絶好のチャンスである。


「どれくらい強くなったか試せるぞラステル!」


 と、ジャンが隠れていた護衛に言えば


「……お手柔らかにお願いします。下手をすれば死んでしまいますので……」と、ジャンの護衛はトホホと肩を落とす。


 その後、ジャンと第一王子の試合を見た国王が慌てて、聖王国に謝罪の手紙を書いたのは言うまでもない。



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