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地を守る者と天の使者【挿絵】

「君の探している物が見つかった」


 ある日、ギルドでフルストラに呼ばれた俺達は開口一番そう告げられた。


「え……っと……」


 寝耳に水とはこういうことを言うのだろうか。フルストラに呼ばれるのは別に珍しいことじゃない。だがまさかこんな用件だったとは思いもしなかった。


「急なことで驚かせちゃったかな。それに『見つかった』というのは語弊があった。在り処を知っている人が分かった、というのが正しいね」


 在り処を知っている人……確かにその人に話を聞くことが出来ればもう見つかったようなものだ。


「誰なんだそれは?」


「炎竜、氷竜と面識のある君には関係が深いかもしれない。渓谷に棲んでいる者達の中に地竜と呼ばれる種族がいる。その長が君の……いや、君の大切な人の探している物について知っているらしい」


「渓谷……地竜……」


 確かに竜族には縁があるらしくこれで三種族目になる。だが今までの傾向からすると恐らく少しクセのある相手の可能性が高そうだ。


「疑うわけじゃないけどその情報は確かなのか?」


「勿論、前回は曖昧な情報を伝えてしまったけれど今回は間違いないよ」


 はっきりと言い放った。彼女がこう言うんだ。疑う余地はない。


 それから俺達は渓谷の場所を教えてもらい、そこへ向かう段取りを皆で話し合うことにした。


「一応確認するけど、今回も二人は手伝ってくれるのか?」


 聞く必要も無さそうなことだが、念の為だ。


「もちろんですよ」


「ああ、力になろう」


 以前に同じように、常闇の森へ行った時に大変な目に合いながらも今回も快く手伝うと言ってくれるサリアとメイルには本当に頭が下がる。


 話し合った結果、あまり日が空くと状況が変わる可能性があることを考慮し、明日すぐにでも渓谷へ向かうということになった。俺も異論はない。今日一日あれば準備する物も用意できるだろう。


 ギルドからの帰りに必要な物を買い揃えた後、屋敷へ戻った俺は自室のベッドへと腰を下ろす。


「よし、こんなもんでいいだろ。レアはどうだ?」


「ええ、私も問題ないです」


 と言ってもレアが装備以外を携帯しているところを見たことはないが。


「けどさ、急にこんな重要な情報が入って驚いたよな」


「そうですね」


 レアの態度が素っ気ないのはいつものことだが今日は少し雰囲気が違う気がする。


「どうかしたのか?」


「……何でもありません」


 答える彼女は俯きがちに瞳を伏せる。ギルドで話をしていた時からそうだが、その様子から迷いのようなものを感じる。だがそれは今は触れられたくないことだと、その表情から察した。



 翌日、天候ばかりは運任せだったが雲一つない快晴だった。雨が降っていると余計な危険が増えるだけなのでとても助かる。


 屋敷を出て街の正門へ向かう。隣を歩くレアはいつも通りに見える。昨日は、突然のことで気持ちの整理がついていなかっただけだったのだろうか。


 正門には既に二人が待っていた。俺達が合流し、忘れ物がないことを確認すると降り注ぐ日差しの中へと歩き出した。目指すは地竜の棲む渓谷だ。



 渓谷は街から離れている。とはいえ、街から少し離れたところくらいの範囲はクエストで行き慣れているのでそれほど張り詰めた雰囲気もない。


「地竜って言ってたけどどんな種族なんだろうな」


「古い文献で読んだだけなので詳しいわけではないですが、地竜は炎竜や氷竜のように住処を移動するということはなく、一つの場所を守るというのを聞いたことがありますよ」


「一つの場所って渓谷のことだよな? けど守るって言ったってわざわざそんなところまで行って土地を荒らす奴なんているのか?」


「土地があればそこに棲息する動植物がいるからな。それらを含めて守るということだろう」


 なるほど、それなら納得だ。下手にそのへんの動物でも傷付けようものなら飛んで来るってわけだ。


 徐々に緑の増えてきた道を進んで行くと水のせせらぐ音が聞こえてくる。その音は木々の生い茂った山の中からで、地図と照らし合わせるとどうやら目的の場所に着いたようだ。


 草木を掻き分けていくと、開けた場所に出る。山を両断するように川があり、そこを流れる水の音が静かに響く。


 上流を見上げると先が見えないほど上へと続いている。ここが地竜の棲む渓谷なのは間違いなさそうだがこの広い山の中を探すのは骨が折れそうだ。


 ここまで歩き通しの俺達は川のほとりの岩場に腰を下ろす。


「とりあえず着いたのはいいけどこれからどうする?」


「そうですね……川沿いに登って行くくらいしか思い付きませんよ」


「手間はかかるが致し方ないだろうな」


「まぁそれしかないか」


 俺は立ち上がり、川を覗き込む。澄んだ水、辺りを覆う木々は山を透る風によって静かに葉を揺らす。こんなに綺麗な自然の中なら歩いて回るのも苦にならなそうだ。


「それじゃそろそろ……」


 俺は三人の方を向き、声を掛けようとしたがその途中で目に映る不釣り合いな色のそれに目を奪われた。


 透明な色をした水は上流から流れる朱によって塗り替えられる。それが血であると察したのは遅れて聞こえて来た何かの悲鳴によってだった。


 俺達は顔を見合わせて頷くとその声の方へと走って行く。川沿いの道は遮るものはないが坂になっているので上がどうなっているのか分かりづらい。とりわけ大きな坂を越えると


 そこにいたのは大小様々な生き物。熊や猪といった外見の動物や見たことのない動物もいる。その全てが無残に切り裂き貫かれ、鮮血を川へと注いでいた。


 その中に佇むのは人の形をした何か。人間ではないことをすぐに察することが出来たのは背中から生える白い翼からだ。


 全身を返り血によって朱く染め、呆けたように空を眺めている。俺達に気が付かないはずがないが興味を示す様子もない。


「お前は……何だ?」


「……」


挿絵(By みてみん)


 声を掛けてから少し遅れて、顔だけをゆっくりとこちらに向ける。顔までべっとりと血に覆われ、滴る血が目を洗っても瞬き一つしない。その姿は異常と言う他ない。


 何かを呟いたが聞き取れなかった。


 そして相手は飛び出すと、木々の中へ入って行った。隠れて俺達を狙うつもりか? そう考えたが草木を掻き分ける音は徐々に遠くなっていく。行動が読めない。あいつからは意思というものを感じなかった。


 その場の脅威は去ったが辺りには無残に散らばった動物達。食べるために仕留めたという様子でもない。じゃあなぜこんなことを……


 俺はせめて土に埋めてあげようと考え、その残骸に手を伸ばす。


 ちょうどその時、大きな影が太陽の光を遮った。見上げると同時に何かが地上へと降り立つ。翼を仕舞う動作に見覚えがある。恐らく俺達が探している地竜だ。本来なら向こうから現れてくれて幸運だと言えるだろうが、今は違う気がする。


 この朱に染まった現場とそこに居る人間、この状況ではまるで俺達がこの動物達を殺めたみたいだからだ。


「……」


 身を屈め、動物達に触れる彼女は慈しむような目をしていた。そして瞳を閉じると憎悪を湛えて俺へと顔を向ける。


「先に言っておくけどこいつらをやったのは俺達じゃない」


「何を馬鹿な……お前達以外にこの地へ足を踏み入った者はいない」


「なっ……そんなはずない! 白い髪をした女がここに居た。本当だ、信じてくれ」


「信じられんな……この地に棲む生き物以外が居れば地竜の皇である私が気が付かないはずがない」


「地竜の皇……本当なのか?」


 どうやら地竜には侵入者を知る力があるらしく、それで俺達のところへ来たようだ。だがなぜあの少女は探知されない?


「我らが守護する同胞の無念……貴様等の命を持って償わせてもらう」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺達はただお前に話が……」


 聞く耳などまるでもたず、彼女は大きく一歩、前へと大地を踏みしめた。


 小さな震動の後、地面が大きく揺らいだ。体勢を保つことすら困難な俺の懐へ彼女は入り込み、拳を体へと触れさせると同時に小さく息を吐き出した。


 触れられていた腹部に穴が開いたかと錯覚するほどの衝撃と共に俺は川の反対岸まで吹き飛ばされ、そこにあった大きな岩へと叩きつけられる。


 続くようにこちら岸へと一跳びで移った彼女は、俺の生死を確認するように見下ろす。


挿絵(By みてみん)


 体を動かすことも呼吸をすることも満足に出来ず、仲間を心配する暇もなく意識は途切れた。



 ……


 …………


 目を覚ましたのは暗い闇の中。夜……? いや、違う。遠くから光が差し込んでいる。


「気が付いたか」


 薄暗く誰か分からなかったが徐々に目が慣れてくる。そこは洞窟の中にある牢屋だった。


「あぁ、なんとかな……」


 そばにはメイルとレアも居た。まとめて捕えられているらしい。


「ワタルがやられてから彼女……地竜の皇は我々に大人しく捕まるかを聞いてきた。それを受け入れて今に至るというわけだ」


 俺がやられたのを見てサリアとメイルが何も思わなかったはずがないが、恐らく俺を治療することを優先してくれたんだろう。


「それで、奴はなんて?」


「とりあえず私達も事情を説明したら森の中を見回ってそれらしい何者かが見つからなければ私達がやったと判断する、ということになりましたよ」


 それはいくらなんでも条件が悪すぎる……。あいつは見たところまともそうじゃなかった。とてもこの地に留まっているとは思えない。


「それで見回りってのはいつ……」


「おい」


 鉄格子の向こうから俺を吹き飛ばした女が見下ろしていた。


「下僕達に辺りを調べさせたが結局は何も見つからなかった。貴様らが言ったことは虚言だったのだろう?」


「違う! 確かにこの目で見た。奴はもうここから逃げたってだけだ」


「作り話に何度も付き合うほど暇ではない。今すぐ全員この場で……」


 会話を遮るように悲鳴が洞窟内に響き渡った。


「何だ……?」


 地竜の皇は俺達に背を向け、洞窟の出口から外へと顔を出す。同時に洞窟へと何かが飛び込んできた。それが体と分断された地竜の翼の一部であることに気が付いたのは俺達よりも彼女の方が先だろう。


「早く逃げろ!」


 俺は格子を掴んで叫んだ。だが彼女は大きく踏み出し、白い髪を揺らす少女へと拳を突き出した。格子が震えるほどの衝撃が響いたが少女はその場から動くどころか何喰わぬ顔で見つめていた。


「馬鹿な……」


 その場から後ずさった地竜の皇へ、少女は歪な笑みを浮かべて近付く。


 やめろ……


「やめろ!」


 俺は格子の間から手を伸ばし、奉唱する。


「『風精霊魔法"精霊獣の牙"』」


 格子が邪魔だったが精霊魔法は少女の体を掠める。自分の体から滴る血を気に留める様子もなく俺を見つめ


 目が合った瞬間、俺はその場から飛び退く。


 少女の手に光る剣が目の前を通り過ぎ、何の抵抗もなく格子は滑り落ちた。


 この雰囲気、話が通じるわけがない。俺が手を前に出すと、隣でサリアが大剣を構え、サリアが詠唱を終え杖を構える。


 期せずして三人の攻撃が揃う。


 俺の風精霊魔法、メイルの火魔法、サリアの剣が少女を襲った。命を奪うことはしたくなかったがやむを得ない……


 「終わった」と、集中を切った俺の前で少女が一歩前に出た。その顔には狂気を含んだ笑顔。全身を悪寒が貫く。少女の剣の軌道上にいながら体を動かすことが出来なかったが、何かに押し出されるように地面に倒れた。俺を覆うように一緒に倒れているのはレア。


「油断しないで下さい。相手はこれくらいで死ぬようなことはありません」


「これくらいって……」


 メイルの火力は間違いなく高い方だったし、サリアの攻撃も芯で捉えていた。俺の風精霊魔法も奴を貫いていた。それなのに奴は意にも介していない。これ以上どうしろっていうんだ……?


「彼女を物理的な攻撃、魔法で倒すことは難しいです。が、今回は問題ありませんね、彼女は敵ではありませんから」


「は……?」


 何を言ってるんだ。狂ったように暴れまわっているこいつを見て"敵じゃない"とはどういう意味だ? 狂って……


「理解しましたか?」


「なんとなくな。で、どうやって正気に戻せば良いんだ?」


「今の彼女に足りないのは聖の力です。私が触れることでも可能ですが危険なのであなたに頼みます」


 簡単に言ってくれる。けどレアが危険に晒されるくらいなら俺でいい。


 俺が手を前に出すと、さっきとの雰囲気の違いに気が付いたのだろうか。少女は地面の蹴ると一直線にこちらへ駆ける。風精霊魔法よりも少し奉唱に時間がかかる。このままでは間に合わないと察した。たぶん無理だったんだろうな…一人だったら、な。


 眼前まで迫った少女の体を炎の槍と大剣が貫いた。それじゃこいつは死なないのだろうが動きを止めるには十分だ。


 聖の力とやらがどれだけあれば正気に戻るのかは分からない。だから折角だ。全部受け取れ。


「『熾風精霊魔法"精霊獣の光牙"』」


 十数本の光が少女を貫いた。常人なら影も形も残らないであろう程の精霊魔法。その中心いる彼女は身を震わせ立ち尽くしている。


 やがて役目を終えた精霊魔法は残光を残しながら静かに消える。少女は支えを失ったようにその場に膝をつき、そのまま地へと倒れた。


「これは……上手くいったってことでいいのか……?」


「恐らく。ですが拘束はしておいた方がいいでしょうね」


 その後、俺は放心している地竜の皇に話をつけ、少女を監禁できる場所を用意するよう頼んだ。もはや俺達の言っていたことは疑いようもなく彼女はすぐに別の牢屋へ案内してくれた。


 洞窟から外へ出て、眩い太陽に目を細めながら周囲を眺める。そこは小さな街と呼べる場所でここで地竜族は暮らしていたのだと理解出来た。だが今は怪我を負った地竜達が辺りに伏しており、とても見るに耐えるものではなかった。


 これを全てこの子がやったのか。と俺は意識を失っている少女を見て思う。瞳を閉じた彼女は天使のように見えるが再び目を覚ました時のことを考えると背筋が寒くなった。


 少女を檻に入れてから、俺達は改めて地竜の皇と向かい合う。


「最初に、我々を救ってくれたことを地竜を代表してこの、グライア・ディルオレイアから礼を」

 

 頭を下げる彼女からはもう敵意を感じない。


「本当に申し訳ない。最初から貴方がたの言うことを信じていればこんなことにはならなかっただろうに」


「頭を上げてくれ。仕方ないって、話を聞いてた感じではあいつの気配は感じられないんだろ?」


「その通りだ。恐らくこの世の生物ではない……奴は一体……」


「天使ですよ」


 俺も当然、見当が付かなかったがレアが代わりに答える。


「あの翼、そして近くで見て確信しました。天界で過ごしているであろう天使が何故地上にいたのかまでは分かりませんが。天使である彼女は下界では適応出来ません」


「なるほど……それで聖の力を失って狂ってしまっていたってわけか。けどとりあえずは落ち着いたってことでいいんだよな?」


「それは本人に聞いてみてはどうですか?」


 レアが指差す方を見ると、檻の中で少女は目を覚ましていた。俺は思わず身構える。


「ここは……どこですか……?」


 消え入りそうな声。怯えを含んだその表情には先程の面影は一切ない。


「……どうやら正気に戻ったみたいだな」


 俺は息をついて武器を下ろす。


 そして彼女へ、ここであったことを伝えた。


「私が……皆様を傷付けた……」


 信じられないといった様子の彼女だが、自分の服を染める朱に、いやがおうにも現状を受け入れるしか無かった。


「……ご迷惑をお掛け致しました。この命を以って償いを」


「それは少し違うな」


「え……?」


「償いってのは死んでするものじゃない。これから生きていく中でするものだよ」


 檻の扉を開け、手を伸ばした俺を見てレアはやれやれと溜息をつく。


「だ、そうですが?」


 レアはグライアへと顔を向ける。俺達が問題を解決したとはいえ、直接的に被害を受けたのは地竜達だ。彼女が首を横に振れば従わないわけにもいかない。


「我々を救ってくれたのは貴方がただ。その少女の処遇に関しては任せよう」


「だってさ。ほら、ずっとここに居たいのか?」


 手を振り、催促した俺の手を少女は少し躊躇した後、静かに手を取った。



 これでとりあえず諸々の問題も片付き、ようやく腰を据えて話をすることが出来るようになった。俺達が聞きたいのはもちろん……


「女神と対話する道具……か。それなら知っている」


「本当か!?」


 グライアが知っているはずということは分かっていたが実際に聞いてみるまでは不安だった。だがそれも杞憂だったようだ。


「なんという偶然だろう……それを持っているのはその少女、つまり天使の主だ」


 その場に居た全員が驚く。……ってなんで天使の子も?


「あれ? なんで天使なのに知らない風なんだ?」


「申し訳ありません……私の記憶は地に堕ちてからのものしか残っていないようで……」


「そうなのか。それで? どうやって会いに行けばいいんだ?」


「普通では天界へ足を踏み入れることは出来ない。だが貴方達は本当に幸運だ。天使には天界に還る力が備わっている。それを使えば可能だろう」


 本当にその力があるのなら、この天使の少女に出会ったのは運命としか言いようがない。ただ心配なのは記憶が無くても使えるのか、ということだ。


「……出来そうか?」


 頼む……出来ると言ってくれ……


 少女は真っ直ぐに俺を見つめ、静かに首を縦に振る。


「はい、可能です。力が戻ればすぐにでも」


 本当に良かった。これでもう実質的に目的は達成したようなものだ。あとは天界へ行って使わせてくれるよう頼めばそれでいい。


 それから俺達はグライアにお礼を伝え、レアの魔力の使える限り地竜の治療を行った。とはいえあまりに数が多く、とても全員を治療することは出来なかったが。


「何から何まで本当に助かった。重ね重ね礼を言う」


「困った時はお互い様だよ。なあレア?」


「そ、そうですね……」


 何気にレアの魔力の尽きそうなところって初めて見たな。


「初めて触れた時から感じていたのだが……貴方の体には竜の力が宿っているな?」


「ん? ああ、そうだよ。同じ竜族だとそういうのも分かるのか? 炎竜と氷竜の秘玉を錬成したのを飲んだらこうなった」


「そうか。なら丁度良い。お礼をどうしようかと考えていたが」


 グライアは胸元から見慣れた物を取り出す。秘玉ってみんなそこに仕舞ってるのかよ。


「これを持って行くといい。だが、錬成とは……?」


「知り合いにそういうのが得意な奴がいるんだよ。秘玉を錬成して飲めるようにしてくれるんだ」


「……? そのようなことをしなくてもそのまま体に取り込めば効果はあるはずだが」


「そうなの!?」


「あぁ、試してみるといい」


 俺は差し出された小瓶を受け取ると、蓋を開けて口へと傾ける。小さな固形物が喉を通るのが少し違和感があるが特に抵抗もなく胃へと落ちていった。


「これでいい……んだよな? ありがとなグライア」


 静かに頷く彼女は笑顔だった。

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