08 落雷
「よう、無事か? し〜ぶき」
実力者エリートの様に巨大化した鹿の上で目の前の少年、雪風 青空はおっしゃった。
フード付きであるネイビーカラーのコーチシャツを着こなし、黒の長ズボンの下には左右で色が違う運動靴をラビットタンクを和訳したヒーローと同じように右が赤、左が青という風に履いてた。
「お、おう青空、霊魔探偵のお前さんと会うのは……」
一ヶ月ちょっとぐらいかとぼそと呟いて
「久しぶりだな」と飛沫は答えた。
れいま探偵? 何か不思議な単語が出てきたけど今聞くといろいろとめんどくさそうだから今度聞いてみよう。
こんなとこで設定について話されてもいやだし。
「いやぁね〜ゑんま大王がさ〜、『飛沫くんが自分の神器を忘れたから届けて来てくれる?』っていうからさ〜、しょんなく持ってきたよ〜、感謝しにゃさいね〜」
語尾に音符が付かんばかりのセリフを吐いて、青空は鹿の上から錫杖(お寺の人が持ってるような棒)を飛沫に投げる。それを飛沫は受けとった。
「おう、悪いなわざわざ」
れいま探偵・神器、さっきから聞き慣れない単語ばっかし飛び交っていて青空と飛沫の会話にぼくはついていけなくなってしまっている。
てゆうかぼく、空気と化してない? 気づいてないよね?
「ねぇ、青空? ぼくのこと覚えてる?」
空気と化していたのでちょっとばかし質問を投げかけてみる。
「んぉ? いたの? 凪〜」
青空から予想通りのコメントが返って来た。
悲しいよ、気づいてもらってないのは。
「いたよ!」
そこにぼくは気づかれなかったという思いからおもいっきりツッコミを入れてしまった。
「いたのな〜、てかぼくのこと覚えてる? って最後にあったのがまだ4ヶ月前なんですけど」
そこにマジウケると付け足されてしまった。
そういえばそうだった、夏休みに嵐と一緒にお買い物と言う名目でデートに行った時、下校中の青空っちに会ったんだった。
忘れてたのはこちら側でした。
「ッ! まだ動くかコイツ」
突如鹿が動き始めて青空はこっちにとんでくる。
こっちに来てから青空は「手、抜き過ぎたな〜」とぼやいていた。
いや、手を抜いてたのという驚きがぼくを襲うのだけども。
「さぁーてと、神器届けてくれたし、俺が殺りますか」
飛沫は錫杖である神器の先端に雷の刃を生成しているようにみえる。
「落雷!」
そう叫び飛沫は鹿を貫ぬき辺り一面に血の雨が降る。
ぼく達……、ここにいた人? 妖怪? 達も含め血だらけになっていった。
例えるならばスコールか夕立か。
「……」
突然訪れたグロテスクな状態のためか、辺りを沈黙が支配する。
「うわぁ〜、きたね〜、汚ぇーー」
この沈黙を破るかのごとく青空は不快感を口に出した。