28話 やる気スイッチ
「まさかこのメンバーで闇の洞窟に挑む事になるとは思いませんでした」
セディスがため息をつきながらいいます。
こんにちは。今日は初めてのフレンド達との集まりで昨日は興奮してなかなか寝付けなかったセレス・キャラデュース(10歳)です。あの後みんなでリーチェの神官様のためにファティナの花を取りにいこうぜ!とお休みの日に洞窟に挑む事になりました。
「みんなありがとう!」と、リーチェ。
私達は、学校が休みの日皆で集まり、飛竜にのって洞窟までやってきました。
わりと学園から近い場所だったので助かりました。
ジャンとクライム君の護衛sも、セディスと同じく心配性な親がつけた執事もしくは護衛という事になって今ではセディスと同じく姿を隠す事なくついてきています。
これはあれです。
はじめてのお休みの日にフレンドとみんなで遊ぼうぜ!という状況ではないでしょうか。
休日に集まって遊ぶ!なんという甘美な響きでしょう!
はじめてのフレンドとの集まりに昨夜は興奮しすぎて眠れませんでした。
お弁当もちゃんと用意しておいたので、休憩時に食べたいと思います。
「お昼はサンドイッチ食べようね」と、洞窟の前でアリーシャがえへへと笑うので私も嬉しくてこくこくうなずきました。
朝からアリーシャと一緒に作ったのです。
具材を作るのはもっぱらアリーシャで私はパンにバターを塗って具材を挟んだだけですが。
これでもパンにはさむのを頑張りました。初めてのアリーシャとの共同作業です。
お友達との共同作業に嬉しくて泣きそうになったのは秘密です。
皆に美味しいと喜んでもらえるといいのですが。
「お嬢様……ピクニックと勘違いしていらっしゃいませんか?」
セディスが薄目で聞くので
「セディス。いくら私でも、ピクニックと洞窟探検の違いはわかります。
今日は洞窟探検です」
「言っていることは何一つ間違っていませんが、多分心意気とテンションが間違ってると思います」
と、セディスになぜかため息をつかれました。
「しかし本当にこの人数で大丈夫でしょうか?
本来なら各国のスペシャルナイトの精鋭が集まって攻略するはずですが」
と、クライム君の護衛がいいます。
クライム君と同じく貴族を隠すためか青髪になっています。
魔術王国の平民は基本青髪なためでしょう。
「そんなに難しいところなの?」
リーチェが聞けば今度はジャンの護衛が頷きました。
「レベル的に難しいわけではないのですが光属性を使える使い手が少ないのです。
そう言った意味でアリーシャ殿は貴重な存在といえます」
「え?えっ!?そうなんですか?」
アリーシャが驚いた表情で聞けば
「そうだよ。本来なら光属性の君をCクラスなんてありえない。
属性だけでAクラスにしていいくらいだ」
と、今度はジャンがため息ながらにいいました。
「まぁ学園への不満は置いておきましょう。僕の護衛のギルに結界を張らせます。
皆さんはその結界の中からでないように。
僕もバフ魔法に集中します。
攻撃はセレス様とセディス様に任せましょう」
「俺はどうすればいいんだ?」
リカルドがクライム君に聞けば、
「リーチェを守ることに集中してください。正直僕たちは足手まといです。
ギルの結界の範囲から出ない事だけに気を配ってください」
「なら、何で俺達が行くんだよ」
ジト目でリカルドが聞きます。
「わかりませんか?」
とクライム君が眼鏡をくいっと治しました。
「僕達に実戦の緊張感を教え込むためだよ」
と、今度はジャン。
あまりにも流れるように二人が息を合わせて言うので、「そ、そうだったのか!?」と、一瞬納得してしまいました。
……が、私はそこまで考えてません。
あやうく私が騙されるところでした。
ただなんとなくみんなで来たかっただけです。
皆で仲良くお菓子とお弁当をもって洞窟探検からのお弁当というシチュエーションに憧れただけなのですが。
この二人は時々変なスイッチが入ります。
そして謎の説得力があるので、私まで「なるほど!」と納得してしまいそうになるのが困るところです。
クライム君とジャンの二人が何故この洞窟に入るのか独自の解釈を説明している間、他の者は凄く目を輝かせ、セディスだけが死んだ目になるのはお約束です。
以前セディスも勘違いだと突っ込んだ事があるのですが、聖王国マンセー!と聖王国のスペシャルナイトのセディスまで偉大な人物に祭り上げられてしまい、セディスも飛び火を恐れて二人に突っ込むのをやめました。
セディスが口論で勝てなかったのに私に勝てるわけがありません。
ジャンとクライム君の護衛sも目が輝いているので、それだけジャンとクライム君の演説は人を引き付けるものがあるのでしょう。
流石王子です。王族です。人心を得る術を心得ています。
どこかの脳筋お姫様とは格がちがいます。
言葉だけで人心を動かす。なんと素晴らしい事なのでしょう。
「セレスお前すごいな!?」
「流石セレスちゃん」
「本当にありがとうね!」
と、クライム君とジャンの謎の解説を聞いた3人が目を輝かせて、私に言うので私は「そんな事ない」と答えて話を切り上げました。
勘違いさせたままですが、嘘はついていません。
ここで反論しようものならさらに祭り上げられるので適当に切り上げるのが一番と、私なりに学びました。ジャンとクライム君のやる気スイッチをこれ以上押してはいけません。
彼らを本気にさせると、私が全世界の神に祭り上げられそうなので怖いです。
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