17 氷の花
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「ふぁ〜、外はばか寒いな」
白い息を吐きながら一歩一歩足を前に進める。
さすが雪国の八寒地獄、雪国出身じゃないし行ったこともないからこの寒さにはついていけないかもしれない。
「それより、薪がなくなってきたから雪柳さんへの恩返しに薪を取りに来たのに奏は手伝いに来やしない。買う物があると言って買い物に行った白は別として、奏は『嵐が行くものでしょ?早く行ってきなさい』って、ムカつくわー」
そうぼやきながら教えてもらった薪置場に向かう。
「早く取って戻ろ」
気を紛らすために辺りを見渡す。
今は暗くて見えないが、きっと明るかったらキラキラ光る白銀の世界が見えるのだろうか?
ちょっと楽しみ。(雪国出身じゃないから言えることだけど)
「え〜と、家の裏にある置場の中からっと」
薪を取り家に戻る、これだけで済むんだけどそれで終わらないのが妖怪が見える体質。
まぁ、体質以外にもばぁちゃんから託された”これ”も1つの要因なんだけど。
玄関の目の前に来たところで ドシンドシン と地響きが辺り一帯から鳴り響く。
ふっと背後から巨大な何かの気配がして、恐る恐る振り向くと……。
「グォーーーー!!」
そこにいたのは白くて動物園で水の中を泳いでいるイメージがあるあの……。
「ほ、北極熊!!!」
薪を玄関前の屋根の下に急いで置く。
腰から六花のペンダントを取り出し、刀である”氷嵐刀”に姿を変える。
足に風を纏わせ家から距離をおく。(流石に壊せないし)
これぐらい離れれば良いだろ。
「グォーーー!」
目を赤くした熊がこちらに向かってくる。
「やっぱり狙いは俺か?」
左手を胸ポケットに添える。
胸ポケットには”アレ”、否、お守りの中に入った紅魔刀を入れている。
紅魔刀をばぁちゃんから託されてから妖怪共に狙われ始めた。
だけどばぁちゃんに恨みはない。何故なら恨むも何も死ぬ前に託された物だし、その後にはばぁちゃんが昔所属していたとされる、祓屋が集う政府公認の裏組織、紅葉組への入隊や月読命との契約等の充分な土壌はできてきたからな。
「グォーーー!!」
熊の引っ掻き攻撃を避け、攻撃の体制をとる。
「氷の幕」
刃に冷気がまとわりつく
「壱ノ型」
でかいずーたいして案外速い攻撃をしてくるがそれをかわしつつ攻撃する。
「氷花」
熊を軽く斬りつけて後ろへまわる。
熊は熊で斬りつけたとこから氷が広がり暗闇の雪の上で綺麗な氷の花と化した。
「これぐらいでいいか」
おそらくこれは最近地獄で問題視されている巨大化したり凶暴化したりする現象だろう。
氷の花と化した熊の後ろがほんわか明るくなり覗くと。
三匹の熊と一人の少年の姿がありその周りにはいくつかの熊が倒れていた。
音のよく響く夜、俺は耳をすませて見てると。
「炎の幕」
刀に炎がまとわりつくのがわかる。
「捌ノ型」
刀を横にだして踊るように刀を振る。
「炎舞!!」
夜の暗い空間に声が響く。
それと同時に周りの熊を切り裂いた。
少年、否、白はこちらに気づいたらしくこちらに向かってくる。
「おぅ、白おつかれ」
「おぅ、おつかれ」
すれ違いながらハイタッチをする。
「氷の花はお前がやったのか?」
これ?あぁ、氷の花ねー。
「入隊時よりうまくなったんじゃないかな」
ウグ
なんか褒められてるのに嬉しくないような気がする。
「そういえば白は、どこいってきたんだ?」
ふっと疑問を投げかけてみた。
「お前んち2人とも地獄の防寒着を持ってないだろ、だから買ってきてやったんだ」
フーン
そのまま俺たちは薪を拾って家の中に入る。
氷嵐刀
使用者 氷雨 嵐
持ち手の色 緑 水色
刀の色 黄緑
鍔 六花(雪の結晶)




