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武具 【挿絵】

 ギルドでパーティを組み、4人以上向けのクエストも受けられるようになった。だが、その前にやることがあり、こうして街道を歩いている。


 「武具屋ってどこらへんにあったっけ?」


 全くこの辺りの地理がわからない俺は攻略…レアに聞いてみた。


 「ちょうどこの街道を真っ直ぐ行けばありますね、品揃えも中々のものです。」


 ほんとこのナビ女神、便利だな。そんなことを思いながら俺は考える。そう、使用する武器についてだ。基本的にこの世界では一つの系統の武器を極めたほうが良いらしい。スキルとの兼ね合いもある。だからここは慎重に選ばなければ…


 「二人は今の武器はどうやって選んだんだ?」


 一緒に付いて来てくれると言ってくれた、サリアとメイルに尋ねてみる。


 「私は元々、剣士の家系の出だ、だから迷わず剣を選んだよ。そして私に剣はとても馴染む。」


 といいながら腰に下げた剣を軽く撫でる。よほど剣が好きらしい。


 「私も住んでいたところに魔法使いが多かったのですよ。周りの人が魔法を使っているのを見て、私も魔法を扱う職になりたいと思っていましたよ。」


 そう言ってメイルも背中に提げた杖を触る。


 「みんなそれぞれ思いがあってその職に付いてるんだな」


 いい話なんだが、今の二人のステータスを考えると素直に納得できないのが悲しい。


 だが、ずっと決めていた職があるのは正直羨ましい、選べてしまうから迷うんだ。


 そんなことを考えながら歩いていると、武具屋の前に着いた。どうやら武器と防具で店が分かれているらしい。どっちからにするかな、とりあえず絶対に必要な防具から…


 だが、サリアとメイルは迷わず武器屋の方へ行こうとする。


 「お、おい?二人は防具は見ないのか?」


 至極当たり前な質問をする俺に対して


 「え?防具は火力に関係がないぞ?」


 「そうですよ、防具によって火力が上がることはないのですよ」


 おや?おかしいな…ぱっと見た感じこの二人も防具を気にしなくて良いような装備ではないと思うんだが。まさか…


 「お前らさ、もし金が100あるとして、武器と防具にはどういう割合で振り分ける?」


 恐る恐る聞いてみる。普通なら5:5、どちらかに偏っても6:4とか7:3ぐらいだろう


 「「10割を武器につぎ込む」」


 声を揃えて言った、こいつら実は仲いいんじゃないか?


 あぁ、なるほどね。今分かった、こいつらの頭には…ロマンが詰まってるんだ


 「お前らアホかぁぁぁ!」


 思わず店の前で叫ぶ、往来の皆さんうるさくしてごめんなさい。


 「武器に全額投資ってなんだよ!縛りプレイか?人生を縛りプレイでもしてんのか!?」


 「縛りプレイとは何かわからないが…防具に金をかけずとも、攻撃される前に倒してしまえば良い。それに私は体を鍛えている、防具に頼る必要などない」


 「私も同意見ですよ。それに私は遠距離職ですよ、こちらに近づく前に魔法で消し飛ばしてしまえばいいのですよ。」


 ダメだ…こいつらの中で確固たる意志があるみたいだ…。これからのクエストで防具の必要性を感じてもらえればいいんだが…


 俺は諦めたように二人に笑顔を向け、


 「余計なことを言って、すまなかったな。さあ、二人は武器屋へ行ってくれ。俺達は防具から見てくるよ」


 あぁ、これからの冒険が心配だ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――防具屋


 二人と別れたあと、俺は防具屋の商品を見ていく。だが、見た目では性能が分かりにくいな。


 「攻…レア、この辺にある防具の性能を教えてくれ。」


 「そうですね…、どうやら材質ではなく、施されている加護のようなもので防御力が決まるようですね。」


 なるほどな、ゲームに登場する、ヒラヒラしてるのに防御力が高い防具みたいなもんか。でも、その方が動きやすくていいな、甲冑とか着てたら絶対に動けないしな。


 「予算はこんなもんだ」


 今までの報酬、金券を換金した金をレアに見せる。


 「うーん、それなら…これとかどうですか?」


 「すげー、普通だな」


 人の防具だと思って、安物選んでるんじゃないだろうな。と思いながらもシンプルな服は嫌いではないのでそれを受け取り、購入することにした。俺は、ゆっくり服を選びたいというレアの要望を聞き、金をレアに預け、防具屋の外に出た。サリアとメイルはまだみたいだ。


 女の子が買い物をしているのを外で待つなんてデートみたいだ、なんてことを思いながらぼーっと待ちぼうけていると


 「お待たせしました」


 レアの声に俺は振り向き…


 「…ずいぶん小綺麗な服を選んだんだな」


挿絵(By みてみん)


 レアの着ている服を上から下まで眺めてみる。銀色の髪に白色の服は悔しいが似合う。その上に半透明の服を羽織っている姿は女神に見えなくもない。俺は久しぶりに、レアが女神であることを思い出した。…が


 「お前それいくらしたんだよ」


 明らかに予算以上の服だ、俺との差が激しすぎるのが一見しただけでわかる。


 「それはその~、ほら、私は女神ですから、人間であるあなたと同レベルの服を着るというわけにはいきませんから…」


 そう言いながらレアは残りの金を俺に渡してきた。銅貨3枚だ。貨幣の価値が分からないが相当な額だったことが推察される。


 「なにお前だけいい物買ってんだよぉ!?このあと武器も買わないといけないんだぞ!?この自己中女神が!」


 「しょうがないじゃないですか!他に良さそうな服がなかったんですから!」


 逆ギレかよ。

 やべぇ…、この金で武器が買えるか…?


 妻に通帳を預けておいて勝手に使われる旦那の気分ってこんな感じなんだろうか…?

 そんなことを考えながら武器屋へ入っていく俺の足取りは重かった。

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