77話 レッツ焼肉パーティー 前編
ダイニングキッチンにやって来ると、それに気がついたお母さんがわたしに声をかける。
「ありす、ホットプレートやっといて」
「はーい」
わたしは返事をして、ホットプレートを棚から取り出してテーブルへと運ぶ。ホットプレートは意外と大きくて重たい。なんとかテーブルに運んで、からまっているコードをほどく。
「てれす、コードさしてくれる?」
「ええ」
てれすにプラグを渡して、コンセントに差し込んでもらう。そのコードをホットプレートとつなげて、火力の調節をする。けど、焼き肉をするのは久しぶりなので、丁度良い火力を忘れてしまっていた。
「お母さん、どのくらいの強さにすればいいの?」
「んー、一番強いのでいいわよ」
「はーい」
ポチッとボタンを押して、火力を一番強いものにする。プレートが温まって来たところで油を入れて、準備万端。あとはお肉やら野菜やらを待つだけとなる。
このまま突っ立っていてもやることはないし、わたしはイスを引いて座ろうとした。すると、てれすがどうしたらいいのかわからない、という不安そうな顔で立っていたのでわたしの隣の席に座るように声をかける。
「あ、てれす、ここ座って」
「ええ、ありがとう」
てれすはうなずいて、少し遠慮がちに腰を下ろした。わたしも座る。と、お母さんが切り終えた野菜たちを差し出してきた。
「ありす、てれすちゃん。はい野菜。先にこれ焼いてて」
「おっけー」
おかあさんから野菜を受け取って、菜箸を使ってじゅーじゅーと焼いていく。てれすにも一緒に焼いてもらって、プレートの上はあっという間にキャベツ、玉ねぎ、ニンジン、カボチャなどでいっぱいになった。
さすがにすぐには食べられないので、それらがきちんと焼けるまで見守る。少しして。
「もういいかな?」
「いいんじゃないかしら」
「じゃあ食べよう。えっと、たれは……」
テーブルの上に並べられているたれを見て、どっちにしようか悩んでわたしの手が止まる。少し考えて、初めはオーソドックスに甘口の普通のたれにした。お皿にたれを注いで、いい感じに焼けているカボチャをつけて食べる。
「美味しい」
「あ、ほんと」
わたしと同じく普通のたれでキャベツを食べたてれすも感想を漏らす。まだ焼肉ではなく焼き野菜だけど、すごく美味しい。でもあれだ。ちょっと物足りない。お肉ではなく、まだ焼肉には必要なものがある。
「白ご飯がほしいなぁ」
「もうすぐ炊けるわよ」
「ほんと? やった」
お母さんの返事を聞いて、わたしはしゃもじを取って来て、いつご飯が炊けてもいいようにスタンバイ。数分後。ピーという音が鳴ってご飯が炊けたことを知らせてくれたので、炊飯器を開ける。
蒸気がいっぱいに広がって、なかからつやつやとしたお米が姿を現した。いい感じにご飯を整えて、食器棚にお茶碗を取りに行く。
「てれすもご飯いる?」
「いただくわ」
「おっけー。お母さんは?」
「わたしももらおうかしら」
自分の分も合わせた3つのお茶碗を手に、わたしは元の席に戻る。みんなの分のご飯もよそっていると、ちょうどお母さんがお肉を持ってわたしとてれすの正面の席に座った、ちなみにお母さんの隣、てれすの前の席はお父さんの席だ。
「はい、お母さん」
「ありがとう」
「はい、てれす」
「ありがとう、ありす」
最後に自分のもよそって、椅子に座る。やっぱり焼肉には白ご飯がないとね。焼肉と言えばみたいなところあるし、白ご飯はすごく美味しい。
白ご飯を片手に野菜を食べていく。お肉も追加したいけど、野菜が多すぎてまだお肉は焼けそうにない。三人でもぐもぐぱくぱく野菜を食べていく。
「そろそろお肉焼く?」
「そうね」
お母さんからお肉のトレイを受け取って、それを開封する。まずは鶏肉から焼いていくことにする。たしかよく焼かないといけないというか、火が通りにくいとかって聞いたことがあるような気がしたからだ。もしかしたら気のせいかもしれないけど。
お肉の登場で、ここからが本番。てれすはお母さんもいるからか少し緊張しているように見えた。楽しく食べてもらうためにわたしがなんとかしないとね。
あけましておめでとうございます。結城天です。
今年もありすとてれす、さすてれで更新していきます。
改めて、皆様よろしくお願いします!




