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幸運の力 【挿絵】

 異世界で右も左も分からないとは言っても飯屋の匂いくらいはわかる。それを頼りに道沿いの店に入ってみる。


 メニューの文字は俺には読めないが、レアには読めるらしい。だが、読んでもらってもよくわからなかったので、適当に注文してみた。


 よくわからないが魚?と肉?のようだ。周りに同じものを食べている人がいるところを見ると一般的なもののようだ。適当に頼んだ割にはいいものが出てきてツイてる。…ツイてる?


 「そういや、レア。俺の運のステータスなんだけどさ」


 「なんですか?」


 肉を頬張りながら聞き返すこいつは本当に女神か?


 「ちゃんと100になってるのか?」


 「ええなっていますよ。あなたに嘘がバレた時に気づかれないように速攻で100に直しましたから」

 「私は、嘘をつく時はバレたあとのことも考えて嘘をつきますから」


 コイツ、ほんとにクズだな…


 「具体的には何が起こるんだ?」


 「知りません」


 「え?」


 「知りませんよ、ステータスを振ったあとの人間のことなんて。私の仕事は振り分けと死んだあとの処理だけですから」


 「Oh…、女神様ってもっと温かい存在かと思ってたぜ…」


 「そういう女神もいますけどね、私は余分な仕事はしたくありません。他の女神に押し付けます。」


 「よくそれで上の立場になれたな…」


 「バレないようにやりますから」


 ドヤ顔で言うレア

 ドヤ顔で言うことじゃないけどな、それ


 食事を食べ終わり、会計しようと思ったその時。俺たちは重大なことに気がつく。


 「そういや金は?」

 「私はないですよ」


 俺は、慌ててポケットの中を探る。そこにはスマートフォンと家のカギと…350円。


 ヤバイヤバイヤバイ

 これはヤバイ、駅で財布を落としたからポケットに残ってた金しかないんだった…!

 異世界転生後即、逮捕とかシャレにならんでしょ…


 どうする、どうする…

 とりあえず土下座行っとくか…?

 ていうかなんでこの女神他人事みたいな顔してんだ、お前のほうが食ってただろ…!


 しょうがない…覚悟を決めて会計所にいる店員に声をかけ…


 「おめでとうございます!」


 「ッ!?」


 「あなたがたは当店の10000人目のお客様です。こちらの金券をどうぞ、そして1ヶ月分のお食事券を贈呈致します!」


 呆気にとられる俺、だが少しずつ事態を把握し、思わず叫ぶ。


 「すげえぇぇぇー!」


 他のお客さんがこっちを見る、店員さんが若干引いてても関係なく叫ぶ。


 「これが幸運MAXの力か…!今までの人生なら、間違ってお金を多く払わされることはあっても逆に得することなんて一度もなかったからな…!すげえ…マジですげえよ、なあレア!」


挿絵(By みてみん)


 興奮してレアに話しかけた俺をレアは冷たい目をして見ていた。まるで「この変人と私は関係ないです」と言わんばかりの目だ。まぁそりゃそうか、外でテンション上がって叫ぶ18歳の男子っていないよな。そう考えると恥ずかしくなってきた。


 「あっ、すみません」


 遅きに失した感がある謝罪をして店を出る。


 「じゃあ次は情報収集をしましょうか」


 さっきの出来事がなかったかのように笑顔をこちらに向けて言うレアの優しさが余計に俺を傷つけた。

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