29 閻魔丁 嵐視点
「一か月振りか? 閻魔丁」
レトロ感溢れる街並みと近代的街並みが交わる閻魔丁、俺達は空を飛び1時間半程でここに降り立った。
閻魔宮殿の北側に位置する桜街道。その街道には、何百年も枯れることなく、地獄桜が狂い咲いている。
その桜は現世の桜とは違い、花の色は血のような、炎のような紅色をしている。
「お前の出来事なんて、俺が知る訳ないだろ」
白が俺を軽く蛇の様に睨みつけてくる。さっきの発言が原因だろう、絶対。
少しだけ、後退りをする。(別に、蛇に睨まれたカエルとか、そんなんじゃねーぞ)
「で、お前は知らないうちになにを買ってる」
「いや、ただ単に凪にあげたら喜んでくれそうな髪飾りが売ってたから買っただけだ」
地獄桜の花弁は地獄の炎と言われているため、火野が名字の凪にはベストマッチな物だと思う。
「へ〜、凪の為にね〜」
なにやら白がニヤニヤと俺を見つめてくる。
……ん? 凪の為って!?
「なんでわかった!? て顔だな」
獲物をいじくりまわすような目、Sモード入ったな、コレ。
「Sモード、入らさせてもらってるからな」
白がまたしてもニヤニヤニヤニヤと見つめてくる。
ほんと、雪兎といい白といい心を読む力でもあるのか? それとも口にでも出してたか?
「雪兎は知らんが、俺はお前の顔を見ればだいたいわかるぞ」
まさか、思ってることが顔に出てるとは思いもしない。いや、白だからこそ見分けられるのでは?
そんなことを考えていると。
「置いてくぞー」
そんな声が聞こえて顔を上げる。すると、白が閻魔宮殿に向かって歩いていた。
♢♢
「白様・嵐様ですね。青空様と蒼炎様がお呼びです。白様は中庭へお越しください」
閻魔宮殿の入り口、そこにあるゲートにて係りの鬼に呼び止められていた。
「え? 白だけ?」
「あ、はい。白様だけです」
あっさりと肯定された。そして、係りの鬼はニカリと笑う。
「中庭には、です。嵐様は青空様と蒼炎様より、「大広間に速く行きやがれ、ばーか!」と伝言を預かっております」
……ばーかと真面目に言っている二人の顔が充分想像できる。
青い翼の髪飾りを付けた、中性的な顔立ちの剣と、時期王の器を持つ金髪獅子。
「そんじゃ、あのバカの所にでも行ってやりましょうか」
そう言って白はふっと笑って宮殿の中に入って行った。その顔はほっとしたような笑みにも見えたし、見方を変えればいじる標的にこれから会いに行ってやるという顔にも見えた。
そして忘れてはいけない小悪魔くんは白に気絶させられてずるずると引きずられていた。
白が宮殿の中に消えて行くのを見ると、気づけば俺ただ一人。係の鬼は持ち場についているし、白は行っちゃったし。
相も変わらずクソでかい宮殿の中を進んで行く。
突き当たりにある角を曲がると、亡者が列をなして並んでいるのがわかる。
恐らくこれから裁判が行われるのであろう。
死んだら俺、転生をするか霊魔界で働くかのどっちかがいいな、痛いのやだし。
「えぇと、閻魔庁(閻魔大王が裁判する部屋)がここにあるからっと」
閻魔庁の入り口にあるデカい扉の前を通り過ぎて、大広間へと向かう。そこは、地獄の戦士達や現世の戦士隊が集う場所となっている。
閻魔庁から少し進んだところにある部屋、その部屋の前に聳え立つ大きな扉。
扉が大きいのは閻魔大王が小さくならなくてもいいように、という手間省きだったりするらしい。
扉の前に立つと内側へ扉が開く。
「「いらっしゃいませ、嵐様」」
扉が開いた先では、赤髪の未右と青髪の来左が、大広間に繋がる入り口を守護していた。
閻魔拾弐星は地獄や霊界・天国・霊魔界を守護する十三人の戦士とその部下達にて構成されている。
そしてこの二人は閻魔大王を守護するという任務を任されているらしい。
「「どうぞこちらへ」」
その言葉と共に二個目の扉が双子により開かれ、大広間へと一歩一歩足を踏み入れて行く。
足を踏み入れた先、黄道十二宮の四名と閻魔大王以外にもう一人、妖怪の中に紛れて俺と同じ人の姿。
その姿を見ると地獄に来る前まで一緒にいた少女、愛おしい存在が嫌でも目に入る。
「お! 凪、こんなとこで会うなんて奇遇だな」
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白は大体の人の顔を見て何を考えているかわかるらしいですよ。
ただし表情筋が硬い人や常に作り笑いしてる人などはわからないそうな




