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35話 ヴェラルド・グル・ゼード

「それにしてもどう思いますか。セレス様」


 こんにちは。セレス・キャラデュース(10歳)です。アリーシャ達とのリズムゲー勝負で身体がまったく動かず30点という低ポイントを叩き出しました。力など所詮力にすぎない、どんな強大な力を持とうともリズムという壁の前にはまったくの無力!と諸行無常を悟って、休憩席で休んでいたらクライム君に話しかけられました。


 他の皆はまだリズムゲームに熱中しています。ジャンの護衛とクライム君の護衛は少し離れた場所で私たちの様子を見ています。

 おそらく遊ぶのを邪魔しないとの配慮なのでしょう。


「セレス様ならすでに気づいていらっしゃると思いますが。

 アリーシャの保護者の方ですが……強制的に何者かに従属させられています」


「え?」


「お気づきだからこそ、セディス様を調査に向かわせたのでしょう?

 流石セレス様です」


 と、クライム君が私に飲み物を差し出していいました。


 そ、そうだったのですか!?

 全く知りませんでした。

 セディスの買い物をしたいから出かけてくるという言葉を本気で信じていました。


 護衛対象の私よりセディスに詳しいとはさすがクライム君です。

 時々物凄く曇る事がありますが洞察力が素晴らしいです。


「従属?」


「はい、ヴェラルドさんが首につけていた魔道具ですが、上手く偽装してありましたが奴隷の首輪です。

 しかもあれは無理やり契約させられたのでしょう。

 決して逆らう事のできない、強制力のつ……」


 そこまで言いかけてクライム君の言葉が止まりました。

 先ほどまで私を見ていた視線の先が後ろに動いたのです。


 そう、先ほどの従属?と聞いたのは私ではありません。


「クライム君……今のどういうこと?」


 クライム君の後ろで飲み物を持って来たアリーシャでした。

 アリーシャが呆然と聞き返し、クライム君が失敗したという表情をします。


「なんで叔父さんが奴隷なの!?神殿で神官をしているはずだよ?

 その叔父さんが奴隷なわけないっ!!!!」


 アリーシャが縋るようにクライム君の肩をがしがしとゆらし――そこで私は思い出しました。


 ヴェラルド・グル・ゼード。

 天使の殺戮者と呼ばれ、天使の血を引く勇者を狙い続けた暗殺者です。


 彼は元々献身的な神官で天使を祀るラムウ教の神官でした。

 ですがラムウ教の大神官がラムウ教の本質に気づいてしまい、悲劇がはじまります。

 ラムウ教の天使達が一部の人間の魂を生贄に捧げていたことに気づいてしまい、天使に反逆者のレッテルを貼られ殺されてしまいます。

 ヴェラルドはその大神官の娘を殺さないでくれと、命乞いをし、天使の息のかかった新しい大神官の奴隷となるのです。

 前大神官の一人娘が11歳になったさい天使達も彼女に手を出すことなく、彼女を自由にすると約束して。


 そこからはヴェラルドにとっては地獄でした。

 神殿では拷問に近い暴力と人間としてではなく犬として大神官に連れ歩かれるという屈辱的な毎日をおくります。それでもその子に心配させまいと、神殿から帰れば笑ってその子の世話をしていました。 


 少女が11歳になった時、やっと天使達に命を狙われる事なく自由にできる。

 逃がしてあげようとした時に、少女は殺されていました。


 そしてラムウ国の大神官は笑いながら彼に言い放ちました


「少女を永遠に自由にしてやったぞ――」と。


 ヴェラルドは怒り狂いました。

 従属の首輪に封じられた魔族すらも自らに取り込んで、そのままラムウ教の神官達に成り代わっていた堕天使達をすべて惨殺してしまいます。

 そして死んだ少女の頭蓋骨を常に持ち歩き、天使をすべて殺すことを生きがいに世界を彷徨う事になるのです。


 ヴェラルドが戦闘中よく口にした言葉――


「ごめん、アリーシャ。私にはこうする道しか残されていないんだ……」


 そう――殺されたのは――。


 アリーシャです。私のマイフレンドアリーシャです。


 がっ!!!!!


 全身から怒りに近い何かが沸き起こるのが自分でもわかりました。

 私は何故こんな大事な事を忘れていたのでしょう。

 マイフレンドの身が危険だったのに気づかなかったなんて。

 馬鹿です。私は。忘れてたでは許されません。


「セレス様!?」

「セレスちゃん!?」


 クライム君とアリーシャが私の名を呼びます。


「どうしたんだよ!?」


 気配を察してかリカルドたちが心配そうにこちらに来ました。


「今すぐここから出ます!この街に居ては危険です」


「え!?」


 私が言えば、アリーシャが不思議そうに私を見ました。


「叔父さんを助けてこの街をでましょう。

 ここに居たら殺されてしまいますっ!!」


「皆さんすぐに車に戻ってこの街を出る準備をしてください!!」


 私はアリーシャの手をとりました。


「セレスちゃん……?」


「私を信じてください」


 アリーシャの瞳をまっすぐ見つめ私は言いました。

 本当なら一緒に行くべきではないのかもしれませんが、私の側が一番安全です。

 たとえ死んでも生き返らせられます。

 一応フレンド達には完全防御の結界は張りましたがそれでも不安なので一緒にいてほしいです。

 

 アリーシャの大好きなおじさんを連れて、聖王国に連れて行き、父に保護してもらいます。


 アリーシャは手をぎゅっとしたあと


「うん。私はセレスちゃんを信じる」


 と、頷いてくれました。


「クライム、ジャンあとは頼みます!!」


 私は二人に言うと、そのままアリーシャをおんぶして、神殿へと向かうのでした。

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