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ありすとてれす  作者: 春乃
87/259

87話 友達なわけだし……

「は~、お腹いっぱい」


 さくっとジューシーだった鶏のから揚げ定食を食べ終えて、わたしは満足の息をつく。前に座っているてれすも和風ハンバーグランチを完食したようで、紙ナプキンで口を拭いていた。それからてれすはコーヒーを一口、優雅に飲む。


「ねぇ、てれす?」


「ん?」


「てれすってコーヒー好きなの?」


「そうね、嫌いじゃないかしら」


「なんかすごいね。わたし、コーヒーってあんまり好きじゃなくて。ほら、苦いし」


 砂糖とかミルクをたっぷり入れれば飲めるけど、そこまでするくらいならわたしは炭酸飲料を飲みたい。わたしが言うと、てれすは謙遜するように首を横に振る。


「すごくないわよ。別にこれ、ブラックではないし」


「でもかっこいいよ。なんていうのかな、大人っぽい」


「そ、そうかしら」


「うん」


 てれすは少し照れたように頬を染めて視線をそらす。まぁ、こうおうところがあるから、大人っぽくてもてれすはてれすだ。そう思って、ニヤついてしまうのをてれすに悟られないように、わたしはメロンソーダを飲む。


それから少しおしゃべりをして、ふとスマホで時刻を見ると、それなりに時間が経過していた。お昼を過ぎた時間にご飯にしたから、お客さん自体はそんなに混雑していないけど、あんまり長居するのもあれだろう。


「てれす、そろそろ帰る?」


「そうね」


 てれすも自分のスマホで時間を確認してうなずく。端っこに置かれていたお会計伝票を持って立ち上がると、てれすがわたしの服の袖を引っ張った。


「ありす、お金はわたしが」


「え、いいよいいよ。今日はわたしに付き合ってもらってるわけだし」


 てれすと一緒に休日を過ごせたというだけでわたしは満足だ。てれすの時間をもらっているわけだし、てれすにお金を払ってもらうわけにはいかないだろう。しかし、てれすはわたしの言葉に不服そうにほっぺたを膨らませていた。


「その言い方、なんか嫌だわ」


「へ?」


「別にわたしはありすに付き合ってるわけじゃないもの。わたしはわたしの意思でありすと一緒に映画を観たいと思ったし、そんなに気を遣ってほしくないわ」


「……」


「だから、そんなのは公平じゃないっていうか、おもてなしみたいなことは嫌。わたしとありすは一緒っていうか、同じっていうのかしら、と、友達なわけだし……」


 ……てれすの言う通りだ。少しでもてれすに楽しんでほしかったという気持ちは嘘じゃない。でも、気を遣いすぎていたのも事実だ。なんでだろうか、てれすに嫌われたくない、離れていってほしくないから自然とやってしまったのかな……。てれすはそんな子じゃないって、他でもないわたし自身が一番知っているはずなのに。てれすは嫌だったら嫌ってはっきり言ってくれるだろう。


「ごめん、てれす」


「いえ、わたしのほうこそ偉そうにごめんなさい」


「ううん、そんなことない。それじゃあ、てれすに甘えちゃってもいいかな?」


「ええ、任せて」


 てれすは嬉しそうにうなずいて、自分の胸に手を当てた。それからてれすに伝票を渡して、レジへと向かう。てれすがお会計を済ませてくれて、お店を出る。

 

「それじゃあ、帰ろうか」


「ええ、そうね」


 


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