ぼっち 【挿絵】
俺達がギルドに向かおうと城から出ようとした時、聞き覚えのある声に呼び止められる。エレナだ。
早足でこちらに歩いてくる様子だけでも育ちの良さが現れているのが俺でもわかる。まさにお嬢様と言った感じだ。
「昨晩は顔を出せず申し訳ありません。どうしても離れられない用事がありまして…」
エレナは何も悪くないのに申し訳なさそうにする。逆にこっちが申し訳なくなりそうだ。
「気にしなくていいって、むしろその日のうちに俺達の部屋を用意してくれてありがとな」
「いえ、そんな…」
俺達がそんな会話をしている横で、レアは「早くして欲しいんですが」と言わんばかりの目をこちらに向ける。でも俺は無視して続ける。
「エレナとはゆっくり話をしたいと思ってたんだ、こんなところで立ち話も何だからさ、今夜、俺達の部屋で夕食を食べながらでもどう?」
「まあ!一緒にお食事を?よろこんで!」
屈託のない笑顔を見せるエレナはとてもいい子だ。この子が女神なんじゃないか?
「じゃあ悪いけど今はこれで、もたもたしてっとレアが怒るからさぁ」
そう言ってレアの方を指差す。エレナもクスッと笑い、俺達を見送ってくれた。ほんとにどっちが女神かわかんねーなこれ。
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――ギルド前
「よし、じゃあまずは昨日レアが言ってた高ステータスソロプレイヤーってのを探すか」
レアにそう告げ、ギルドの中に入る。だが、探す必要はなかった。なぜなら
「おい、もしかしてアレか…?」
他の人が最低でも3人以上のパーティを組んでいるだけに一人で居る人はとても目立つ。今まで気が付かなかったのが不思議なくらいだ。6人は掛けられるテーブルに一人で座っている様子は見るに耐えない悲壮感がある。
「あれに話しかけるのかよ…」
正直、話しかける前から地雷臭が凄いのであまり近寄りたくはない。しかし、覚悟を決め…
「あの~、ちょっと相席いいですか~?」
飲み屋かここは!思わず自分にツッコみたくなるファーストコンタクトだ。
俺達が彼女に話しかけた瞬間、周りの目がこちらに向けられた。なにやらヒソヒソと話をしている。
「おいおい、サリアに話かけてるぞ…アイツら何考えてんだ」
「まさかパーティを組むつもりか?あの役立たずと」
「あいつには迷惑しかかけられた記憶ねーわ」
あいつら…、ギリギリ本人に聞こえるような声で陰口を言う周りに俺は腹が立ったが無視して続ける。
「俺達今、二人パーティなんだけど。もし、よかったら俺達とパーティを…」
そう話しながら近くで相手をよく見てみる。赤い髪…装備の様子から戦士か?騎士か?詳細をレアから聞いておけばよかったかな、でも相手のことは相手に聞くのが一番だし…
そんなことを考えていると
――ガッ
手を握られた。力強く。
「私をパーティに入れてくれるというのか!?あぁ、神よ…あなたは私を見捨ててはいなかったのですね…!」
彼女はそう言うと手を組み、神に感謝し始めた。
神様じゃなくて女神ならここに居ますけど。というかなんだこのテンションの上がりようは。
「あの~、まだ俺達のレベルも職も言ってないんだけど…」
「なに、関係ないさ。私に任せておけ。こう見えて攻撃力には自信があるんだ。レベルも高い」
少し不安になり、レアに確認を取る。
「おい、女神の力で彼女のステータスを見てくれよ」
「仕方ないですね…」
自分に関係あることならちゃんと働くんだな。
レアが彼女をじっと見つめると
「うんうん、やっぱり総合的なステータスは高いですね……ん?」
レアが素っ頓狂な声を上げた。嫌な予感がする。
「お、おい。どうした?」
「ATK(攻撃力)が非常に高いです。DEF(防御力)も高い。INT(魔力)が若干低い…でもこれは戦士の特性だからいいです。ですがこのDEX(命中)の低さは一体…」
あっ、俺は全てを察した。彼女は…
命中ガン無視の攻撃極振り戦士だ