出会いのひまわり畑
3話
高校一年生になった宗矩。
あれから1度もあの日のことを
思い出すことも無く
また、誰かに話すこともなかった。
ただ、いつものように独りの日々を過ごしていた。
いつものように朝起き ご飯を作り 洗濯物を干し
学校へ行き 授業を受け 家に帰り 掃除をしそして 寝る
まるで そうやって動くようにプログラムされた
ロボットのように 日々を過ごしていた。
何も悲しくはなかった 喜びもなかった
辛くもなく 苦しくもなく 楽しくもなく
ただただ過ごしていた。
雲ひとつない綺麗な青が見える そんな夏休みの一日
母親とよく来たひまわり畑へやってきた。
ひまわりは立派に咲いていた
夏の日差しを浴びながら 胸を張って
花は空に向かって 堂々と。
その日は父親と母親 そして親戚の命日である。
家の近くにあるので、お墓参りを済ませたあと
何故か足は自然とひまわり畑へ向かった。
自分でも不思議に思っていた
「どうしてここへ来たのだろうか…。」
そう独り言をこぼした時だった。
「それはね 運命の気まぐれと言うやつさ!」
元気な声が聞こえてきた。
「えっ?」
(気のせいだろうか、今声が…)
驚き辺りをキョロキョロと見回してみたが
誰もいない 物音もしない そして声もしない。
「あぁ…そうか 疲れて空耳が酷いのかな。」
そういった時
「空耳だなんて酷いじゃないか!
君の目の前にちゃんといるんだぞ!」
そんな声が拗ねた口調で聞こえた。
思わず前を見る しかし目の前には誰もいない。
「なーんてね、残念でした! うっしろでーす!」
という声と共に、
後ろに白いワンピースの少女が立っていた。
その少女は美しかった。
背はそれほど高くなく 綺麗な黒髪ロング、
肌の日焼けの後が二の腕から上と下
膝の上と下 首元と胸元とで
白い肌と日焼けの後がくっきりと別れていた。
そして 大きな麦わら帽子を被っていた。
「うおっ、、 本当にいたのか…。」
まさかいるとは思わず つい言葉が漏れてしまった。
「いるよー いるに決まってるでしょぉー!
ところで君は元気ないねぇー!
夏だよ!元気に、楽しく あくてぃぶに!」
満面の笑みでそう言い放った。
「元気がないか いつもこんな感じだから
分からないや。」
「そうかーそうかー、よし!なら
私が元気にしてあげようじゃないか!」
突然そんなことを言い出した。
「何を…言ってるの、君は…」
正直ゴメンだった
(この人と一緒にいるととても疲れそうだ…
早いところ家に帰ろう。)
そう思った。
「まぁ、そう言わずさぁー 私に付き合ってよ。」
「いやいや 僕はこれから用事があるから
せっかくの誘いなのに ごめんね。」
壮大に嘘をついていた。
「…………」
しばらくその少女は何も言わなかった。
(流石に スパッと言い過ぎたかな…)
人と関わりを持ってこなかった宗矩は
距離感や関わり方がわからず
この無言の反応を
少し気にしてしまった。
「で?元気のない君!名前は?!」
「…えぇ……」
……人の話を全く聞いていなかった。
心配を返してほしい。
しばらく無言でいると
「なーまーえーはー!なーんーでーすーかー!」
聞こえてないと思われたのか
そんな言い方で再度聞いてきた。
あまり黙ってるのも悪いので
その質問に答えた。
「あ、えっと、僕は 千歳 宗矩
えっと…君は?」
「そうかーそうか! 君は宗矩くんというのか!
いい名前だねぇ! うんうん!良い!
あっ、私は初葉 鈴音だよ!
鈴音って呼んでね!宗矩くん!
以後お見知りおきをーーー!」
堂々とした名乗りだった。
正直あっけに取られて
口を開けたまま見惚れていた。
そうしていると 鈴音は笑いながら聞いてきた。
「君ぃーせっかくの夏休みだというのに
遊ばないのー? あ、それとももしかして
遊ぶ友達がいなのかな?」
的確に言い当てられた。
なんか悔しい。 ちくしょう。
黙っているのも癪なので 詰まりながら答えた。
「その通り 僕には友達はいないよ。
だから こうして独りでいるんだよ。
それが…なにか?」
そう答えたら鈴音は、
「一人ぼっちかぁ〜 寂しいでしょ?
ねぇねぇ 一人ぼっちは寂しいでしょぉ?」
なんだか ムッとするような言い方で
そんなことを言われても 反応に困るのだが
「別に寂しくないよ。
慣れてるから 一人ぼっちは寂しく…ない。」
そう言った 慣れてるのは事実だった。
今までもずっとそうだったから
知らないうちにそれに慣れてしまった。
『そういった反面 やっぱり少しは… ……
いや…かなり寂しいよ。』
気がつけば鈴音は そんなこと言っていた
「ちょっと 初葉さん、勝手にひとの気持ちを
言わないで そんなこと思ってないし。」
「あっ、そうだった? そりゃごめんよ 、
って 初葉さんじゃないよ! 鈴音って呼んでよ!」
(慌てるのそこなのか。) そう思った。
「ところでさ お願いがあるんだけどさ。」
突然真面目な口調でそんなことを言ってきた。
「…? どうしたの?」
もしかして何かまじめな話…
「いやー 少し前に来たんだけど
実は私が暮らす家がないんだよねぇ
ってな訳で家に住まわせてくれない?」
(…….?.……!…………?!!?!)
「んぁっ?!」間抜けな声が出た。
「えっと、だから…その 家に…ね?」
「あ、あぁ 分かってるよ それは理解してる。
けど 何でうちに?」
「えーと それは 偶然君と会ったから!」
いや適当だなおい
「まぁ まぁ いいじゃないか!」
「いやいや 初…鈴音さ……鈴音の
ご両親は?いないの?」
そういい終わったあと 後悔をした。
もしかしたら 僕と同じで 両親が亡くなっているのかもしれないと 言うことを考えずに
そう言ってしまったからである。
「あー、いるよ? 今は仕事で海外に!
両親共々しばらく向こうで仕事するから
私だけ一人暮らしなんだよね〜
という訳なんだよ頼むよお願いだよ〜!」
「でもそういうのって 保護者の許可とか
役場で手続きとかいるんじゃないの?」
「あー、あー、いいんだよ そういうのは
物語なんだから、 はしょってもバレやしないよ。」
(なんてことを言う人だろう 普通にアウトだよ
なんだよ物語って。)
「住まわせてくれる代わりにさぁ
私が友達になってあげるからさ!
ねっ?ねっ?いいでしょ?いいよね?」
圧がすごかった 何だこの人。
「えっ…うっ、んー ……………………………………………………………………………
じゃ、じゃあ いい…よ…。」
根負けするほど言われてないのに、
何故か受け入れてしまった
「ホントに?!嘘じゃない?! 騙してない?!
ホントの本当にほんと?!
やったぁぁあああ!」
笑って喜んでいた、
「それじゃあ これからよろしくね!
宗矩くん! 」
「う、うん よろしくね 鈴音…」
こうして
よく分からない居候との生活が始まった。