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ありすとてれす  作者: 春乃
81/259

81話 電車の中で

「いってきまーす!」


 てれすと映画を観るため、わたしは予定通りの時刻にうちを出た。

てれすは寝坊でもするんじゃないかと思って、一応起きたときにてれすに「起きてる?」とMINEをしたけど、てれすは起きていたようですぐさま「起きてるわ」と返信がきた。だから、安心して電車に乗るために駅へと向かう。学校へは徒歩通だし、わたしは電車を使うことはあんまりない。

数分歩いて、駅にやって来た。平日のお昼前ということもあってか、思ったほど人の数は多くない。券売機を探して、切符を買うことにする。


「えっと、これかな?」


 目的の映画館のあるショッピングモールの最寄り駅はたしかここだったはず。我ながら頼りないと思いつつ、慣れない手つきで切符を買って、てれすも乗っているであろう電車がやって来るのをホームで待つことにした。携帯を取り出して、てれすが何号車に乗っているのか尋ねる。と、これまたすぐに既読がついて、てれすから返信が来た。


『1号車よ』


ということは、一番前か。てれすに了解と返事をして、わたしは一号車がやって来る位置まで移動した。それから少しして電車が来る。電車はスピードを落としながらやって来て、わたしの目の前、ガラス越しに座っているてれすの後ろ姿が見て取れる。

 降りる人に道を譲って、いざ電車に乗り込む。


「てれす、おはよ」


「あ、ありす。ええ」


「あ、もうこんにちはの時間かな?」


「どっちでもいいと思うわ。微妙な時間帯だもの」


「そっか。そうだね」


 言いながら、てれすの隣に座る。学校だといつもてれすの隣だから、てれすの近くにいるのはいつもと同じなんだけど、制服じゃないからなんだか新鮮だ。それに、よくよく考えるとてれすと一緒にどこかに行くのはこれが初めてかもしれない。


 電車が動き出す。てれすのほうを見ると、ちょうどてれすがあくびをしているところだった。昨日は体育祭だったし、そのあとうちあげもした。さらに今日はわたしに付き合ってもらうために朝早くに起こしてしまったから、無理はないかもしれない。


「てれす、眠たいの?」


「あ、いえ……」


「?」


「ええ。その、今日が楽しみであまり寝付けなかったというか……」


 てれすは少しだけほっぺたを染めながら言う。しかし、わたしと目が合うと、はっとした顔になって訂正する。


「あ、でも映画中には寝ないようにがんばるから」


「ううん、無理しないで? 眠たかったら寝ちゃっていいよ。終わったら起こしてあげるから」


「いいえ、せっかくのありすとのおでかけだもの。ありすとの時間を寝てしまうなんてもったいないわ」


 そう言ってくれるのは嬉しいけど、無理をされるとてれすの身体が心配だ。それに、わたしも寝てしまう可能性がなくはない。


「うーん、でも、ほんとにダメだったら寝ていいからね? わたしも寝ちゃうかもしれないし」


「そのときは、終わったらわたしが起こしてあげるわ」


 てれすは「まかせて」とばかりに胸に手を当てる。その様子に、わたしは「一緒に寝ればいいのになぁ」と思いつつ苦笑いで答えた。


「うん、よろしくね」


なんとか寝ないようにがんばらないと。わたしが寝て、てれすだけが起きててちゃんと映画を観るなんてことはダメだ。どうか映画の内容がおもしろいものでありますように。

そう心の中で思っていると、


「ありす、次かしら」


「えっと、そうだね」


 電光掲示板や、車内アナウンスで次に止まる駅を確かめて、わたしはてれすに返す。

 その駅で電車が停まって、わたしとてれすは電車とホームとの隙間に気を付けて電車から降りる。顔を上げると、目的の大型ショッピングセンターはすぐ目の前だった。


「よし、いこう」


「ええ」


 改札を出て、わたしとてれすは映画館へと向かった。


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