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東方神魔伝  作者: 甘味処アリス
前座編──集まる人々、再開の絆──
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第2話『VS現代の天才』

第2話です。今回から3話は超絶暇人先生のところのキャラクター、因縁の相手である『霧裂想刃』と霊斗中心の回になってます!

「この程度で俺を倒せると……笑っちゃうね?」

「くっ……」


 クラレントを耐えきって迫ってくる終作に対して、僕はクラレントを構える。


「やめなさい、変態」

「あべしっ」


 僕が構えた瞬間、終作の背後から突然美少女が現れた。そして、終作の頭を一発ペシリと殴……る……?


 訂正。ペシリではなく、ズドンと殴り潰した。地面に埋もれる終作は、スライムのようにグニャリと変形して元の姿に戻った。


「桜ちゃーん。酷いじゃないかぁーん」

「もっぺん沈みたいの?」

「別に……今日のおいらは少しアレがドウしてコレでアンナ感じだから戦ってもいいんだけどネ」


 この2人が全力でぶつかりあっても、結局結果は出ないんだろうなー……。そんな風に僕は一瞬感じた。

 桜さんから感じ取れる力も、終作さんの持つ不思議な力も、どっちも同じくらい強くて……僕にはとてもじゃないけど及ばなそうな感じだ。


「ねェ、桜ちん」

「何よ変態」

「アレ、何だと思う?」

「アレ?」


 終作と桜さんは、仲が良いみたいだ。終作さんの指差した先にある異次元と繋がる空間から漏れ出る邪気を、2人は気にしないように振る舞う。


「アレは多分、神谷さんの何かでしょ?」

「だよねェー。ま、俺ちんは何なのか知ってるんだケド」


 終作がそう言って指をパッチンと鳴らすと、異次元の穴から何かが落ちてきた。


「おいでませ幻想郷。ここは廃れきった世界。アンタだって本気で戦えるんじゃないかぃ? 拒絶の魔狼さん」

「我を呼ぶは汝か。我が名は牙狼絶。最強の妖……なのは昔の話。今はただの隠居大妖怪だよ」


 そう言った少女の視線は、どこでもなく僕をじっと見つめていた。何となくこそばゆくて、誤魔化すように後ろを振り向くと、少女はクツクツと笑った。


「面白いね、キミ」

「そりゃどうも」

「うんうん。面白いことはいいコトだよ。──ま、君はまだ未熟者みたいだケド?」


 終作と同じように振る舞う少女は、終作が2人増えたようでなんとなく辛い気持ちになった。

 理由はわからないけど……。


「とりあえず、今ここに呼ばれているのはコレだけかな?」

「そうみたいだヨ〜ン」


 そう言って戯ける終作の頭に、桜さんが拳骨を振り下ろした。

 アニメみたいに、頭がたんこぶのように膨れ上がる。


 桜さんはそれを無視して、前に躍り出た。


「ようこそ少年。ゆっくり学んでいくといいわ。貴方に狐の御加護がありますように」


 ニッコリと微笑んだ桜さんは、僕の心臓の鼓動を膨れ上がらせるには十分すぎる美貌だった。


「よしじゃあ、最初に奴らがいつからあんな風にやってんのかを教えてやろう!」


 終作さんはそう言うと、おもむろにに口を開き始めた。


◇◆◇◆◇


 ──時は遡り、20年前──


「よく来たな。あの時のお返しといこうじゃないか」

「お前は……いや、言うな。覚えているぞ。俺を殺した男──博麗霊斗!」

「おう、覚えててくれて何よりだ。結局椛には勝てたのか?」


 霊斗がそう言った瞬間、ブチィッという音が鳴る。それが、堪忍袋の切れた音であるのは想刃の顔を見れば明白だ。そして、霊斗と対峙する現代の天才──霧裂想刃が、霊斗に襲いかかった。


「ハアッ!」


 想刃の刃が霊斗の首を斬り落とす。が、それは状況を何も変えはしない。


 死んだ筈の霊斗が、首無しのまま後ろ回し蹴りで想刃の肉体を吹き飛ばした。


「グッ!」


 超技術が一つ──肉鎧。筋肉を硬化させ、その上に霊力の膜で覆うことで肉体を鎧と化す技。

 想刃はそれを使いこなし──否。使いこなしたなどという言葉では済まぬほどの硬さで霊斗の蹴りを受けきる。


 首が再生した霊斗は、口角を吊り上げて挑発する。


「さぁ──やろうぜ、現代の天才さん? いいや、あえてこう言おう。幻想郷の『負け組』さんよ」

「チッ!!」


 想刃はその挑発にのるように、光と変わらぬ速度で霊斗に向かっていく。

 そのあまりの速度に、霊斗は対応しきれない──わけがなかった。

 霊斗は全能である。故に、未来予測、適応能力、運動神経、反射神経──それらどれを取っても、超技術を越える肉体を、軽く越えるのだ。圧倒的なまでの肉体能力と技術の差。

 ゲーム風に言えば、ステータスとスキルの量の差を使った単純であり、圧倒的なまでの強さ。だからこそ、霊斗であるとも言えるのだが。


 それが、彼の能力──自分を改造する程度の能力によって得た、全てを司る程度の能力である。


「久しぶりに全力でぶつかれる相手だ。──すぐに壊れてくれるなよ?」


 霊斗はそう言うと、何処からか愛刀である龍神王武を取り出す。

 想刃もそれに対して何処からか剣を取り出し、構えた。


「閻閣『孤高の朱炎刃(ここうノしゅえんじん)』」


 想刃がそう唱えた瞬間、想刃の持つ刀に炎が宿る。だが、それは以前のような憎悪の炎ではない。──何処までも揺るぎなく、絶えず輝き続ける信念の炎である。

 それは──信念が潰えない限り決して消えることはない、至高の炎。感情の顕現といっても違いないだろう。


「へぇ。──悪いな、勘違いしてたよ。俺の名は博麗霊斗。『幻想郷』最強の男の1人だ。その全力をもってして、お前と戦うことを誓おう!!」


 霊斗はそう叫ぶと、龍神王武を構える。それは『最強の生物』である龍神の鱗が素材に使われた、概念として、物質として、決して劣化することのない刀。強力無比なる霊斗の武器である。


 想刃の一振りと霊斗の一振りがぶつかり合う。それは空間すらも斬り裂き、時間すらも斬った上で衝突しあった。


「ハアッ!」


 2振り目がぶつかり合う。達人同士の対決において、それが同じ極の形であるならば。その戦いは、全く同じモノになる。

 一瞬でも引いた者が負ける、そんな領域にある一撃のぶつかり合いによって2人を風が通り抜けた。──いや、通り抜けたのは風ではなく、衝撃波である。


 クレーターのような範囲が遠く、数十キロ先まで広がる。

 霊斗は想刃の三振り目を人差し指と中指で抑え込むとスペルカードを出現させ、離れた距離に転移しながら唱えた。


「霊符『夢想封印-無-』」


 それは、霊夢の使う夢想封印とは明らかに違っていた。想刃の周りを埋め尽くすような弾幕。まさしく、全てを無に還す。ただそれだけのためのスペルである。


「うぉぉぉお!!!」


 想刃は勇敢にも、それに向かって突撃していく。切り続けるが、まだ視界はひらけない。その間にも、弾幕は着実に想刃に近づいて行くのだ。

 一体、どれだけの弾幕を斬り伏せただろう。想刃がやっとの思いで弾幕の壁の中から活路を見出した瞬間──。


「……おい、ここは何処だ?」


 ──想刃は、見知らぬ世界に転移した。

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