36話 セディス視点
――これは酷い――
首輪をつけられて四つ足犬のように歩かされるヴェラルドの様子を隠れながら見て、セディスは心の中でため息をついた。
アリーシャに紹介され、首輪に気づき、後をつけて神殿にこっそり侵入すればこのありさまだった。
ラムウ教の大神官はまるで犬のようにヴェラルドをリードで連れ歩き、少し不機嫌な事があれば、ヴェラルドをまるで猛獣をしつけるかのように鞭で打ち「調教だ」とせせら笑う。そして激しい鞭打ちで気を失っているにも関わらず、リードでそのまま引きずっていた。
それが日常風景なのかその酷い光景に誰一人止めるものもいない。
ラムウ教は神ではなく直接天使を崇めると言う少し特殊な宗教だ。
それが故、どの神が主神だと他国ともめることもなく独自の発展を遂げてきたが……。
それでもヴェラルドにつけられている首輪。
あれは魔族を封じ込めた呪具。呪具は魔王を復活の際に災いをもたらすものとしてどの国でも禁止されているものだ。
その呪具を所持しているだけでも戦争を仕掛ける正当な理由になるほどに危険な存在である。
うまく偽造はしてあるが、聖王国のスペシャルナイトの目はごまかせない。
何故天使を祀るラムウ教がそのようなものを所持しているんだ?
それにあのような残虐な男がなぜ大神官などやっている?
何より問題なのが聖王国にもその情報が一度もはいってきていない。
こんなことが日常的に行われれば良心の呵責に耐えかねた誰かが密告してきそうなものなのにそれすらないのはおかしい事だ。
一度陛下に報告して調査を入れた方がいいな--と、セルヴァが思った途端。
ぞくりと、ただならぬ気配を感じて身を震わせた。
敵に身を隠していたのがばれたわけではない。
この何度も感じた威圧の気配は――
冷や汗をかきながら気配の方を見れば――なぜかアリーシャをお姫様抱っこしてセレスが神殿の頂上に立っていた。
目線の先には間違いなく、気を失ったまたずるずると連れられて行くヴェラルドと神官達の姿がある。
あ、終わった……
陛下になんて報告しよう。
ものすごい怒りオーラを全身にまとわせるセレスにセディスは頭を抱えるのだった。











