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闇のカラス・改訂版  作者: 黒田明人
闇烏3
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 ドラゴンの牙ね……テーブルの上にドサリと置く。


 さすがに無理とは思ったけど、とんでもないねと半ば呆れたように言われる。

 どうやらお貴族様のご要望で、冒険者ギルドにも依頼を出しているが、中々手に入らないらしいのだ。

 確かにドラゴンなどこの街からざっと1500キロは離れた山奥に居る。

 そんなのを狩りに行くだけでも大変なのに、森林を越えて山を越えて谷を越えてとか、往復するだけで数年掛かるだろう。

 帰りはドラゴンの肉も食うとしても、食料に武器に護衛にと言っていたら、それこそ軍隊でも派遣しないと無理な案件だ。


 いや、下手な軍隊でも無理があるな。


 記録では隣国が遥々900キロの彼方のドラゴンを狩りに行き、失敗して200人程が何とか帰還したという記録があるらしい。

 総勢5000人の軍隊も途中の魔物との戦闘で数を減らしていき、現地でブレスを吐かれて壊滅状態となり、ほうほうの体で逃げ出したという記録だ。

 それでも皆無じゃない訳は別にある。


 ドラゴンの谷に近い国に、最上級冒険者パーティが居たらしいが、そいつらが狩った記録があるからだ。

 そいつらが解散するまでに数匹のドラゴンを狩り、その部位が各国に輸出されてその存在が知られたという。

 そんな奴らが滅多に出る事もなく、今流通しているドラゴンの部位は、かつて輸出された部位が転売された結果だとか。

 なので年々その価値は上がっていて、件のお貴族様も大枚はたいて希望しているとの事。


 このドラゴンの牙も、黒金貨5枚での募集になっていて、ギルドでも躍起になっているがどうにも入手不可能品の様子とか。

 商会には手数料として黒金貨1枚と言うと、とんでもないと彼は言う。

 白金貨1枚ももらえれば充分過ぎるくらいだから、残りの黒金貨4枚と白金貨99枚は君の物だと。

 今解体している魔物の部位で、払えるならそれで良いよねと。

 数を聞くので出したのは50匹、後300匹はあるよと。

 種類と聞かれてオーガだと言えば、本当に計り知れない力だねと言われた。


 隠して正解だよと。


 収支決算の結果、オーガ1匹の部位が金貨50枚なので、362匹分の料金から解体費用と仲介料合わせて、白金貨2枚分を引いた残りを受け取る。

 後はドラゴンの牙だけど、さすがに手持ちが足りないので、お貴族様との取引の後で支払う事になった。

 他に最近不足している素材の事を聞くと、ワイバーン系の素材が高騰しているとか。

 ああ、この前に近場のワイバーンを殲滅したからなぁ……だから狩れなくなったから高騰したのか。

 マッチポンプみたいだけど、手持ちのワイバーンを放出する事になる。

 解体広場に50匹出してやると、もしかして君のせいだったり? と苦笑い。


 バレテーラ……


 それはともかく、そいつは肉はあんまり美味くないので、市場に流しても良いと告げ、全ての部位を売る事になる。

 交換条件として、塩の樽500と香辛料の袋が400、後は屋台に卸している焼肉のタレが600ツボ。

 それで取引が成立する。


 美味くないと言ってもワイバーンの肉は、そこらの魔物の肉よりは美味い。

 だけどオレが食うのはおもにオークの肉なので、比べるとどうにも肉の質が落ちる。

 強いのはワイバーンだけどな。


 まあ、好みの問題だろう。

 トカゲの親戚の肉よりは、ブタの親戚の肉のほうを好む。

 オレはそうだと言うだけだ。


 ドラゴンはまた別物だけどな。


 それでもハラミは美味いが、外側の肉はやはりトカゲの親戚みたいな味だ。

 そればっかりは好みの問題なので、外側の肉はここに卸している……こっそりと。

 実はあんちゃんの好物なのだ。


 個人でこっそり購入し、こっそり味わうドラゴンの肉。


 オレ以外からは入手出来ない肉なので、これも胃袋を掴んでいると言えるかも知れない。

 今日も5キロのブロックを2つ売るが、冷蔵魔導具に入れておけば、肉の魔力の恩恵もあり、1ヶ月は腐らない肉なのだから。

 肉の代金として金貨10枚を受け取るが、本来はもっと高価だけど、それじゃあんちゃんも困る。

 たくさん稼ぐからそれぐらいタダでやっても良いぐらいなのだが、それはダメと言われての価格なのだ。

 今夜からの食事が楽しみだよと、早速にも冷蔵魔導具の中に収めにいく。

 また肉が無くなった頃に来るよと告げて、あんちゃんと別れる。

 牙の支払いはその時でと告げて。


 また大量にネタを仕入れたな。


 さてと、お次は肥料を買いに行くか、と言ってもあちらさんは肥料と思ってはいないが。

 飼料の店の中であれこれと、肥料になる品を集めていく。

 後は八百屋でアレを買って混ぜてやれば……これで追肥の問題もクリアだな。

 最後にでかいリュックを物陰で出して、背負って行くのは魔術師ギルド。


 あそこは冒険者ギルドとは違い、特に登録の必要は無い。

 いわば、魔術師の交流の場みたいなところだからだ。

 中に入ると注目を浴びる……魔術師の風体以外の者が来る時は、大抵魔石の売りか査定だからだ。

 受付で魔石の査定を申し込む。


 何個ですかと言う問いに、1個だと告げるとどよめきが起こる。

 なんせ背中のリュックの中にあるのは、直径が80センチはあろうかという、巨大なドラゴンの魔石だからだ。

 ゴトリと出すと、周囲の奴らは皆、揃ってゴクリとツバを飲み込む。

 すぐさまギルドマスターに連絡が入り、2階から慌てて降りて来る。


 これは……そう言ったきり絶句したギルマス。


 そいつに対し、火の属性竜の魔石だと告げる。

 ファイヤードラゴン……それはドラゴンの中でも強敵に分類されるドラゴンで、過去の最高級パーティでもなし得なかったという幻の竜。

 その魔石などこの世界に存在してはいない。

 あいつらが狩ったのは土属性の、ロックドラゴンだ。

 あれは火も吹かないし飛びもしない。


 隣国の軍隊を壊滅させたドラゴンの魔石、と言ったほうが早いかも知れない。

 現在、ロックドラゴンの魔石でも、黒金貨の世界だ。

 それがファイヤードラゴンとなると、国宝にもなり得る品の可能性が高い。

 ギルマスはこれは国に知らせても良いかと聞いてくる。

 あくまでも査定なので、金額が知りたいだけだと返す。


 ううーん……そううなった後、黒金貨500枚以上という査定結果を出す。

 実際、国に供出すればそれくらいはくれるだろうと言うのがその理由らしい。

 日本円にして5000億か、大した価格だな。

 倉庫に後26個あるとか言わないほうが良いな。

 あいつは試行錯誤での風の魔法で、数を撃って何とか倒した相手。

 あいつらは習熟訓練に最適だったんだよな。

 だからどんな魔物の首も、容易く切れる魔法に仕上がったのだ。


 金貨を1枚置いてリュックの中に入れていると、査定料金は要らないから国に連絡だけさせてくれと言う。

 連絡すれば供出しろと言われるだけであり、断れば拘束して奪われかねないとか、そんな事になって堪るかよ。

 そのままリュックに入れて担いでギルドを出るが、中は大騒ぎになっている様子。

 物陰で倉庫に仕舞って元の変装に戻すが、魔術ギルド用の変装はもう、当分使えないな。


 さて次は、競売用の変装で、出すのはさっきの……ゴトリと置けばさすがに絶句するようで。

 開始を黒金貨500枚にしてくれと言うと、それはさすがに買い手が居ないだろうと言われる。

 なら止めるとリュックに仕舞おうとすると、せめて白金貨10枚からにならないかと言われる。


 けん制して安価落札でも狙うつもりか? たまにあるんだよな。客と示し合わせてのけん制が。

 お貴族様が権力にものを言わせて、他の客に圧力を掛けて、低額での落札を狙うって悪巧みが存在する。

 この魔石ならそれをやるだけの魅力があるだろうし、落札したら国にそれこそ黒金貨数百枚で売り付けられる。

 そんな濡れ手に粟とか、やらない奴のほうが少ないだろう。

 ここのハウスもそういうお貴族様との繋がりがあるようだ、となるとさっさと帰るが吉だな。


 もっとも、こいつは餌だよ、クククッ。


 裏口から出ると気配の変動が派手になるのでこれ幸いと、走れば後ろからぞろぞろと付いて来る。

 角を曲がって背負っているリュックを倉庫に入れて、ダミーのリュックを出して背負う。

 最近、人を殺ってないからどうにも我慢が効かないと言うか、魔物じゃ物足りないと言おうか。

 門から入るのには金が要るが、出るのには要らないというのがこの街の仕組みなんだけど、まともに門から入った事は少ないな。


 街から出て更に走るが、後ろの気配はざっと40ぐらいか。


 カーブしている街道を無視して、そのまま茂みの中に走り込む。

 しばらく走ると池があるはずで、その向こう岸辺りで遊ぶとするか。

 池の横を走り抜け、向こう側で止まって振り返れば、ぞろぞろと来るのはハウスお抱えの始末人達。

 冷やかし落札の奴や、熱くなりすぎて資金超過になった奴を処理する奴ら。

 もしステータスとか見れるなら、どいつもこいつも殺しの文字が出ているはず。

 まあオレにも出ているんだろうけど。


 リュックを置いて変装を解けば、見た目子供な風体に途端に気配が緩む三流の奴ら。

 楽しみたいから素に戻ったんだよ。

 全員逃がさないからな、クククッ。


 まずは足止めといくか。


 風魔法のウィンドサークルで、オレとあいつらの周囲に風の膜を構築し、逃げられない状況にすると共に、音の漏れない状態にする。

 そして上空にはウィンドカッターを複数起動して準備完了となるが、さすがに10を超えると制御が難しくなる代物だが、今回は数枚なので

 余裕のクチだ。


 さて、まずは足をもらおうか。


 数枚の風の刃はまるでオレの逸る心を代弁するかのように動き回り、あいつらの両足を切断していく。

 阿鼻叫喚だが、その声は街道には聞こえないから無駄なんだけど、それでも鳴いている雑魚達。。

 池に赤い物が流れ込んでいく。


 このまま放置しても良いんだけど、やっぱり可哀想だよな。


 とりあえず血が止まるように焼いてやったのに、ますます賑やかになる雑魚達。

 後は淡々と剣で直接その命を奪っていくが、じわじわと沸いてくるものがある。


 急がないとな。


 とりあえず倉庫に入れて高速飛行で穴倉に急ぐ。

 軽く抑えているが、かなり昇ってきた。

 それでも何とか穴倉に辿り着き、寝床に潜って解放する。

 思い返すともう、ゾクゾクが止まらない。


 こみ上げる喜びと心を揺さぶる快感に、幸せな気分になってそのまま眠る。

 目覚めた時には、村や街の連中との対話での、ストレスは雲散霧消していた。

 やっぱりまともじゃないな、オレは。


 何度も生きてみたけど、こればっかりは止まらんか。


 捨てられてから5年が過ぎたけど、そろそろ100人が近い。

 おもに盗賊連中だったけど、そのたびにこうして堪能しているんだからな。

 別に自己嫌悪にはならんが、どうしてこんな性癖になったのかは考えるな。

 最初からの欠陥か、それとも育ちか、はたまた両方か。

 最初はそこまでの事も無かったのに、経験が積み重なるにつれて激しくなって来たような気がするな。


 なんとかに刃物だな、クククッ。

 

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