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17話 陽キャには陰キャの気持ちはわからんとです

「師匠、少しお時間よろしいでしょうか?」


 と、入ってきたのはクライム君でした。

 なぜか私の護衛セディスは姿すら隠しません。

 おそらく、クライム君にはばれているという判断なのかもしれません。

 その証拠にクライム君の護衛の魔術師も姿を現したまま部屋に入ってきました。


 ……セディスの言う通り本当に王族だったらしいです。

 クライム君の護衛の魔術師は魔術王国の王族を守るスペシャルナイトがつける勲章をつけています。


 全く気づきませんでした。


 でもこれはあれですよね?

 もしクライム君とこのまま友達でいられたら、学校をやめてから各国の王族の会議とかに出る事になったとしても、私には友達が居る事になります。


「やぁ、久しぶり!元気してた!?」と挨拶を交わす友達がいるのですよ?


 凄いです。快挙です!陰キャの私に他国の王族のお友達ができるなんて!


 予定外ではありましたがこれは陰キャ卒業100歩くらい前進したのではないでしょうか?


「で、どういったご用件でしょう?魔術王国のクライス様。

 すでにあなたもこちらの正体はわかっていますよね?」


 私が恍惚な気分に酔っていれば、私の前の席についたクライム君にセディスが冷たい声でいいました。

 

 セディスはなんて態度をとっているのでしょうか!?

 可愛いお姫様の二番目のお友達なのですからお茶をだすのがマナーだと思うのですが!?


 いきなり敵対的態度はマナー違反です!大人げがありません!

 やっぱり相手が幼児でも全力で神経衰弱で勝利するタイプに違いません。


 私がアワアワしていれば、クライム君が頭をさげました。


「まず、私個人は貴方に敵対の意思がないのを伝えたかったのです。

 確かに魔術王国と聖王国は対立しています。


 ですが、私は本当に貴方の事を同じ魔術師として尊敬しておりますし、敵国に近い私を躊躇なく鍛えるその度量に感服いたしました」


 と、クライム君が眼鏡をくいっとかけなおす。


 ………え?そうなんですか?


 そういえば、ゲーム上でも聖王国の国王とその息子たちの力を恐れた魔王が魔族を使って聖王国を他国から孤立するように操ったと何かのイベントでいっていた気がします。そのせいで他国から援助もなく滅びたと。


 流石に10年もたつと前世の記憶なんてさっぱり忘れていました。


 魔王が滅んでも各地魔族が活動しているという事は魔王が死んでいる事に気づいていないのでしょうか?

 そういえば、復活する前に封印されている闇の繭の中に乗り込んで、魔王を3秒で倒してしまったので、魔王が死んだことに気づいていないのかもしれません。

 周りにいた魔族は完膚なきまでに壊滅させましたし。


 ……やってしまいました。せめて魔王が死んだと各地の魔族に知らせるくらいの魔族は生かしておくべきだったかもしれません。


 戻れることなら0歳の頃に戻りたいです。

 その時各地に散る魔族も倒していればいまごろクライム君と友達になれて、アリーシャに続く友達が出来たはずなのに。


「私は元々、こちらの学園で不正が行われている様子があるので調べてくるようにと命をうけてやってきました。

 信じていただけるかわかりませんが、聖王国の姫君がいたのはこちらも予定外の事。

 貴方に害をなすためにここに来たわけではありません。

 

 私は貴方の修行をこのまま続けたい」


 当たり前です。やっと友達が出来る一歩手前まできているのです。

 ここでやっぱり帰りますは困ります。


「……ですから、害がないと誓うため【奴隷の契約】を貴方と結びたい。

 もちろん私が従う側です」


「「なっ!???」」


 その場にいたクライム君の護衛とセディスが声をあげた。

【奴隷の契約】その名の通りです。奴隷です。主従になっていいということです。


「なっ!???何をいっておられるのですか!???

 王子が他国の王族の奴隷など聞いた事も前例もありません!!

 そのような事を許可したおぼえはありませんよ!?」


 と、クライム君の護衛が声を荒げて反対します。


「私は本気だ。

 私は元々王位なんて興味がない、王位より自らの魔力と実力を高めその道を究めたい。

 彼女は僕の望むものをすべて持っている」


 ……何を言っているのでしょう?


 奴隷?王位に興味がない?


 それでは困ります。私が困ります。

 なんだかすごそうな王族会議で仲良しの友達がいてボッチじゃないという状況に憧れているのに、王位を捨てて奴隷になられたら意味がないではありませんか。

 奴隷でいいなら、城の家臣たちでいいのです。

 彼らだって、奴隷じゃないのに私のいう事はとても親切に聞いてくれます。

 でもそれではダメなんです。


 私が欲しいのは 友達です。 フレンドです。 苦楽を共にしてくれる仲間です。

 いう事をほいほい聞いてくれる奴隷ではありません。

 これだから陽キャはいけません。陰キャにとって友達がどれほど尊いものかわからないのです。


 同じくらいの地位のフレンド。憧れるではありませんか。

 陰キャに必要なのは友達であって奴隷ではありません。


「……断ります」


「……え?」


「王位を投げ出す……?そんな中途半端な覚悟で、強くなれるとでも?」


「ですがっ!?」


「私の修行を受けたいなら、王位を目指す。

 それも出来ないような中途半端な人間につける修行はありません。


 それに魔術で従属させた奴隷契約で私が喜ぶとでも?不愉快です」


 言って、私が怒りのあまり魔力を放てばその場にいた三人が押し黙まるのでした。



■□■


 ぞくり。


 セレスティアの放つ魔力「威圧」にクライスは思わず息を呑んだ。

 身体全身が恐怖にすくむ。


 これが彼女の本当の力……っ。


 まだ12歳のクライスでもわかる。

 彼女は……自分……いや、魔術王国の誰もがかなわないほどレベルが高い。

 予測では300以上。


 奴隷にしろ?

 自分の考えが甘かった。彼女が怒るのは当然だ。

 奴隷になどしなくても彼女は圧倒的レベル差で自分など簡単に御せる。

 

 彼女は確実にクライスの目指す高みにある。

 クライスが手に入れたいのは一国の平和などではない。

 世界の平和。魔王を倒せるその力。


 どうしても彼女の下で学びたい。


「で、ではどうすれば……」


「まず、師匠呼びもやめる。

 今日から、君と私は……」


「私は……?」


「ヒュヒュ、ヒュレンドだっ!!!!」


 どーんっと告げる彼女の声は、なぜか震えていた。

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