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運命の……

 なにはともあれ、言葉が通じるようになったのは大変ありがたい。

リエラちゃんは、わたしの左腕から零れ落ちてる何かが見えていたらしくて、それがこの世界で言う『魔力』と言う物だと言う事や、その取り扱い方法を丁寧に教えてくれた。



ゲームのチュートリアルみたいだ。



 なーんて、暢気な事を考えながら教わった通りにしてみると、思いの外簡単に魔力の取り扱いは行えるようになる。

この辺は、創造主様の増設工事の時になんかされてるのかも知れないなと思いながら、左腕から零れ落ちる魔力が減った事にホッとした。

零れ落ちる量が減った事によって、痛みも少し和らいでくれたのが嬉しい。


「ところで、創造主様からのご伝言があります。」

「伝言?」


 改まった様子に、わたしも背筋を正す。


「『半年以内に戻らないと、貴女の魂は失われる』だそうです。」

「……おおう。」


 わたしの反応に、リエラちゃんは眉を寄せる。

ああ、この反応は良く分かるよ。

『こいつ、本当に分かってるのか?』ってやつだ。


「まぁ、なんとかするしかないかなぁ。」


 今更、どうしようもない事だ。

そう思いながら、彼女の無言の問いに答える。

あの時に、『今は駄目』だと思って、魂の護り手(お母さん)の元から無理矢理離れた時点で、可能性として最終的にはそうなるんじゃないかと考えていた。

むしろ、『戻る』という選択肢が在るらしい事に感謝するしかない。

お母さんのところに行きさえすれば、なんとかなるんだろう。

どうやって行くかを考えないと。

ただ、その過程できっと、あのまま転生した場合に失われる事が無かった物が無くなっているんだろうけど。

 今、彼女(リエラちゃん)から、『魂が失われる』と言う言葉を聞いた瞬間に、自分の左腕から零れ落ちているモノの正体が不意に理解出来た。

今の身体や魂を構成している『魔力』『神力』と、『藤咲りりん』の『記憶』や『想い』、だ。

きっと、半年も経つと、それらの中の必要だったものが零れ落ち切ってしまうんだと思う。

残るのは、あっても無くてもどうでもいい程度のモノか……残して来てしまった左腕分以上のモノでないだけかは知らないけど。

アレに、私の要素はほぼなさそうだからなぁ……。



あ。

そういうことか。



 『半年』が示すものが不意に頭に浮かび、その事に納得する。

妊娠って、した事が無いから良く分からないんだけど、妊娠に気がつくのって早くても2カ月目に差しかかったところらしい。

私のこちらでの体は、丁度鼓動を打ち始めるところだったんだけど、あれはどれくらいだったんだろう?

そこから半年って事は早くて8ヶ月目。

良く聞く様な気がする3カ月目で気付いたんだったら9ヶ月目だ。

妊娠は10月10日とつきとうかとよく言うから、『半年』以内にあちらに戻れないと『死産』になると言う事か。

この身体がその後も維持できるかどうかは分からないけど、零れ落ちていく力やなんやらの流出をなんとかできなければ、身体だけあってもどうしようもない。

むしろ、そっちが手遅れになるから『死産』になるのかも。

考えれば考える程、思考が暗くなるな。

もう、やめとくか。


「リエラちゃんは心配し過ぎないで?

今は、アルの側にいるべきだと思ったから、それで自分の意思でそうしたんだから。」


 彼女が申し訳なく思う様な事じゃないんだからと、ことさらに明るい口調でそう告げると、リエラちゃんは逆に泣きそうな顔になってしまった。


「……不安になったりはしないんですか?」

「それ、口にしても今は良い事無いと思うから考えない。まずは、アルを落ち着かせてからかな。」

「そう……ですか。変な事を聞いてごめんなさい。」


 不安は、無い訳じゃない。

でも、今考えるのは悪手だろうと思う。

ソレを考えるのは、アルを落ち着かせて、きちんと話し合いが出来るようになってからだ。

リエラちゃんも、今聞く事じゃなかったと思ったらしく、神妙な顔をして頭を下げる。

心配して言ってくれただけなんだから、そんな顔をしなくてもいいんだけど……。


「では、リリンさんの出来ることと出来ない事の洗い出しをしていきましょうか。」


 咳払いを一つして気分を切り替えた彼女が切りだしたのは、私の能力判定。

この世界の管理者(下位神)にされてしまったと言う、私は結構えげつない事も色々と出来るらしい。

それが、どんなモノなのかを確認して、隠した方がいいものと、見せても構わなそうな物を取捨選択していこうと言うのが彼女の提案だった。

流石、出来る子は違う……。


 色々と、彼女が創造主様から教わった――と言っても、書類を丸投げされたイメージらしいんだけど――話しだと、こんな事が出来るはずらしい。


 『運命の紡ぎ手』って言うのは、結構特殊な立場らしくて、

無意識に行われるのは時間経過(ときながし)縁結び(えにしむすび)、空間調整。

時間経過(ときながし)は、普通に流れている時間が規則正しく進むようにするもので、縁結び(えにしむすび)は、悪縁・良縁問わず様々なモノとの縁を結ぶものらしい。

魔法の行使補助は、時間操作系・空間操作系。


 リエラちゃんに与えられている情報を聞いて理解したのは、そのお役目というのが、かなり抽象的で曖昧な現象だって言う事。

し・か・も!

どれもコレも、無意識下だけじゃなく、故意に悪用する事も出来るとか言うモノばっかりで、なんというか笑うしかない感じだ。

 時間経過(ときながし)は、わたしが極度の緊張状態に陥っちゃったりすると、世界中の(・・・・)時間の流れまで緩やかになってしまうくさい。

ヤバすぎる。

ついでに言うなら、故意に一部だけ動かして他を止めるとかも出来るっぽいよ?

ジョ○ョの奇○な冒険!?

誰かが泣くまで殴り続けなきゃ駄目な感じ??

 縁結び(えにしむすび)も、何も考えていなければ適当な人間関係の元、結ばれて行くモノみたいだけど、意識的に『あの子とこの子を仲違いさせちゃえー』とか、『あの人には、あの子がお似合いねー』みたいな真似も出来るみたいだ。

勿論、逆に結ばれていた『縁を切る』のも出来る。

切られた縁は、わたしが故意に交わらせなければそのまま一生続く。

二度と物理的にも出会えなくなるって方向で。

うわ、やだ。

気を付けないとヤバすぎだと思う。

 空間調整って言うのは、1メートルを1メートルとして認識させるってヤツだ。

訳が分からない?

私も説明しててよく分からないよ!

故意に認識をおかしくした場合、1メートルの距離を移動するのに丸一日掛かる様にも出来るって言うと分かるかな??

ゴメン、自分で例をあげておいてナンだけど、私は分からん……。

 魔法系は、まぁゲームとかやってると分かりやすいよねぇ。

わたしが使用可能かどうかとか、使える範囲を決めていいらしいんだけど、正直殆ど使用不可にすることになりそうだ。

時間操作系の『加速』『減速』はまぁいいかな?

空間操作系の『異次元収納』は泥棒に悪用されそうで嫌だ。

『空間転移』はいい事が起きる気がしない。

『結界』はまぁいいかな?

自衛手段的な方向での使用に限ってオーケーかも。

他にも使い用はあるけど、分かりやすい感じだとこんなもん。


 ところで、一番何でアレだなーと思ったのが縁結び(えにしむすび)

これね、運命の赤い糸みたいなのも見えるんだ……。

わたしのイメージ的なものだと思うんだけど、リエラちゃんの左の小指にはしっかりした赤い糸が隣の部屋に向かって伸びていた。

これはいいんだ。

隣の部屋から、ぶっとい赤い鎖・・・・・・・が私に向かって伸びててねぇ……。

思わず、リエラちゃんの淹れてくれたお茶を鼻から噴いてしまったのさ……。



どんだけ執着してるんだ!?

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