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ありすとてれす  作者: 春乃
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80話 映画に行こう

「けれど、一番近い映画館ってどこになるのかしら」


「えっと、ちょっと待ってね」


 わたしもそんなに頻繁に映画館に行くわけではないので、すぐには答えられず、携帯で調べることにする。ポチポチと携帯を操作すると、検索結果が出てきて、いくつかの映画館が表示された。


「一番近いのは、二つ先の駅にあるショッピングモールの中にあるみたい。てれす、ここでいい?」


 映画館によってはスクリーンの感じとか雰囲気とか食べ物とかいろいろなものが違うだろうから、てれすに一応確認する。わたしは特にどこでもいいので、てれすの好きな映画館があるのなら、そっちに行きたい。


「ええ。別にどこでもいいわ。映画はあまり行ったことがないから、どこの映画館がいいとかわたしはわからないから」


「じゃあ、ここにしよっか。映画に行くの、高校生になってからは初めて」


 もっと近いところにあればもっと行くかもしれないけど、あんまり映画館には行かない。映画はレンタルとかテレビでの放送を見るほうが多かった。

 続けて上映時間を調べようとしたとき、ふと携帯の時刻が目に入った。


「うわ、もうこんな時間。てれす、大丈夫?」


「え? あ、もうこんなに経っていたのね。そろそろ帰るわ」


「うん。詳しいことは、あとでMINEするね」


「わかったわ」


 今日は学校が終わってからだったから、いつもより時間が早く過ぎていった気がする。とはいってもてれすを引き留めるわけにはいかないし、明日また会えるのだ。それに、明日はゆっくりてれすと一緒にいれる。

 

 「お邪魔しました」と帰っていくてれすを見送って、わたしは上映時間や電車の時刻を調べることにした。それからお風呂などを済ませた夜。


「よし、てれすにMINEを……」


 明日の約束の詳細について連絡しようと、連絡アプリを開いててれすとのトーク画面に文字を打ち込んでいく。文面を考えながら文字を打っていると、もうこれは電話したほうがいいのではないだろうかと思えてきた。なんだか長文になりそうだし、直接話したほうが伝えやすいし、なによりてれすの声を聞くことができる。

 打ち込んでいた文章を全て消して、ポチッと通話ボタンを押した。数秒の音楽ののちに、てれすが通話に出る。


「もしもしありす?」


「あ、てれす? いま電話大丈夫?」


「ええ、問題ないわ」


「よかった。明日のことなんだけど、お昼ご飯はショッピングモールで食べる?」


「どちらでもいいわ」


「どちらでもかぁ」


 正直、わたしもどちらでもいいので、聞き方を変えてみる。


「えっと、じゃあね。11時半から映画を観てそのあとご飯がいいか、先にご飯を食べて14時から映画を観るのどっちがいい?」


 てれすは少しの間、考え込むように「うーん」と悩んでいたけど、すぐに答える。


「わたしは、先かしら」


「映画を?」


「ええ」


「おっけー、11時半に映画っと」


 頭の中で逆算して、家を出る時間と、電車の時間を考える。


「てれす、電車で行くよね?」


「そのつもりだけど」


「それじゃ、電車の中で合流だね。来るときに、何号車に乗っているか教えてくれる?」


「わかったわ」


 てれすがうなずいて、決めるべきことは全て決まった。お昼ご飯については明日でいいだろう。


「じゃあてれす、また明日ね」


「ええ。あ、あの、ありす……」


 電話を切ろうとしたら、てれすがわたしの名前を呼んだので、首をかしげる。


「どうしたの?」


「明日、その、楽しみにしてる……」


「うん、わたしも! じゃあね、おやすみ。てれす」


「ええ、おやすみなさい。ありす」


 通話終了のボタンを押して、アプリを終了する。


「よし、今日は早めに寝よう」


 明日遅刻しないように、わたしはわくわくする気持ちを抑えながら、早めの就寝をするべく、寝るための準備を行うのだった。


結城天です。こんにちは。

読んでくださり、ありがとうございます。

ここから映画を観るお話になります。

名付けるなら映画編、もしくは映画デート編でしょうか。

これからもありすとてれすをよろしくお願いします。

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