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仲間へのお礼② 【挿絵】

 サリアの宿に向かって歩いていた俺は宿屋に入るまでもなく目的の人物を見つけた。


 「おや?どうしたんだ、こんなところで」


 俺に気付いたサリアが声を掛ける。


 「実はサリアにちょっと用があってさ、中で話してもいいか?」


 「あぁ、もちろん構わない」


 サリアが了承してくれたので、俺はサリアに付いて宿屋に入り、サリアの部屋へ歩く。


 「少し散らかっているが気にしないでくれ」


 「お邪魔しまーす」


 そう言って俺は部屋の中に入る。散らかっていると言っているが剣がいくつか床に無造作に置かれているくらいで大して気にはならない。


 「ん、これって前使ってた武器か?」


 俺は見覚えのある剣を見つけ、サリアに聞いてみる。


 「あぁ、そうだ。古い物は売って新しい物を買う方が賢いのだろうが、なぜだか手放せなくてな」


 「へえ、大事にしてるんだな」


 「それで、今日はどうしたんだ?」


 サリアは椅子に腰掛け、俺に聞いてくる。俺もテーブルを挟んで向かいに座り、


 「まぁ、大した用じゃないんだけどさ、黒狼人の件で何かお礼がしたくて」


 「お礼なんて必要ない…と言われてても困るのだろう?」


 「そういうこと。何かして欲しいこと、欲しい物があれば言ってくれ」


 「ふむ、そうだな…」


 サリアはしばらく考え、椅子から腰を上げ、椅子ごと反対を向くと着ていた服をずらし、肩を出す。


挿絵(By みてみん)


 「揉んでくれるか?ワタルが前にメイドにマッサージをしてもらったと聞いて少し気になっていたんだ」


 「お安いご用だ、ただ初めてだからうまくはないかもだけど」


 俺は軽く手を揺すり、サリアの肩に手をかける。サリアの肌は俺の手より少し温かい。そして俺は親指に力を入れる。


 「どうだ?こんな感じで大丈夫か?」


 「んっ…そうだな、いい…と思う」


 「それなら良かった。それにしても結構凝ってるんじゃないか?」


 俺はサリアの肩を揉みながら言う。


 「自分ではよく分からないが、そうかもしれないな」


 「そうだよな、あんなデカい剣を振り回してるんだもんな。前持たせてもらったけどすげー重いもんな」


 「慣れればそうでもないさ」


 サリアは目を閉じ、首を少し前に傾けたまま答える。リラックスしてきたようだ。


 「そういえばさ、もしかして俺が修行してる間に命中上げるような特訓でもしてたのか?」


 「ん?していないが、どうしてだ?」


 「ほら、黒狼人と戦った時に二発連続で攻撃当たってたからさ」


 俺は黒狼人と戦った時のサリアを思い出していた。脇腹に剣を薙ぎ払った時もトドメの時も綺麗に命中していたように思う。


 「あぁ、それは偶然だ。たまたま調子が良かったのかもしれないな。私がやっていたのは基礎鍛錬だけだ」


 「マグレだったのかよ、ちょっと見直して損したぜ」


 「ひどい言い草だな」


 俺が冗談で言うと、サリアも笑いながら返してくれた。


 「この背に何度も助けてもらってるんだな」


 俺は手を止め、サリアの肩を撫でる。


 「あ、あまりまじまじと見られるとなんだか恥ずかしいな…」


 「わ、悪い」


 サリアにそう言われ、俺は再びマッサージを続ける。別にさっきまで意識していなかったのに急に女の子の肌に触れていることを意識してしまう。手に汗が滲みそうだ。心なしかサリアの体温も上がった気がする。


 「このくらいでいいか?」


 「あ、あぁ、十分だ心地良かったよ、ありがとう」


 俺はマッサージを終え、サリアが服を直す。


 「こんなことでお礼ってのは虫がいいのは分かってるんだけどさ、また迷惑をかけるかもしれないけど、何かあった時は力を貸してくれるか?」


 「当然だ、私達は仲間じゃないか。それに今度は私が迷惑をかけるかもしれないぞ?」


 「その時は俺にできることなら何でも協力させてもらうよ」


 笑いながら俺は言った。利害関係とかじゃなく素直に仲間の役に立ちたいと思う。サリアもきっとそう思ってくれているのだろう。





 「ただいまー」


 俺はサリアの宿を出たあと、屋敷への帰路につき、自分の部屋に戻っていた。


 「満足そうな顔してますね、上手くいったんですか?」


 「あぁ、二人とも喜んでもらえたみたいでよかったよ」


 「そうですか、良かったですね」


 レアは興味が無さそうにそう言って本をめくる。けど俺にはまだ用事がある。


 「コレ、なんだと思う?」


 「…小袋ですか?」


 レアがこちらに視線を向け、見当が付かないといった声で答える。


 俺は口角を少し上げ、微笑むと


 「お前にだよ、ほら、手を出してみ?」


 「はぁ…」


 手を出したレアに俺は小袋を渡す。レアがリボンを解き、封を開け、中に入っている物を取り出す。


 「チョコレート?ですか?」


 レアが取り出したそれを摘んで掲げながら俺に尋ねる。


 「そうだよ、帰りに店で売ってるの見かけたからさ。レアは物より食いもんの方が嬉しいだろうと思ってな」


 「それはそうですが…。私はこんなもので懐柔されたりしませんよ」


 そう言ってレアは手に持っていたチョコを口に運ぶ。


 「…甘い」


 「美味しいか?」


 「まぁ、悪くはないです。一応、ありがとうと言っておきます」


 「まったく、素直じゃないなぁ」


 苦笑しながらそう言う俺をよそに、レアは次々とチョコを食べている。やっぱり美味いんじゃねーかよ。


 「おいおい、あんま食うと飯食えなくなるぞ?」


 「問題ありません、甘いモノは別腹ですから」


 そう言ってレアは小袋に入っていたチョコを食べきる。


 「おかわりはないんですか?」


 「ねーよ、この世界では甘いモノが結構高いんだからな」


 「やれやれ、甲斐性のない男の人は困りますね」


 「コイツ…」


 俺は悪態をついたが、レアが喜んでくれたようで良かった。正直、俺にできることでみんなが喜んでくれるか不安だったが、終わってみれば上手くいって安心した。

 …とはいえ、迷惑をかけないようにするのが第一だけどな。

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