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ありすとてれす  作者: 春乃
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84話 てれすと映画

 わたしはポップコーンとジュースの入っているかごを持っているので、映画の半券はてれすに持ってもらって、指定されたシアターへと向かう。


「てれす、何番だっけ?」


「4番よ」


「おっけー。ありがと」


 数字が小さいということもあり、4番シアターはすぐに見つかった。入り口から中に入る。


「うわぁ、暗いね」


「そうね。あ、席はあっちみたい」


 まだ上映はされていないから真っ暗とまではいかないけど、それでもやっぱり暗い。半券を持っているてれすが、指定した席を探して歩いていくので、頼りになるなぁと思いながらわたしはついていく。

スクリーンの反対、後ろのほうに歩いていき、てれすは席を見つけて列に入っていく。そして列の真ん中のほうで、てれすは立ち止まった。


「ここね」


「はい、てれす」


 席に着いたので、てれすに飲み物を渡す。


「ありがとう」


「ううん」


 わたしも席に腰を下ろして、メロンソーダを一口。甘い味わいと始める炭酸。最高だ。メロンソーダを味わいながら前を見ると、スクリーンがすごく見やすい気がする。まだ始まっていないから何とも言えないけど、たぶんいい感じだ。


「いい席ね」


「うん。平日だからかな」


 てれすに返事しつつ、ポップコーンをてれすも食べられるように真ん中に置く。そして、1つ食べる。ますはオーソドックスな塩味をいただく。


「あ、美味しい。てれすもどうぞ」


「ええ、ありがとう」


 そう言って、てれすはキャラメル味を口に含んだ。そういえば、キャラメル味のポップコーンって食べたことがないかもしれない。そもそもポップコーンをあんまり食べないから、当たり前かもしれないけど。


「てれす、キャラメル味どう?」


「美味しいわ」


「ほんと? じゃあわたしも」


 キャラメル味を1つ口の中に入れる。もぐもぐ……。


「ほんと、美味しい」


 塩味にはない甘い感じが絶妙で、キャラメルが固まっている部分がものすごくいい。そして何が恐ろしいって、甘いキャラメル味を食べるとしょっぱい塩味が食べたくなるということだ。これは無限ループになってしまう。


「てれすも食べてね?」


「ええ、大丈夫よ。そのつもり」


 もともとてれすと半分分けするために買ったので、わたし一人が食べてしまっては元も子もない。お腹もいっぱいになってしまう。だから、てれすの言葉で安心してわたしはスクリーンのほうに顔を向けた。

 スクリーンでは、上映予定の映画のコマーシャルが始まっていた。あと数分で本編が上映開始になるので、わたしもてれすも含め、会場全体がしんと静かになる。コマーシャルが終わると、会場の明かりが消されてさらに暗くなった。スクリーンで映画を録音録画してはいけませんとポップコーンとパトライトがみんなに注意して、いよいよ映画が始まる。


 都会の女の子と田舎の男の子が入れ替わるという話だった。わたしはどんどん引き込まれて、映画に見入っていた。

 だけど、物語の中盤に差し掛かったころ、ふとてれすを思う。果たして、てれすは楽しんでくれているだろうか。わたしが楽しいからといって、てれすも楽しいとは限らない。もしかしたら、つまらなさそうにしているかもしれない。それこそ、寝てしまっているかもしれない。そう思って、隣のてれすをチラッと見る。


「…………」


 てれすは集中した様子で、映画を観ていた。わたしと同じ、もしかするとそれ以上に見入っているみたいだった。なんだか安心するけど、わたしが見ていることに気がついてくれなくて何の反応もないのは、少し寂しい。


 薄暗いなか、スクリーンの光だけが照らしているてれすはやっぱり美人で、素敵だった。

 ……って、何をわたしはてれすに見惚れちゃっているんだ。今見ないといけないのは映画のほうだ。周りが暗いくて、さらにこんなにてれすと距離が近いので、なんだかほっぺたが熱くなってすごくドキドキしてしまう。

 わたしは首を振って、映画に集中しようと、てれすからスクリーンへと顔を向けた。


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