03 大炎町でお買い物
「ついたぞ、此処が大炎町、大焦熱地獄の獄卒が住う町」
飛沫に言われ、ぼくも高台から町を見下ろす。
眼下に広がるのは近代的な街並みで奥には線路が見え、江戸時代とかみたいな古い建物も近代的な建物に紛れながらも見える。(空の色が黒いことを除いて)それはまるで京都みたいな感じ。(自分の中のイメージだけど)
あの後、飛沫に誘導されて洞窟を進んででて来たけど洞窟の中はちょっとした迷路気分、RPGなどのゲームで洞窟のマップを探索してるみたいな気分を味わて来たと思う。
そして今、洞窟を出てほんの少し歩いて町を見下ろす高台に着いたところである。
「アツイ」
ぼくは冬服のブレザーでやられていた、というか飛沫はそんな暑そうな着物を着て暑くないのだろうか?
「ねぇ、飛沫は長袖で暑くないの?」
疑問に思ったことを素直に聞いてみた。
「あぁ、これか?」
飛沫は自分が着ている着物(黒と青の市松模様)を見せびらかす様に見せてから
「これは地獄の着物でな、長袖でありながら半袖と同じように動かしやすくて風通しもよい、だからこの暑い八大地獄ではこれが定番の着物なんだ」と言った。
へぇ流石〜、暑い地域だとそういう風に進化するんだな〜。
と内心思いつつポンと手を叩き、合点のポーズをとる。
「あ……、そういえば連れてきてくれたお礼を言ってなかったけ。ありがと」
少し照れくさいが飛沫の顔を見てしっかりお礼を告げる。
「あぁ、別にいいよ。俺は戦士としてやっただけだ」
戦士? そういえば自己紹介の時に十二宮とかそんなこと言ってたっけ……。
「さてと……。とりあえずは半袖探すか」
そうだった、このままじゃぁぼくは暑くて死ぬ。
「まっ、なくてもこの着物を買えばいいしな」
飛沫は50点の笑顔(ぼく自身の評価)を魅せてから下へ続く階段を下っていった。
♢♢
ぼく達は町へ降りてから服屋《縁服》という店に入った。
「すいませ〜ん、店に半袖売ってませんか〜?」
ぼくは柿色の着物を着た店員さん(鬼)に棚をチラチラ見ながら半袖がないのか聞いてみた。
普通に駄菓子屋とかでいそうな顔立ちでなんかほっとする。
「ごめんねー、この店には半袖は売ってないの、多分他の服屋さんとか行ってもないと思うよ」
「そ、そうですか」
「んじゃ、決定だな、着物を買ってこい」
そう言って飛沫はぼくにこの世界(地獄)のお金を渡してくれた。
「え? ナンデ?」
「お前、この世界のお金を持ってないだろ、今貸すからさ、いつか返せよ」
そう言って飛沫は店を出て行く。
「あ、ありがとう」
聞こえているかどうかわからないが一応お礼は言っておく。
「お〜、お前さんは人間かね?」
「はい、そうですけど?」
なんでぼくが人間だってわかったんだろ? そういうオーラをだしてるのかな?
そんな疑問も考える暇がないまま話しが進む。
「いやね、人間がこの店に来たのが久しぶりなもんでね〜」
ぼくの前にも地獄に生きて来た人がいるのか。
「1年ぶりぐらいかね〜」
「…………」
案外最近であったことに驚き、何も言葉が出なかった。
「話しをずらしちゃったね、この金額じゃこのコーナー辺りかな?」
そう言って店員さんにコーナーを案内してもらいぼくは桜色の襦袢を選ぶ。
「そういえば貴方達は閻魔丁に行くのでしょ?」
「閻魔帳ってあの人生の事を書かれてるっていうあの帳簿の」
えんまちょうと聞きあの人が死ぬ時間が書いてあったり、その人の罪が書かれてたりするあの閻魔帳をぼくはイメージする。
だがしかし「いやね、そっちじゃないよ」と店員さん。
「そっちじゃないって?」
ぼくは間違えてイメージしてしまったのだろうか?
「ほんと、現世のひとは”閻魔帳”と”閻魔丁”を聞き間違えるね」
どうやらぼく以外の人も間違えていたようだ、良かった、と思いぼくはなんかちょっとホッとする。
ほっとしてるのも束の間。
「あのね、ここから閻魔様がおられる閻魔丁に行くのに結構あるからこの股引とかどうだい」
などなどして店員さんに言われ動きやすい着物へと着替えることに。
◯
「し、飛沫、これ、どうかな?」
着替え終わったので恥ずかしなら飛沫に見てもらう。
いくら今日初めて会ったばっかりのぼくとはいえこの”かわいさ”には胸を突かれるだろ。
「ほぉ、黒と桜色に蝶の羽の柄をした着物か」
飛沫は電柱に寄りかかりながら服屋前の茶屋に売ってるであろう三色団子を口にしながらぼくを見る。
ゴクリ――なんと言われるかと思い唾を飲み込む。
「カッコいいじゃねか」
飛沫はそう言って笑てみせる。
「……」
だけど予想外の反応にぼくは黙りこくる。
「どうした? 頬を膨らませて」
知らない間に頬を膨らませていたようだ。
「なんでもない!」
なんか恥ずかしくて強く言ってしまった。
「ならいいが」
そう言いながら飛沫は食べ終わったであろう団子の串刺しを道の反対側にある茶屋のゴミ箱に放り投げる。
グゥゥ〜
うぅ、お腹が鳴ってしまった。
恥ずかしい、今絶対顔が真っ赤な気がする。
「お前、腹減ってるのか?」
「う、うん」
飛沫が突然話しを変えるのでつい答えてしまった。
だって学校帰りだからしょうがないじゃん。