兵士という仕事
ギルドでブロンズのバッジを受け取った俺達は、そろそろ日が沈むということもあり、アルスター城へと帰路についていた。
そして、警備兵の詰所の前を通り過ぎようとした時、ふと兵士達の話が耳に入ってきた。
「…なぜこんなことに…」
「あぁ…賊一人に…」
暗い様子で話をしているところを見ると、あまり良い話題ではないらしい。俺は”賊”という単語が気になり話を聞くことにした。
「あの~、もしかして、昨日の賊の話っすか?」
兵士達は訝しげな表情をこちらに向けるが、昨日、一緒に仕事をした仲間だと気づくと、話を教えてくれた。
「あぁ、君は矢で撃たれたあと気絶していたから覚えていないと思うが…」
「あのあと、賊を捕らえた時に兵士が一人、重症を負い…死んだ」
「なっ…」
俺は思わず声を漏らしてしまった。俺が気絶してる間にそんなことがあったなんて…
「取り押さえられた賊が苦し紛れに振り回した短剣が兵士の首元に…それから即座に治療を行ったが間に合わなかった」
「私は、この城で働いて長いが、兵士が怪我を負うことはあっても、死者が出たのは初めてのことだ。あぁ…なんて…」
俺にはショックでそれ以上の言葉が耳に入らなかった。下手をすれば自分が死んでいたと思うと悪寒が走る。俺は兵士という仕事を甘く見すぎていたのかもしれない。そして、それはレアも同じだ。
「なあ、レア。俺達、結構危なかったんだな」
「そうですね、ですが命を落とさなくて済んでよかったではないですか。”あなたは”」
こちらを向かずにレアはそう言ったが、少し冷たさを感じたのは俺の気のせいだろうか。