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東方神魔伝  作者: 甘味処アリス
本格編──最後の戦い編──
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第5話『最終戦2』

 感情の魔王が、目の前で巨剣を振るう巌のような大男の感情を弄ぶ。

 巌のような大男──ヘラクレスは対魔力を持たない。故に、それらの干渉は有効だ。……もっとも、ヘラクレスは『常に狂っている』状態なので、効果は薄いだろう。


 一方で、狼天狗の狼は目の前にいる怪物に対して手が出せないでいた。

 ヘラクレスにはAランク以上の攻撃しか通用しない。

 しかし、狼の筋力は高く見積もってもBかCがいいところだ。

 狼には攻撃手段がない──普通ならば。


 アルマが召喚した三体のドラゴンも瞬く間に巨剣に倒され、ヘラクレスの攻撃がアルマに迫り寄る──。


「せいやぁっ!!」


 狼は叫びながら、手に持つ刀を振るう。霊斗に渡された逸品、『神滅剣』。

 霊斗の持つ世界創世剣同様、抑止力と星の作り出す神造兵器の2つの側面を併せ持つ剣。その本質は、名前の通り『神を滅ぼす』ことにある。

 その能力は宇宙中の星々の力を持つ、即ち宇宙と同格である故に──外なる神にも使えるだろう。


 星外から迫る星の蹂躙者(セファール)とはまた違った神々の蹂躙。()()を破壊するために作り出した兵器。故に──それは、()の加護を得ている神性系統に対する非常に優秀な特効能力を持つ。


 霊斗はただの武器を宝具化することなど容易い。故に──狼の攻撃は、ヘラクレスにも通用する。

 ヘラクレスの頑強な皮膚を、狼の不意打ちの一撃が切り裂く。ヘラクレスの二の腕から鮮血が飛び散り、連続する狼の攻撃がヘラクレスの体を傷つけていく。


「おおー……流石だな」

「手伝ってくださいよ!!」


 そんな会話をしていると、ヘラクレスが傷だらけの肉体で棍棒を振り回す。

 鮮血が飛び散る。だからなんだと言うのだ。

 腕が切り裂かれる。だからなんだと言うのだ。

 止まらない。止まるわけにはいかない。


 この腕を止めれば、この攻撃を止めれば、この動きを止めれば。

 愛する者が残った世界、発狂するヘラクレスが居ない世界──家族がみんな生き残った世界が、変わってしまう。


 ヘラクレスはその肉体が掃き溜めのようになってもなお、血だらけの手足で立ち上がる。

 武器はもうダメだが、己の肉体は、まだ振るうことができる。武器がダメなら素手で。素手がダメなら足で。足がダメなら歯で。歯がダメなら骨で。


 その体が動かなくなるまで。ヘラクレスは己の愛するものを守るため武力を振るう。


「うわあっ!」

「チッ!」


 そんなヘラクレスの一撃を、アルマは自身の持つチェーンソーで防ぐ。


「──!!」

「いまだ狼!」

「言われなくても!」


 アルマが右手のガントレットでヘラクレスの動きを封じ、狼が神滅剣でトドメを刺す──ことは出来なかった。


「うわっ!?」


 ヘラクレスはその筋力で自身を拘束するガントレットごと、アルマを振り回す。

 狼がそれによって近づけずにいると、アルマを投げつけられる。


「うぐっ!」

「ぐあっ! 悪い狼!」


 ヘラクレスはその一瞬の隙に、2人に対して巨剣を持って襲いかかる。


「くそっ!」


 アルマのガントレットが盾の形に変わり、さらにチェーンソーのような魔剣大百足や心臓の鎌、ソウル・ザ・グリードと狼の盾や刀の数々がヘラクレスの巨剣を防ぐ。


「□□□□□□──!!」


 しかし。ヘラクレスの筋力で、アルマと狼は押しつぶされる。いかに武器が強力であろうと、防御力が高かろうと。持ち主が軽ければ、重さを伴う一撃は耐えきれないのである。


「くそっ! 使いたくなかったが……昇華『怠惰に塗れし不浄の神』」


 アルマがそのスペルを宣言した瞬間、アルマの姿は人間のようになる。その足元を灰色の水溜り──外なる神アブホースが取り巻く。


「俺は不可能を──弄る!」


 ヘラクレスの加重を物ともせず、アルマはヘラクレスの重い一撃を跳ね除ける。


「らぁ──!!」


 アルマはそのまま、左手に外なる神の加護を集めてヘラクレスの左胸に放つ。

 その攻撃はヘラクレスの肉体の不死性すら剥奪し、ヘラクレスの肉体を抉り、穿つ。


「お前にも守りたいものはあるだろうが……それは俺たちだって同じだ。悪いが、ここは切り抜けさせてもらう」


「す、すごい……」


 アルマは仮にも魔王である。世界の柱たる存在であり、同時に──怠惰の罪を持つ者。その実力は、十分である。


 その次の瞬間。彼は突然現れた遊楽調の魔王に嬲り殺されることとなる。


「狼!」

「人の心配をする余裕があるのかい?」

「テメェは──」

「我が名はラグナロク。終焉の権化たる魔王である。背負う罪の名は──終局。終わりを刮目せよ」


 ラグナロク。彼女は遊楽調を終わりへと導いたものである。同時に全ての因果律を無視して終焉を与する者。


 外なる神らもまた、その力には抗えぬ。言葉のあやの力もまた、ソレには抗えぬ。抗うならば求められし力は、終局能力に対をなす救済能力、もしくは──抑止力と、そう呼ばれるモノなり。


 彼女は、内に潜む傲慢の魔神に突き動かされ動く。その魔神の名は次元支配者であり上位次元者、従って──二次元(画面の中)の存在である限り、それは敵わない。

 悪夢の、再臨である。


 ラグナロクの剣が振るわれる。アルマもそれに抵抗しようとするが──しかしアルマの武器は破壊され、ラグナロクによって細切れにされていった。


「想刃は──?」


 アルマは昇華時の能力、不可能を弄る程度の能力で想刃とラグナロクが衝突したことを見ていた。──想刃の結末が、見えない。


◇◆◇◆◇


 想刃VSラグナロク


「ぐっ……くそっ……!」


 想刃がうめき声をあげる。地を這ってなお動き出そうとする想刃を制するように、ラグナロクは言葉を放った。


「諦めた方がいいんじゃない? 霊斗にすら勝てないあなたが私に勝てる通りはないよね!」


 霊斗には確かに勝てなかったが、だがしかし霊斗に負けたわけでもない。その事実を知りながら無視し、ラグナロクはあくまで無邪気にそう振舞いながら、想刃の周囲に蟲の大群を出現させる。

 悍ましいソレらは想刃を取り囲み、取り込んでいった。やがて想刃を蟲の大群が覆い尽くし──想刃の肉体を蝕んでいく。


「あ、ァァァァァァァァぁぁ!!」


 冒涜的で凄惨な光景が、そこにはあった。外なる神らの邪神もかくやと言うほどの悪夢的な光景。

 血は地面に流れヘドロとなり、地面を赤黒く汚していく。


「──これで思い知ったかい。私の力、終局能力を」


 そう言って、ラグナロクは歩み始める。次なる標的を、殺すため──。

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