98話 てれすのうちへ
迷惑と思っててれすに連絡はしていなかったけど、本心ではすごくてれすのことが心配だったので、お昼休みの残った時間で連絡しておくことにした。
携帯の電源をつけて、連絡アプリMINEを起動する。
『てれす、風邪大丈夫?』
二日ぶりにてれすに送ったメッセージ。
すると、すぐさま既読の文字がついた。
『ええ、問題ないわ』
すぐに返してくれたということは、ものすごく体調が悪いということではないのだろう。昨日よりも悪化していたら、やめておこうと思っていたのでちょっと安心した。
話を長引かせないためにも、早速本題を伝えることにする。
『てれすのうちにお見舞い行ってもいい?』
『無理に来なくてもいいのよ?』
……これは気を遣ってくれているのだろうか。
遠回しに来ないでほしいと言っているとも受け取れるし、どっちだろう。MINEとかはすごく便利だけど、感情が微妙に読み取れないのが困るところだ。
なので、わたしの気持ちを素直に送ることにする。
『わたしは行きたいけど、てれすはどう?』
今度もすぐに既読はついたけど、返事はなかなか返ってこない。
画面の向こう側で、てれすが倒れてしまったのではないかと不安になる。しばしの間、画面とにらめっこしていると、やっとメッセージが送られてきた。
『……来てほしいわ』
よかった。
わたしは急いで指を動かして返事する。
『わかった! 放課後に行くね』
『あとでうちの地図を送っておくわ』
『ありがとう! あ、もうお昼休み終わるから、放課後にね』
『ええ』
携帯の電源を切ると、ちょうどチャイムが鳴ってお昼休みの終わりを知らせた。
午後の授業が終わったら、すぐにてれすの家に行こう。てれすの家には行ったことないけど、電車でいけばそんなに遠くはないはずだ。
てれすに会えるということだけで、なんだか心が温かくなるような気がした。
そして放課後。
わたしはすぐさま学校から出て、てれすの家へ向かった。駅の近くのコンビニで買い物をして、てれすに送ってもらった地図を見る。
「えっと、電車に乗って、この駅までか」
映画館に行った時以来の電車に乗って、てれすのうちの最寄り駅を目指す。
電車を降りてからは、マップを起動しててれすのうちへ向かった。
駅から数分歩くと、マップで示され、てれすに送られた地図とも一致した場所にたどり着いた。着いたのだが……。
「え、ここ……?」
目の前にそびえ立っているタワーマンションに、ただただ圧倒されていた。
何度も携帯の画面を確認するけど、ここで合っているらしい。
ここまで来て帰るわけにはいかない。てれすだって待っているのだ。わたしは覚悟を決めて、だだっ広いエントランスに入る。
オートロックを解除してもらうために、てれすのうちの番号を打ち込む。すると、聞き覚えのある声が聞こえた。
『はい』
「あ、てれす? 最上ありすです」
『ありす。すぐに開けるわ』
てれすの言葉通り、オートロックの扉がすぐに開いた。
とりあえず、間違えずてれすのうちまで来られたという安心で、安堵の息をつく。
てれす、なんだかすごいところに住んでるなぁ。
そんなことを考えながらエレベーターに乗って上昇していくこと少し。14階で止まった。
ここまで来ればあと少しだ。携帯を見ながら、てれすのうちの部屋番号を探す。
「あったあった、ここだ」
インターホンを押すと、ガチャッと扉が開いててれすが顔を出した。
「てれす!」
「ありす、ごめんなさい、わざわざ……」
「ううん、いいの。ほんとにわたしが来たかっただけだから」
「そう……。あ、入って」
「うん。おじゃまします」




