39 神隠し / 黒い何か
後書きのやつ、今話からタイトル変更いたしますことをアナウンスします。
三年前、中学二年の夏休み。
この日、母方のおばあちゃん家(おばあちゃんちと言っても同じ市内)に遊びにきていた。
けど、従兄姉ちは学校やら仕事やらで居なく暇なため、近くの公園へと足を向けていた。
「……アツイ」
流石に真夏、サンサン照らす太陽とアスファルトから放出される熱気がぼくを苦しめる。
が、クーラーの冷気を浴びたり、アイスを食べたりしたい、などとした欲求は心の底からふつふつと湧き上がってくるけども……、ここ最近ちょっと、ほんのちょっとだけ太ってしまったがためにゴロゴロしたり糖質が多いアイスは控えたい。
今向かってる公園は住宅街の端の方、高速道路の横に隣接する公園で小さな神社もある。
公園にはプールもあって、小さい頃は従兄姉に連れられて遊んだ思い出がある。
そんな昔懐かしい公園の前に着くと白い鳥居がある。
それをくぐって階段を上がるとそこには東家や公園の遊具がある、はずだった……。
「……ほへぇ。も、森ぃ??」
階段を登りきると、気づけばぼくは深い深い森の中に迷いこんでいた……?
これはやばい、と思って引き返そうと振り返る……が、ここへ来た時に登ったはずの階段、鳥居や住宅街なんかが消えていた……。
「うそ……、どういうこと……。なんで、ついさっきまでそこにあったのに……」
人の気配は一切なく、辺りにあるのは風に揺らる緑溢れる木々や草花だけ。
しかも、今は夏……。
山に行くわけでもなんでもなかったので手持ちには塩分摂取用の塩飴、それからコンビニで買ったカ○ピスぐらいだ。
一応虫除けや日焼け止めは塗ってあるものの……。
「ほぇぇぇぇぇぇぇぇ」
◯
あれから何分経ったのだろう、あのまま同じ場所ににいるのもなんだか不安だし、なにか不穏な感じが森一体に漂っているためその場にいつきたくなかった。
だから、草があまりないような場所をとりあえず進んだ。
進みながら少し考えたけど、鳥居を潜ってこんなとこに来てしまった、ということは、恐らくこれは神隠しというやつなのだろうか?
確か千葉県にある禁足地の近くで当時十八歳の女子高校生が神隠しにあって何週間か見つからなかったって話も聞いたことあるし……。
草むらをしばらく突き進むと草がなくなり、少し開けた場所に出る。
そこは太陽の光が降り注いだ丘のような場所になっており、まさに森のお姫様が動物達と戯れていそうな雰囲気を醸し出している、そんな感じ。
ただ、まだ不穏な雰囲気は拭いきれてない感じではある。
陽の光にでも浴びれば多少は楽になるかなぁ、と軽い考えで丘を登る。
数秒、丘を登ったところで後ろから謎の気配を感じる……。
「ほ、ほぇ? だ、誰かいるの?」
恐る恐る殺気のする方へ向くと黒い何かが木々の間でうごめており……、なんとも気持ち悪い。
うぅぅ……。
一歩、二歩と背中を見せずにゆっくり後ろへと下がっていく。
熊と会った時の対処法をテレビで観ておいてよかった……。
あれが熊なのかなんの動物か分からないけども。
「ヴヴァァァ」
黒い何かは低いうめき声を上げると、……ぼくと目が合う。
「……………」
数秒の沈黙。
これが体感で一分や二分と長く感じるのが嫌なところだ。
「ヴァァァグガァォァァ!!!!!」
激しい咆哮を上げると、黒い何かはこちらへ向かって襲いかかってくる。
しかも、耳が痛い。
「ほぇぇぇぇ!!!」
声を出すも怖くて足がすくみ、その場から動けなくなる。
ぼく、このままこの黒い何かに喰われて死んじゃうのかな?
そうこうしてる間に黒い何かは僕に近づき、爪らしいもので引き裂こうしてくる。
「風の舞 守式 弐ノ型」
突如、ぼくの背後の方から聞き慣れた声、草を踏む時になる足音や風を切るような音も聞こえる。
「疾風!」
背後から来た誰かに腰に手を当てられ、目の前では風を付けた刀が黒い何かの攻撃を受け止め、——流す。
ぼくは体を抱き寄せられ、黒い何かと距離がおかれる。
距離をおいたタイミングでぼくを抱き寄せた人の顔を見る。
一部白く染まった髪、学校の教室でいつも目にする、何かを見つめるような横顔。
「ら、嵐くん?」
そこに居たのは紛れもなく嵐くんだ……。
ちょ、ちょっとだけ……、黒い何かを見つめる鋭い眼差しをカッコいいと思ってしまった。
でも、いつも学校で見慣れた人の顔を見ると、なんだか少し落ち着く。
少し落ち着いたところで思考を軽く回してみる。
えっと、ここに嵐くんが居るのは多分、小学生の時に白くんから誘われて入った祓屋? の仕事だろうか?
てことは……、あれも妖怪の一種ってこと?
疑問に思うことが多々あるけど……、いつまでぼくを抱き寄せてるの?
あ、熱いというのもあるし、汗臭いと思われるのがい、嫌なのもある……。
「ここでじっとしてろ」
そういうと嵐くんはぼくから手を離し、黒い何かへ距離を詰める。
黒い何かの姿を少し離れてから再確認する。容姿はお相撲さんに負けないくらいがっしりとした熊。全身黒く陽炎の様なものがゆらめいている。
というか、熊であってた…。
嵐くんの方をよく見ると、黒い何かと嵐くんの間に月の光で照らされたような道筋が出来ている。
ウガァァァ!! と叫びまたもや切り裂く攻撃を入れる黒い何か、それを軽く避けつつ懐に入る嵐くん。
「浄化!!」
そう言うと嵐くんは道筋にそって刀を左から右へ振るって黒い何かを斬る。
そしてそのまま相手に次の言葉を発させる前に次の体制へ入っり、また刀を振り上げる。
「月の幕 捌ノ型 弦月 下!」
左半分の淡い緑色をした月(のエフェクト?)が目の前に現れると嵐くんは月に沿って斬撃を入れる。
「ガァァァァ!! グァァガァァァー!」
斬撃を入れられた黒い何かはそのまま地面に倒れる。
すると黒いゆらめきが無くなり普通の大きい熊の状態になる。
「たく、なんでこんなとこに野良の怪魔が……?」
倒れた熊の方を眺めながら、嵐くんが刀を鞘に納め、そう呟いた。
怪魔? 妖怪の種類かなんかだろうか? ……何処かで聞いたことあるけども。
「ドゥ、ディラアァー!!」
突然の背後からの咆哮に驚き勢いよく振り返る。
振り返った先、少し離れた草むらの位置に人型で全身が黒く、先程まで熊に纏っていたあのゆらめく陽炎のようなものが、全身からふつふつと沸き上がっていた。
そんなことを考えていた合間、先ほどまで離れた位置に居たそれは、目と鼻の先にいた……。
「………ッ!?」
いきなりのことで声が出ない……。
視界の端では嵐くんが刀を鞘から抜こうとしているのが、スローで見える。
あ、これ死ぬのかも。間に合わない……。
ほんの一瞬、死ぬのかもと思った瞬間。
——空気が痺れる。
すると、突如目の前に片刃特有の棟が現れ、ぼくの耳に淡々とした声が届く。
「雷鳥一閃」
刹那、目の前にあった棟は消え、目の前を雷でできた鳥が右から左へ通過をする。
鳥が抜けていった所には、黒い人型の者は居らず跡形も無くなっていた。
その光景を目の当たりにしたのち、雷が落ちた時の音が一気に響き渡る。
み、耳がキーンとする……。
耳がキーンとして音がしばらく聞き取れなく、背中が叩かれたことで嵐くんが声をかけてきていることに気づく。
「ら、嵐くん……。い、今のは、何?」
少しずつ耳も治ってきて、周りの風で草木が揺れる音なんかが耳に届き始める。
「あー今のは……」
「おい嵐!! ソイツは誰だ? まさか、一般人とか言わないよな?」
雷でできた鳥が抜けていった先の方から男子の声が聞こえ、振り向く。
「そうだよ、雷雨。そのまさかの一般人」
そこにいる雷雨と呼ばれた少年は、刀を鞘に納めている黄色混じりの髪をしたポニテ男子。
その姿を見て、なんか和風世界に飛ばされた人がする格好ぽいなぁ、と思う。
なんせ、黒と黄色を基調としたパーカーを和風にアレンジしたような服装にポニテ、腰には刀を……。そう思ってくれ!! と言わんばかりである。
なぎあら!放課後教室☆
今日からタイトル変更にてはじまりましたこのコーナー、タイトルが変わったぐらいで内容変わってないのでよろしく!!
てことで、今日のお題は嵐の月の型。
まだまだ情報は出せないけど、何故現代である二章にて未完成なのか、それは月はサンサンと輝く太陽が降臨していないから!! 以上!!!




