06 煉獄トンネル
ぼく達は地獄で人気ハンバーグ店爽快を出てから大炎町と焦熱町の間にある山、煉獄山。その煉獄山にある縦に長いトンネル、煉獄トンネルをこれからくぐるところであった。
トンネルの中から生温い風が吹き抜けていってはぼくの髪を少しゆらゆらと揺らす。
目の前のトンネルに向こう側の光が見えない、なぜなら全長が地獄の一二を争うぐらい長いトンネルのため、出口が見えないらしい。
「飛沫、コレ本当に通るの?」
ぼくはくだらない質問を飛沫に問いかける。
「あぁ、これを通らn――」
プァーン ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン
ぼく達のいる道の真横を走っている線路に貨物列車がちょうどよく通過して飛沫の言葉が全く聞こえない。
「ねぇ、飛沫。もう一回言ってくれない」
列車の通過音で聞こえなかった……。
「しょうがねぇなぁ〜」
飛沫は「はぁー」とため息を吐き捨てながら。
「ここを通らなきゃi」
ガタンゴトン プァーン ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン
またしても飛沫が話そうとすると貨物列車が通過して話しを遮られる。
まるで発言をすることを世界から……いや、このトンネルから禁止されているみたいだった。
「もういい、行くぞ」
飛沫は少しイラついたのかトンネルに入っていく。
「まってよ!」
ぼくも飛沫を追ってブラックライトに照らされている少し薄暗いトンネルへと足を踏み入れていった。
貨物列車に飛び乗って貨物駅に行かないのか? と言いたいとこだけどもう言える距離じゃないよなぁ。
その後、僕たちは、薄暗いトンネルの半分にある休憩所にたどり着いた。
「ハァハァハァ やっと休憩所に着いたよ」
あのあと飛沫は「トンネルの半分まで走るぞ!」と言いここまで走らされたのであった。
ふと目の前の看板に目をやると
《ここは雨沙火処口からの距離が自動車専用道路にて日本一長いトンネル 山手トンネルと同じ18,200mになります》と表記されていた。
……長くない? 地獄の一、二を争うトンネル、流石。
ぼくと飛沫が入ってきた大炎町口からの距離は……
《自動車専用道路で日本一長い橋 アクアブリッジの4,424メートル》
約四キロ走らされたのか、学校で走らされる外周を何周か走らされるよりかは楽な方だけど……。
看板を見て走ったなという余韻に浸っていると……。
「おい、ここのカフェで少し休んだらまた同じ距離を走るぞ」と、飛沫は言いながらガヤガヤとにぎわう店内へと向かっていった。
「……冗談じゃないよ」
ぼくは下校時間+四キロ走ったことでへとへとになった体にこれまた四キロ走ることを想像して少しの絶望感に体を襲われつつ、にぎわう店内へと向かうのであった。
♢♢♢♢閻魔丁、時は凪と飛沫がトンネルの入り口程♢♢♢♢
「いや〜ごめんね、飛沫くんが自分の神器を忘れたから届けて来てくれる?」
場所は閻魔丁の中心部に聳える閻魔宮殿、中庭。
ト◯ロのようにデカい図体をした爺さんが空色混じりの黒髪が特徴の美少年にそう話を持ちかけ、少年が了承する。
そこへ海のように深く濃い青髪のメイドが神器である錫杖を運び、真っ赤に燃えるような赤髪のメイドがそれを少年へと手渡す。
「それじゃぁ、お願いね」
「ヘイっ! お任せあれ!」
少年は赤髪のメイドからその言葉と共に神器を受け取る、すると背中から澄み渡った空色の翼を広げ、彼女らに背を向く。
「事故とかには気を付けるんだよ、空中だからって油断はダメだよ」
「それぐらい分かってるって」
めっちゃお爺ちゃんであるが故、しっかり確認の言葉をかけるも反抗期まっしぐらの少年に軽く流される。
「では、お気を付けて」
「行ってきまーす!!」
青髪メイドの言葉を最後に、少年は焦熱地獄の貨物駅へと飛び立った。
知ってお得! なぎあら講座!!
貨物列車というのは普通の電車が通る路線と違う、貨物線というものを通ったり会社も違ったりします!
これは現実の世界も一緒。
まぁ、一部列車など貨物線通ったりしますけど……。