21話 ギリギリセーフ(どう見てもアウト)
こんにちは。クラスの子達が熟練度が上がると物凄く喜んでくれて調子に乗りすぎたセレス・キャラデュース(10歳)です。
「セレスちゃんは本当にすごいね!どこであんなこと覚えたの?
うちの学校の先生もあそこまで出来ないと思うよ!」
修行が終わって部屋に戻れば、アリーシャが褒めてくれます。
それほどでもないです。というか、若干やりすぎた感があります。
またいつもの、目の前の事に全力投球してしまい、後の事を全く考えてなかったをやってしまいました。
リカルドやリーチェなど平民の子達は家庭教師に習ったと言ったら、お前凄いなぁくらいだったのですが、ジャンとクライム君に関しては修行が終わったら呆然としていたのでちょっとやりすぎた感があります。
けれど、セディスの顔が引きつっただけで何も言わなかったところをみると、ギリギリセーフだったのでしょうか?
というか、虚ろな目で部屋を去っていったのですが、怖いです。恐ろしいです。
「セレスちゃん?」
「あ、ごめんなんでもない」
「模擬戦頑張ろうね!」
と、手をつないでくれて、私はこくりと頷きます。
あれ、これって物凄く……友達っぽいです。
一つの目標に向かってともに歩む。なんて甘美な響きなのでしょう。
アリーシャの笑顔が天使すぎてとろけそうです。
私はきっと幸せです。セディスが若干気になりますが幸せです。
というか、かなり気になりますが友達とのおしゃべりで現実逃避しようと思います。
「一緒に頑張ろう」
「うん!」
ニコニコと私たちはつかの間の友達の会話を楽しむのでした。
■□■
「いいのか!?聖王国に好きにさせて!!」
「なんの話です?」
学園の廊下で、クライムはジャンに呼び止められて振り返った。
彼らの後ろには各々、護衛が控えている。
「セレスの力だよ。君も見ただろう?
あの力があれば、魔術王国も剣王国もどちらも無事ではすまない。
放っておいていいのかと聞いているんだ」
ジャンの言葉にクライムがはぁぁぁぁと大きくため息をついた。
「何がおかしいんだ!?」
「何かできると思っているならおめでたいとしか言えません。
聖王国の王族の中で一番弱いと言われているセレス様があの実力なのです。
僕達に何が出来ます?」
「しかし放っておけば、僕たちの国は滅ぼされるかもしれない!」
ジャンの言葉にクライムは眼鏡をとり、そのまま曇ったガラスを拭き始めた。
「まったくバカバカしい。
聖王国と、魔術王国と剣王国の対立は10年以上続いています。
どちらかといえば、こちら側が一方的に喧嘩を売る形でね。
それなのにこの10年無事だった。
その意味を僕達は考える必要があるのではないですか?」
「え?」
「僕の知る歴史の中では魔術王国と剣王国が聖王国に嫌がらせをしたことは何度もあります。
それなのに、聖王シャティルは両国を滅ぼさなかった。
セレス様より強大な力を持ち、両国を滅ぼすつもりならいつでも滅ぼせる聖王がです。
そして今、対立しているはずの魔術王国と剣王国の僕達を聖王国のセレス様が鍛えている。
そこにすべて答えがあるではありませんか。
聖王国は人間の国の些細ないざこざなど眼中にないのですよ。
彼らが見ているのはもっと先――これ以上は言わなくてもわかるでしょう?」
クライムの言葉にジャンは立ち尽くす。
そう――自分は自国の事しか考えていなかった。
けれど、聖王国は違う。彼らはもっと先を見据えていた。
人類全体の幸福。
彼らの目標は――復活する魔王を倒す事。
「国同士仲がいいからと、僕を貴方側と見ているのなら、それは見誤っています。
私はセレス様をお慕いしています。セレス様に害をなすつもりなら――貴方は僕の敵です。
今回だけは聞かなかった事にします。
次、もし下らぬ事を言うのなら、容赦する気はありません。それでは」











