27 ending
今年は指定楽曲をやるって事で、関連の会社の人も期待しているらしい。
出るのはやっぱり男装なのは、オレに対する虫除けの意味。
あいつ以外の男に抱かれる気は無いんでな、そういう虫は予防が大事と。
女が来ても問題無い。
抱こうにも肝心な物が無いんだから、変にハニトラしようとしても、百合かと聞くだけだ。
自ら恥を掻きたいなら、オレに強姦されたと言うがいい、クククッ。
順番が来るまで他の出演者の演奏をのんびりと聞く。
どうせ義理なんだし、好きなピアノをただ弾くだけの事。
指定楽曲なのは、クライマックスが激しいのが好きなだけ。
お、そろそろか……楽しみだねぇ、クククッ。
◇
静かに始まり、段々と高まっていく緊張感。
来るぞ、来るぞ、もうすぐ、来るぞ。
突然に始まる激しいクライマックス。
ああ、この感じ……思い出すな。
もっと殺し……いや、弾きたい……もっと……もっとだ。
さあ、何処に逃げても殺して……さあもっと……もっと……もっと……はぁぁ……楽しかった。
うおおおお……なんだ、なんだ。
他の出演者とか、そんなに激しい拍手してないだろ。
びっくりするだろ、いきなりよ。
関連の会社の人、義理なのに社員に頼んでんだな。
拍手も仕事か、ご苦労様だな。
まあいい、終わったから帰ろうか。
そう思ったのに、待てと言われても困るんだけどな。
何か知らんが、高得点が出たらしい。
いかんよ、不正は。
関連会社の人、ちゃんと厳正に審査しないと。
義理で出た組織の人間に高得点とか、他の出演者が怒るぞ。
そう思って関連会社の社員さんと思しき人に、こっちは義理なんだから他を優先するようにって、いちいち言わないといけないのかよ。
でも、言ったらホッとしていたから、きっと厳正なる審査に戻るな。
誰だよ、関連会社に圧力かけるのは……義理だろ、義理。
ふうっ、楽しかったな。
また来年も出て良いのかな。
のんびり見てると優勝は、どっかの貴族さんの娘さんとか。
準優勝はどっかの富豪の息子さんとか。
その次はどっかの大手の……うえっ?
義理だと言ったのに、どうして3位なんてのにするんだよ。
もっとこう、8位とか10位とかさぁ。
やれやれ、来年はきちんと義理の分は選考外にするんだぞ。
オレはただ、弾きたいから弾いただけで、出たのは義理なんだから。
賞状くれたけど、後できちんと言ってやらないと。
あんまり組織の出演者を上にあげたら、当局から目を付けられるだろ。
そこに不正が云々って、少しは考えてくれよな。
◇
コンクールが終わり、外に出たら関連の社員さんに呼ばれて、何かと思えば平謝り。
おいおい、何で謝るんだよ。
あの2人を外す訳にはいかなかった?
本当は優勝?
そういうおべっかは要らないから、次からはちゃんと選考外か、もっと下の順位にするんだぞ。
よし、これぐらい言っておけば良いだろう。
やれやれ、義理で指定だからと、ちょっと不正をしたんだな。
来年は本当にきちんとしてくれよな、頼むから。
(ボス、彼、自己評価が低すぎないですか)
(ははは、何か言われたのか)
(ええ、あんなに素晴らしい演奏なのに、不正をして3位なんかにしたとか)
(それは逆の意味ではなくか)
(もっと下じゃないのかって言われまして)
(まあいい、あいつはそういう人間だ)
(珍しいですね)
(東洋の人間にはそういう者が多いそうだが、あいつはまた特別だな)
(え、東洋人なんですか)
(おっと、そいつは極秘だ)
(判りました)
(来年も良いか)
(勿論です)
義理で落ちてたコンクールに3位とかで、酒場に繰り出してって、ただオレをダシにしてるだけだろ。
まあいい、そう言う事なら行くのも良いさ。
行くと何故かピアノが置いてある。
え? リクエストを弾け? まあ良いよ。
でも、知らない曲は無理だからな。
そう思ったけど、有名どころのリクエストが相次ぎ、オレのピアノを聴きながら、酒盛りは夜遅くまで続いたのでした。
ジュニア、飲みすぎで寝ちまったか。
やれやれ、背負って帰ってやるからな。
ううむ、後ろに落としそうだな。
仕方が無いから姫抱きだ。
子守唄の鼻歌でストリートを歩く。
歌は得意じゃないが、子守唄はいくつか知っている。
潜入で使うんだよな、こういうのを意外と。
現地の子供に馴染むには、現地の童謡を知るに限る。
子供に馴染めば大人にも馴染むが、大人に馴染んでも子供には馴染まない。
そして真に馴染む為には、両方に馴染む必要があるってか。
あの教官、もう教官やっているのかねぇ。
懐かしいねぇ。
◇
もうじきアジトだからな。
最近、仕事が忙しかったから、酔いが派手に回ったんだろう。
まあもうじき跡を継ぐんだし、しっかり仕事をやっているところを見せないとな。
その前に、ちゃんと恋人を作るんだぞ。
こんな何処の馬の骨かも判らんような、身元のはっきりしない女とか止めて、きちんした家の娘さんにしろよ。
お前が結婚したいと言えば、少々能力が低かろうが関係無いからよ。
鍛えれば良いだけだ、それで良い夫婦になるさ、きっと。
だからこんな女は……パーン……やれやれ、無粋だねぇ。
折角……ここまで……後3年……で……もうじき……成人……だった……のに……
せめて……ジュニア……だけ……でも……
おい……誰か……いない……のか……
ドサン……
はぁぁぁ……おまけの……人生……も……これまで……か……
(誰がやった)
(へい、次期候補ナンバー2で)
(殺せ)
(へいっ)
(ジュニアを抱いているとは思わず、あいつを抱いていると思って、抱いているほうを狙ったのか。それであいつが身代わりになったんだな。これからと言うのに、ジュニアの代わりに守って逝ったか。本当に得がたい……なんて事だ……潰してやる、殲滅だ)




