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モチモチモチリン 【挿絵】

 買い物も終わり、武具屋を出る俺達。サリアもメイルも結局、何も買わなかったようだ。


 「へへっ、早くこの短剣の切れ味を確かめてみたいぜ…」


 俺は腰に携えた黒い短剣を触りながらつぶやく


 「分かるぞ、新しい武器はすぐに試してみたくなるな!」


 なんかサリアに同意されると俺までATK脳みたいだから少し嫌だが、確かにワクワクはする。


 「ではギルドで新しいクエストでも見てみましょうよ」


 「おう、そうだな」


 メイルの魔法の腕も見てみたいしちょうどいい。俺達は再びギルドへ戻ることにした。


――ギルド――


 「んーっと、どれにすっかなぁ。まだ慣れないパーティだし簡単なやつを…」


 膨大なクエストの中から④と書かれたものを探す。それでもたくさんある。これだけあると同じブロンズでも難易度にかなり差があるだろう。


 「これなんてどうです?」


 レアが一枚のクエスト用紙を俺に差し出す。正直、今までレアの選んだクエストは碌な物ではなかったから若干不安だが、こればっかりはレアが悪いわけではないので言わないでおく。


 「どれどれ…」



【ペットの捜索】

 家で飼っていたペットの「モチリン」が森へ散歩に行った際にはぐれてしまい、その捜索をお願いします。特徴的な色、そして、首輪を付けているため、野生のモチリンとの違いはすぐにわかります。

 また、見つからなかった場合であっても、捜索して頂いた時間だけ報酬をお支払いします。

 ※捜索中の怪我等に関して当方は責任を持ちません。



 ほうほう、これはなかなかいいんじゃないか?特に、見つからなくても報酬がもらえるってのが良い。


 「どうです?見つからなくても報酬がもらえるというのが最高ですよね」


 うわぁ…この女神と意見が被っちまったぁ…。まるで俺が駄目な奴みたいじゃないか。


 「まぁ、悪くないな。でも受けるからには見つけるつもりで探すぞ。二人もそれでいいか?」


 「ああ、構わない」


 「大丈夫ですよ」


 何も文句を言わずに付いて来てくれるサリアとメイル。いいパーティメンバーに巡り会えて良かった。俺は口には出さずに二人に感謝をする。


 「そうですか、頑張ってください」


 そして、平然とサボり宣言をするレア。このクズ女神、一度教育が必要なんじゃないか?



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 「ふぅ、この森か」


 俺は軽く汗を拭いながらつぶやく。やはり移動で疲労しているのは俺だけだ。メイルは魔法使いだから体力がないかと思っていたがそんなことはなかった。

 そして、森全体を見てみるが視界に収まらない。思っていたより大きな森だ。ここを探すとなると結構大変そうだ。


 「じゃあとりあえず適当に探すか。はぐれないようにしろよー」


 「ああ」

 「もちろんですよ」

 「はーい」


 飼い主の話によるとペットがいなくなったのは三日前、見た目は黄色に黒の斑点。そして鉄製の首輪を付けているらしい。だがそれ以前に俺は「モチリン」自体がわからない。レアに聞けば早いがせっかくのパーティだ、サリアとメイルに聞いてみる。


 「えっと…なんというかモチッとした感じですよ。結構クセになるんですよ。ワタルも触ってみてくださいよ」

 「見た目は豚がさらに丸くなったような生き物だ。見ればすぐにわかると思うぞ」


 ほう、結構好印象だな、ペットとして飼われているだけのことはある。そういや、野生のモチリンもいるって言ってたな。ぜひ見てみたい。そんなことを考えていると


――ガサッ


 草むらから何やら丸い物が出てきた。それが生き物であると認識した瞬間、俺はこの生き物がモチリンであることを理解した。たしかにまるまるとしてて、かわいいっちゃかわいいな。


 「ほらほらおいで~」


 前回のクエストのこともあり、こちらからは近づかずに手招きしてみる。だがこちらに来る様子はない。


 「なにやら怯えているようですよ」


 メイルにそう言われ、よく見るとたしかに震えて…


――プギィィィィ!


 森中になにかの鳴き声が響き渡った。豚っぽい鳴き声だしモチリンのか?しかし、明らかに緊急時の鳴き声だ。俺達は急いで声のした方へ向かう。


 「この辺りだと思うんだけどな…」


 「待て」


 草むらをかき分けて進んでいた俺をサリアが止める。


 「ん?何か…」


 「しっ!あれを見ろ」


 体を屈めて指差すサリア、その先には


 「なんだあいつら…?」


 開けた場所には見たことのある生き物と見たことのない生き物がいた。片方はモチリンだ。そしてあの特徴的な斑点は依頼されていたペットで間違いない。

 だが、もう一方の生き物はなんだ?緑色の小人?に見えるが… 1、2、3…5匹か。


 「あれはゴブリン族のようですね」


 レアが珍しく真面目な顔をして謎の生き物について解説をしてくれる。


 「知能はあまりなく、簡単な言葉しか話せない。小さな見た目の割に力は強いです。普段は森や洞窟に生息しており、人と共存して生きる良心的なゴブリンも居れば、畑を荒らしたり荷物を奪ったりする悪いゴブリンもいるようです。」


 「なるほどな…で、アイツらはどう見ても後者だろうな」


 そんな会話をしているとゴブリン達がモチリンを攻撃し始めた。命を奪おうというよりは痛めつけるのを楽しんでいる様子だ。


 「アイツら…!」


 「ちょっと待って下さいよ」


 俺が止めに入ろうとするのをメイルに止められる。


 「なんで止めるんだよ!?」


 「ここは私に任せて下さいよ、こちらに気づいていないうちに遠距離魔法で攻撃しますよ。あの程度のモンスター、私の火属性魔法なら、20%の威力でも全員まとめて倒せますよ」


 なるほどな、流石は魔法使い、賢いぜ。


 「ですが悪いモンスター相手に手加減はしませんよ、行きますよ!」


 そう言ってメイルはブツブツ何かを唱え始める。詠唱というやつだろうか?そして杖を振りかざし…


 「フレイムスフィア!」


――ボッ


 あれ?どこかで聞いたことのあるような音がした。そうだ、ガスコンロをつけた時の音だ。…魔法ってこんなにしょぼい音なのか?そしてゴブリンたちを見ると


 「アチアチッ」


 体に着いた火を払っている。おかしいな。メイルはさっき手加減しないって言ってた気が…


 「アイツラダ!」


 ゴブリン達が俺達に気づく、こちらから攻撃したのだから当たり前だ。


 「お、おい!メイル!どうなってんだよ!」


 あわてて短剣を抜きながらメイルに尋ねる。


 「うーむ、どうやら悪い目が出てしまったみたいですよ」


 あっ、忘れてたけどこいつ。最低と最高がアホみたいに離れてるんだった。いや~、参った参った。見た感じ1~10の、1の火力だった感じか…?


 「ってお前、『任せて下さいよ』って言っただろォォォ!?」


 俺は思わず叫ぶ。先制攻撃どころかこれじゃ相手を怒らせただけじゃねーか!


 「キエッ!」


 ゴブリンの一人が石を木に括りつけたようなものを振りかぶる。


 「くそっ!」


 俺は短剣を構えてみるが構え方が合っているのかどうかすら分からない。


――ガィン


 俺の前に立ちはだかったサリアがゴブリンの石斧を受け止め弾き返す。そうか、サリアは攻撃は当たらないけどガードならできるんだな。


 「大丈夫か?」


 「おう!助かったぜ」


 「以前戦ったピョコン達より数は少ないが、ゴブリン達は連携をしてくる。私一人で守るのは無理があるぞ」


 サリアにそう告げられゴブリン達を見ると、5人で一定間隔を開けジリジリとこちらに進んでくる。明らかに統率された動きだ。どうにかして数を減らしたいが、どこかに隙はないか…


 そう考えているとゴブリンの一人がなにやら振りかぶるような動作をしている、なにをしているんだ?と俺は疑問に思っていたが答えはすぐにわかった。


――ブンッ!


 ゴブリンは石をこちらに投げつけてきた。俺は予想外の飛び道具に全く反応できず…


――ガンッ


 石は俺の顔面まで迫っていたがサリアが俺の前に剣を突き出し守ってくれたようだ。だが俺を守るためにこちらを向いたサリアには、飛びかかるゴブリン達は見えておらず…


 「サリ…」


 俺は声をかけようとしたが、喉から声が出る前に、間に合わないであろうことを悟った…



 「フレイムスフィア!!」


――ゴオォッ


 俺の視界が突然、赤く染まる。そして、ついさっきまでゴブリンが居た場所には炎の塊が現れていた。


 「ギヤァァァ」


 炎が激しすぎてよくわからないが恐らくゴブリン達の悲鳴か?炎の塊が5つあるところを見るとたぶんそうだろう。そして俺は、あまりの熱量に目を細めながら後ろを振り向く。


挿絵(By みてみん)


 「メイル…お前がやったのか?」


 恐らく確認する必要はないが念のためだ。


 「そうですよ!一発目はイマイチでしたが…これが私の火属性魔法の威力ですよ!」


 運ゲーしといて自慢気に話すメイルに俺は思わず笑ってしまった。サリアも何事も無くて良かった。おや?そういや依頼されてたモチリンは?まさか一緒に焼豚とかになってないだろうな。そう考えながら辺りを見回す。


 「あれ?もう終わったんですか?」


 レアがモチリンを抱えながら草むらから出てきた。いないと思ったらこいつは…


 「お前…人が危ない目に合ってるって時に…」


 「な、なんで怒ってるんですか!私はモチリンちゃんが巻き込まれないように守ってたんですからね!」


 そう言いながらレアは、モチリンを撫でる。モチリンも嬉しそうにしている。あまりに和やかな構図に怒るのも馬鹿馬鹿しくなってきた。


 「まったく…ちょっと俺にも触らせろよ」


 危ない場面もあったが無事にクエストを達成し俺達は来た道を引き返す。帰り道、抱きかかえさせてもらったモチリンはモチモチしていた。たしかにこれはクセになりそうだ。

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