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ありすとてれす  作者: 春乃
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86話 持ちつ持たれつ

 映画を観終わったわたしとてれすは、お昼ご飯を食べるために様々なご飯屋さんが立ち並んでいるエリアへとやって来た。和食洋食、中華からイタリアンまでなんでもありそうだ。


「てれす、どこにする?」


「そうね……」


 てれすは「うーん」と悩むように声をあげて、周りを見る。


「いろいろあって、悩むわね」


「そうだよねぇ」


 わたしもてれすと共に頭を悩ませる。そしてその結果、ファミレス的なところで食べることにした。てれすとはもうファミリーみたいなものだし、いい感じだろう。てれすも納得してくれたので、お店に入る。


 お店の中は、お昼の時間とは言っても平日なのでそこまで混雑していなかった。店員さんに案内されて、わたしたちは禁煙のテーブル席に座る。どれにしようかメニュー表を眺めていると、同じくメニュー表を見ていたてれすがわたしに尋ねる。


「ランチメニューはどれなのかしら」


「あ、これみたいだよ」


 冊子のようになっているメニュー表とは別に、ペラっとした紙にランチメニューは載っていた。それによると、月曜日は和風ハンバーグらしい。てれすは和風ハンバーグの画像を見てうなずいた。


「これにするわ」


「おっけー、わたしは鶏からにする」


 お互い食べるものは決まった。わたしは続けて、てれすに飲み物の相談をする。


「てれす、ドリンクバーはどうする?」


「わたしはどちらでも構わないわ」


「そう? わたしは炭酸を飲みたいからほしいんだけど」


「それなら注文しましょう?」


「うん。ありがと」


 これで食べ物と飲み物が決まったので、店員さんを呼ぶためにボタンを押す。もしかするとこのあとデザートを食べることになるかもしれないけど、それは食べながら考えることにする。


「ご注文お決まりですかぁ~?」


「唐揚げ定食1つと、今日のランチ。それとドリンクバー2つ」


「はい。ランチはパンとご飯選べますが?」


 店員さんが首をかしげて解答を待つ。しかし、てれすは悩んでいるのか人見知りをしているのかわからないけど、なかなか答えない。

とはいっても、てれすは人見知りするタイプではないし、むしろガンガンいってしまうタイプだ。その結果誤解を生んでしまうことも多い。高井さんとのけんかもそういったことが原因だと思う。だから、てれすなりにふんわりとした優しい言い方を考えていて、すぐに答えられないのかもしれない。

 助け舟を出してあげたいけど、てれすはどっちを食べたいのかわからない。わたしならお昼ご飯なのでご飯と答えるけど、てれすはどっちだろう。いっつもパンを食べているから、パンかもしれない。早く答えないと店員さんも困ってしまうので、てれすに確認する。


「てれす、どっちにする?」


「えっと、ご飯で……」


「ご飯でお願いします」


「はい、かしこまりました。では、少々お待ち下さい」


 にこやかに微笑んで、店員さんは奥へと消えていった。


「ドリンクバーいく?」


「ええ、そうね」


 立ち上がろうとしたとき、てれすがわたしを呼び止める。


「あの、ありす」


「どうしたの?」


「えっと、ごめんなさい。迷惑ばかりかけて」


「え? そんなことないよ?」


「いや、映画の後もそうだったし、今だって」


「ううん。別に迷惑だなんて思ってないよ。わたしはてれすと一緒に映画を観てご飯を食べられるだけで嬉しいもん」


「でも、わたしはありすに何もしてあげられないから……」


「わたし、てれすにいっぱいもらってるよ? 体育祭ってそうだし、球技大会だってそう。いろんなものをもらってる」


「そ、そう?」


「うん」


 まったく、てれすは何を言っているのだか。持ちつ持たれつ、だ。そういえば、最初はすごく嫌がってたというか、拒否されていた気がする。今はてれすと一緒にいるのは当たり前みたいになっているけど、そう考えると、一緒に出掛けているのはなんだか不思議だ。


「さ、ジュース取りにいこ?」


「ええ」


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