40 神隠し / ホーリーソード
「……ねぇ、雷雨?」
「…………」
刀を地面に刺した嵐くんが、ポニテの少年雷雨くんに静かな怒りをぶつけていた。
「いつも言ってるよなぁ? 怪魔を倒したら、すぐに、俺や茜さんといった浄化できる人のとこに連れてくるか、札や聖水を使うとかしろって……」
銀狼を召喚しておいて良かった、と呟きも聞こえる。
「はい、すみません」
小さくなった雷雨くん。隣には綺麗な銀色の毛並をした優雅に欠伸をする狼が一匹、そして、背景にゴゴゴゴという怒りの文字が何個も湧いて見える嵐くん……。
というか、茜さんて……。もしかして茜姉も居るの? それとも同じ名前の人なのだろうか?
「雷といった属性じゃぁ怪魔は復活して今みたいなんだよ。一般人どうこう以前に対処しろ!」
「はい……」
なんで二人がこうなったのかというと、話は雷雨くんが現れた時に遡る。
怪魔? を倒した雷雨くんは倒した後の対処を怠っていたが故、また怪魔? がぼくに襲い掛かろうとして来たところ、あの綺麗な銀色の毛並みをした狼(話を聞くに銀狼?)が嵐くん影から出てきて祓ってくれたのだ。
あと話を聞くに、怪魔? というのは月? や聖? なんかの属性を使わなければ祓えないという。
そのため、一般人であるぼくに被害が及ぶことは免れたものの、危なかったことは確かなため嵐くんはおこなのである。
「クゥゥーーン」
銀狼と思われる狼を撫でようと手を伸ばすと、甘えた感じで自分の頭を僕の手のひらに密着させる。
そのままわしゃわしゃしてあげると更に甘えたような鳴き声で鳴く。
なんだか可愛い。小学校低学年だった頃の可愛い弟を思い出してしまうくらい可愛い。
……こんな事いったら怒るかな? フフッ
「……なぁ、雷雨」
「なに?」
「凪のやつ、銀狼といい怪魔といい、”視えてる”よな?」
「視えてるだろ。それに此処は神域、霊感がないようなやつでも普通に視れちゃうような場所なんだから」
「まぁ、確かにそうだな……」
銀狼の頭を撫で撫でしている横で、お説教タイムが終わったであろう二人の会話が耳に入った。
ここなら白くんや雪兎くん、嵐くんがいつも見てる世界を一緒に見れると言う事なのだろうか?
危険な世界なのは百も承知だし、怖いんだけども。嵐くんと一緒に行動(しかも同じ景色を見れる)ができるのなら、ちょっとしてみたい。
べ、別に気になるからっていうか、ただの好奇心とかじゃ、ないからね!!
「なーに好奇心沸いてるのさ、凪ぃ」
ガサッという音を鳴らして木の上から一人の女子高生がぶらっとぶら下がった状態で現れた。
「「「——ッ!?茜姉!!」さん!!」」
「うぇ!?」
茜姉の登場に三人してハモるし、さっき言ってた茜さんがまさかの茜姉という事実にニ度も驚いちゃったよ。
「…………」
茜姉の登場でこの場が静まり返る。き、気まずい……。
「えっとー、茜さん? いつからそこに??」と嵐くんが切り出す。
「え、いつからって……? 割りと最初からだよ、嵐が凪を抱き寄せるとこからだよぉ」
そういいながらニヤニヤとこっちみてくる茜姉。
———ッ!? あああぁぁ
人に言われた途端恥ずかしくなるこれなんなの? 多分今、顔赤くなっちゃてるんじゃない???
恥ッッず……。
「もう可愛いなぁ」
ガサッと音を鳴らして木から降りた降りた茜姉がすぐさまぼくを抱きしめる。
……これは、ぼくが顔を赤くしてるのを隠してくれたのだろうか?
「顔を赤く染めるなんて、ほんと可愛い。もぅ凪はー」
前言撤回、ただのロリコン気質な親友の姉だった……。
そして、頭を撫でないでよ!! もー。
「凪、動いちゃダメだよ」
……ん? 急にカッコいいお姉ボイスになったけど??
というか、茜姉が抱きしめるから今どうなってるのか分からない……。
「聖純白クナイ」
瞬間、視界の端に純白のクナイが現れ、視界から消える。
ウヴゥと小さなうめき声が聞こえたかと思うと茜姉がぼくから離れていく。
「やぁ、おじさん。ぼくたちを尾行して情報収集かい?」
そう言いながら先程放った真っ白いクナイで木に貼り付けたであろう黒色のスーツを着たおじさん(推定三十代後半)のポケットや鞄を漁る。
白いブラウス、藍色を基調としたタターンチェックスカートの学校指定である制服を着た茜姉のその姿を側からみると、女子高生がカツアゲしていておじさんはその被害者みたい、だ。
そんなこんな思ってると、茜姉がこちら側を振り向き、しっかりしたお姉さん感を出して口を開ける。
「嵐、雷雨。いい加減”気配探知”ぐらいは常に貼れるようにしなさいよ。銀狼は気づいてたよ? だから凪の近くに居続けてたんだから」
叱りながらもおじさんをガシガシ蹴っている茜姉。説得力足りなくない?
というか、銀狼はぼくを守ってくれてたんだ……。
ありがとう、と小言で銀狼に言うとわん! と一言鳴いて嵐君の影の中へと消えていった。
「「頑張ります。……でも」」
嵐くん雷雨くん、二人目を合わせ、ハモらせた状態のまま言葉を綴る。
「「今のまま言われても、説得力ないですッッ!!」」
嵐くん&雷雨くん、見事にハモっり合わせたのち、再び互いに見つめ合いケラケラと軽く笑い合う。
嵐くんは笑いは気持ちいいくらいの笑みなのに、その隣で笑ってる雷雨くんはどこか暗く、心の底から笑えてないように思えなかった……。
ここで知るが良き!なぎあら教室☆
今日のお題は気配探知。
妖術や魔術で自分の周囲に放つレーダーみたいなもの。ただ相手がステルスを用いた物を使うとそうとうの熟練者でなければ気づかなかったり、相手にも察知されやすいので注意が必要だ!
ただ、この界隈では知使えるのが当たり前!みたいなとこがあるので先輩方はあんまり教えてくれないとこがあるぞ!!
では、また次回☆




