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東方神魔伝  作者: 甘味処アリス
本格編──最後の戦い編──
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第4話『最終戦1』

今回は磔VSクー・フーリン、霊斗VS晃太です!

 ソレは、足りなかったのであろう。

 神霊の蹂躙者、セファールの巨人。

 その胸に刺さった矢は、しかし、威力が圧倒的に足りていなかった。


 次の瞬間矢は光を失い、地面へと堕ちていく。セファールのその胸に、一切の傷はなかった。


 しかし。それに対して、巨大な白蛇が突撃していく。その全長、600メートル。何もない宇宙を泳ぐその姿は、まさしく外なる神に類するモノに似つかわしい。

 その白蛇の力強さに、白き巨人は吹き飛ばされる。


「……」

「霊樹は死んだ。だが……ここからは俺たちが代わりに戦おう」


 霊樹の魔力は底を尽き、霊樹自身の精神も宝具によって死滅した。しかし、そこに宿る英霊、亡霊が霊樹の体に宿ることは可能だ。


 もう、霊樹は戻らない。しかし、その肉体は武力となる。

 そして、その肉体に宿る現在の魂は……半神の英雄、剣神たるもの、刀哉であった。


「真の達人は武器を、肉体を選ばない」


 それは、円卓最強の騎士であるランスロットも持ち得るスキル。最強である故に、技術者である故に。その技は肉体に、武器に、縛られない。

 ──そう、ソレは「無窮の武練」と称される。達人故のスキルである。

 そのスキルがあるが故に、彼は肉体は違えど全力を出せるのだ。


 彼はセファールの白い巨人に突撃した白蛇……ファラクの背に立つと武器を構えた。様々な英霊を内包する霊樹。その、仮の精神の表層として。


 ファラク&霊樹(刀哉)VSセファールの白い巨人


◇◆◇◆◇


 一方で、霊樹に守られた上司、シルク、想刃は、目の前に現れた存在に絶句していた。


「シルク、想刃。俺は直接手を下すことは出来ない、2人に任せる」


 現在、上司は化身としてこの場に顕現している。その戦闘力は、比較的ではあるが根源にも干渉しうる干渉能力による援護に傾いている。

 もちろん、肉体、弾幕での戦闘も文句ないほどには強いだろう。しかし、それはこの場においては通用しない。


 なぜなら、少しでも油断すれば自らの干渉が引き剥がされる、それほどの干渉力を持つものが目の前にいるからだ。

 自身と同格たる二柱。

 世界の根底、無限を司り宇宙のエネルギーの支配者。龍崎神斗。

 終局の魔王、引導を渡すモノ。マグゼット・ラグナロク。


「逃さないぞ。俺の名は龍崎神斗」

「うん、うん。私はマグゼット・ラグナロク!! 容赦しないよ!」


 シルクVS龍崎神斗

 霧裂想刃VSマグゼット・ラグナロク


◇◆◇◆◇


「ラァァァァ!!!」


 自分の肉体が崩壊していくのを感じる。自分の魂が消耗していくのを感じる。自分の精神が破壊されるのを感じる。


 それでも尚、彼は、霊斗は、その肉体を振るう。諦めそうな心に鞭をうって、目の前の巨大すぎる『壁』に立ち向かう。


 一方で、霊斗の壁である晃太もまた、戸惑っていた。自身の本来のマスターとの魔力の繋がりが消え、新たなマスターとの繋がりを感じる。

 その新たなマスターは、どうやってあの超人なんて形容では済まない上位次元者(マスター)から魔力の繋がりを強奪したのか。


 これが、噂に聞く上位次元者たる権能ということか。自分の支配下における絶対的な干渉能力。作者(上位次元者)であり作者(次元支配者)である故の干渉能力。


「だからこそ、全力でやらせてもらおう! せっかくの全力の機会だ!」

「くっ……!」


 心は、とっくに折れていた。

 精神は、とっくに消耗していた。

 脳は、とっくに諦めの境地にいた。


 それでも、霊斗は拳を振るう。

 世界を救うとか、今はどうでもいい。ただ、ひたすらに。その壁を、越えるために。


 その様を見て、彼は考えを改めた。

 目の前の真摯に戦う男に、動揺しながら戦うなど失礼だ。

 全力を以ってして、目の前の男を打ち砕く。


「ゼェ、ゼェ……」


 霊斗はいわば、不浄の体現とも言えるものだ。ありとあらゆるものを兼ね備えた戦士。──だが。霊斗は、それら全てを自分の肉体から消し去る。


 唯一残ったほぼ無限大の貯蓄を持つ霊力──不浄ではない、人間の力を振るう。霊力を血肉の代わりに、内臓の代わりに。


「──」


 そして、構える。ちょっと長生きしすぎただけの『普通の人間』として。

 霊力で一気にブーストをかけ、肉体を無視して己が技術を振るう。


「ハアッ!」

「セイッ!!」


 霊斗の拳と晃太の右腕が交差する。

 晃太の不浄は打ち破れない。故に、晃太に傷を負わせることは叶わない。


 晃太の拳を霊斗が受け流す──が、霊斗は晃太の前蹴りに吹き飛ばされる。

 霊斗は吹き飛ばされてなお、地面に手をついてブレーキをかける。


 本来であれば、晃太に不浄を負わせればその者は死ぬ。──しかし、それが不浄であるなら、だ。

 今の霊斗は、ほとんど死人と同義だ。膨大すぎる霊力の貯蓄で動いているのみの抜け殻と言ってもほとんど変わりはない。


 原初の力は持たない。故に、霊斗は原初ではなく純粋なる力の一片で勝負をかけたのだ。彼は晃太のような無双人の特性は持たないがしかし、同質のモノで戦い、勝利する。それが霊斗の選択であった。


 霊斗が霊力を最大規模で放出する。しかし、その力は晃太に効果はない。対魔力∞によって、かき消される。

 だが、それは霊斗の姿を掻き消すには十分であった。


 霊斗の拳が、晃太に不意打ちをしかける。達人の技術によってそれを返そうとする晃太だが──霊斗の放った霊力砲は、霊斗の姿を、動きを、ぼやかした。


 霊斗の動きを見て、晃太は拳を返す体勢をとる。──しかし。

 晃太は返すつもりで霊斗の動きを霊力の靄によって見きれず、さらに返された。

 霊斗の拳が晃太の肉体を穿ち、捻りあげる霊斗の蹴りが晃太の頭部を打ち砕く。

 無理やりな起動に悲鳴を上げた霊斗の体という器を、霊力が修復をしていく。


「俺の戦友の技だ──天崩『蛇翔葬天牙』」

「ガア──ッ!!」


 晃太が、そのダメージ故に吠える。

 そのダメージが傷にならないということは、ダメージは肉体の内部に──つまりは英霊の弱点である霊核に直接響くということ。


 霊斗の一撃によって、晃太は霊核が崩壊し、その場に崩れ落ちる。

 そして、死んだ晃太は聖杯に魂として蓄積された。


「はぁ、はぁ……あいつらのところに、向かわないと……」


 そう呟いた霊斗は、膝から崩れ落ちた。


◇◆◇◆◇


──一方その頃、磔VSクー・フーリン


 クー・フーリンの特徴は何と言ってもその武器──ゲイ・ボルグだ。

 相手を突き穿つという結果を必ず成功させ、ありとあらゆる回避を無視する。


 そしてクー・フーリンのもう一つの武器は、その不死性にある。

 かの英雄王、ギルガメッシュとも12時間戦い続けられるというその体力と集中力は他を圧倒的に凌駕する。


 クー・フーリンの紅い槍と磔の双剣がぶつかり合う。


「セイッ!」

「オラァッ!」


 両者が猛る。クー・フーリンの隙を突いた蹴りが、磔に襲いかかった。

 磔はその攻撃に超技術が一角、肉鎧を使用してそれを受けきる。ダメージはないが吹き飛ばされた磔に追撃するように、クー・フーリンが槍を持って磔の上を取る。


「もらったァ──!!」


 双剣を交差させてクー・フーリンの槍を受けきる──が、そのまま地面に押し倒される。


「グッ……!!」

「このまま押しつぶしてもいいが──!」


 磔はクー・フーリンに足払いをかけて払いのけると、双剣を逆手に構える。

 そのまま上空にいるクー・フーリンに向かって、スペルを唱えた。


「絆符『夢想杯翔』!!」


 磔の背に霊力の翼が生え、磔が霊力を纏い、音速を超える速さで突撃する。

 それをクー・フーリンは空中で槍を構え迎え撃とうとするが──その槍の攻撃は双剣によって防がれる。


 磔は双剣を捨て去り、その隙を突いてクー・フーリンにかかと落とし──捨てた双剣を空中で再び捉えると、磔は地面に叩き落としたクー・フーリンを睨みつける。


 まだ生きているはずだ。この程度で死ぬような男ではない。

 不意に、土煙の中から大量のゲイボルグが磔に向かって飛んでくる。


「──! 海符『オーシャンオール』!」


 磔は自分の目の前に海水の壁を作り出しゲイボルグを防ごうとする──が、ゲイボルグは壁を貫いて磔に迫る。

 ゲイボルグは海獣の骨で出来た槍であり、その魔力は高い。

 さらに、そのスピードは稲妻にも劣らないという。


 海水の壁如きでは、防ぎきることができるわけがなかったのだ。

 磔の体が大量のゲイボルグによって削れ、抉れていく。


「くっ……!」


 だが、コレでいい。磔は瀕死になれば、負傷を魔力に変換してその戦闘力を上げる超技術──エンドナイトを持っている。エンドナイトが使えるほどの負傷は相当な瀕死だが、故にその戦闘力の上昇量は高い。


 今の磔の戦闘力は本気の霊斗にも引けを取らないだろう。その戦闘力を極限まで高め、扱う。


「はあっ!!」


 磔が猫騙しをする。それはよく響く音であり、地面を割るほどだ。

 超技術が一角──音解。大きな音を一点に集中させ、その一点を破壊する技。磔はそれを、周囲一帯にむけて難なくやってみせたのだ。


「おいおい……マジかよ」


 クー・フーリンはそう言いながら、割れた地面を超えて磔を仕留めようと槍を構え、そして疾る。

 ──だが、それはもう遅かった。


 クー・フーリンの足元から、魔力が放出される。霊斗の夢想霊砲によく似たそれは、クー・フーリンを上空へと吹き飛ばす。


「絆符『時雨』」


 上空に吹き飛ばされたクー・フーリンにむけて、磔は宙を駆ける。

 そして、クー・フーリンを磔の居合い斬りが斬り伏せた。

 一瞬にして二太刀の居合い斬りが、クー・フーリンの霊核を砕く──即ち、クー・フーリンは死するのみ。


「チィッ……楽しかったぜ……」


 クー・フーリンはそう言いながら、重力に従って堕ちていくうちに消滅していった。

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