88話 ありすのおかげね
ご飯を食べ終えたので、わたしとてれすは帰ることにした。エスカレーターでフロアを下りて、駅を目指す。
「えっと、どっちから来たっけ……」
来るときと帰るときでは景色が違うので、どの方向から来たのかがわからない。来るときもてれすのおかげで早く映画館に行くことができたので、てれすを頼ることにした。
「てれす、わかる?」
「たぶん、あっちだと思うわ」
「じゃあ行こっか」
「ええ」
目的が終わったから帰るだけであって、時間としてはまだまだ大丈夫なので、電車の時間を気にすることもない。てれすと横に並んでモールを進んでいると、壁に「駅はこちら」という案内が貼ってあるのを見つけた。てれすの言う通りで正解だった。さすがてれす。さすてれである。
「こっちであってるみたいだね」
「ええ、少し心配だったけれど、よかった」
安堵の表情を浮かべるてれすから、周りに目を移すと、にぎやかでカラフルなお店が立ち並んでいることが映る。
「いろいろあるね」
「そうね」
「また今度さ、機会があったら来ない?」
「ええ」
今日は昨日の体育祭の影響ではしゃぐ元気はない。明日はぐったりゆっくり過ごすことにしよう。
「てれす、筋肉痛とか大丈夫?」
「大丈夫……ではないけど、心配ないわ」
「今日はほんとありがとね。明日はゆっくり休んで?」
「ええ。でも、本当に気にしなくていいから。ありすと一緒に出掛けることのほうが大切だもの」
「そう言ってもらえると、嬉しいな」
それから映画の感想を言いつつ、ショッピングモールを後にした。ここまで来れば、最寄りの駅は目の前にあるので迷うということはない。信号が赤だったので、青に変わるのを待つ。
信号が変わったのでそれを渡って、駅舎へと入る。それから切符を買って、ホームで電車がくるのを待つことになった。電光掲示板で確認すると、運がいいことにあと1分ほどで来るらしい。
電車を待っていると、ふいにてれすがつぶやいた。
「……行事って、もうなかったかしら」
「へ? あ、うん。一学期は特にはないね」
一学期も折り返しになって、あとは6月と7月の前半だけで夏休みだ。それまでに行事という行事はないはず。しいて言うなら期末テストくらいだけど、てれすは心配いらないから、あえて言う必要もないだろう。もしかすると、また一緒に勉強をすることはあるかもしれない。
「……そう」
「どうしたの?」
「いえ、体育祭だけでなくて、球技大会もそうなのだけど、進級したときはこうも行事に参加することになるとは思っていなかったから、なんだか不思議で」
てれすはふふっと優しく微笑んで、わたしに言う。
「きっと、ありすのおかげね」
「そんなことないよ」
「あるわ。でも、そんなありすがわたしは好きよ」
「えへへ、ありがと」
おしゃべりをしていると電車がやって来て、わたしとてれすは乗り込む。それから二駅進んで、わたしは立ち上がる。
「それじゃあ、わたしはここだから」
「今日は楽しかったわ、ありがとう」
「わたしのほうこそ。それじゃ、また学校でね」
「ええ」
てれすに手を振って、わたしはホームに降りる。てれすにもう一度手を振って、電車が動き出してから背中を向けて帰路についた。その道中思い出す。
「……」
……好きって言われて、少しドキッとしたのは秘密だ。
結城天です。こんばんは。
読んでくださった皆様、ありがとうございます。
このお話で映画編はおしまいです。
今後もありすとてれすをよろしくお願いします。




