75話 おつかいの帰り道
お会計を済ませて、レジ袋に買ったものを綺麗に入れてわたしとてれすはお家を目指した。入り口で買い物かごを元に戻して、てれすの持っている袋を片方受け取ろうと、手を伸ばす。
「てれす、片方かして」
てれすの持ってる袋は、お肉を土台にしてその上にお菓子やプリンを入れた袋と焼き肉のたれが入った袋の二つ。てれすが率先して袋を持ってくれたからとはいえ、買い物かごを返してわたしも手が空いているので、どちらかを持つのが当たり前だろう。
しかし、てれすは首を振って、そのまま歩き始める。
「わたしが持つわ」
「え、いいよいいよ。どっちか渡してよ」
「いいえ。このくらいはさせてほしいわ」
「でも……」
てれすの気持ちもわからなくはないけど、なんか、それは嫌だ。わたしはてれすに変な気遣いはしてほしくない。てれすは強い意志のこもった瞳でわたしにはっきりと言い切る。
「まかせて」
「うん、それなら、お願いしようかな……」
あぁ、ダメだ……。てれすがわたしのためを思ってくれていると思うと否定できなかった。それに、いつもよりもぐいぐいと迫って来て、絶対にわたしがやるという積極的なてれすが珍しくて、なんだか嬉しかった。
てれすはこくこくっとうなずいて、少し誇らしげそうな顔をして再び歩き出した。とはいっても、やっぱり重たいらしく進んでいくにつれて歩くスピードが徐々に落ちて、袋も傾いているように見える。
「てれす大丈夫?」
「大丈夫よ」
「わたしも半分……」
「大丈夫よ」
見た感じは全然大丈夫そうには見えないんだけど、てれすはわたしが手伝うことをかたくなに拒む。それだけ意志が固いということなのだろうか。もちろんてれすのことも心配なんだけど、傾いてきている袋の中身のことも心配だ。だから、もう一度てれすに確認する。
「ほんとに大丈夫?」
「ええ。まかせて」
「そ、そう?」
「ええ」
てれすがそう言うので、わたしは渋々うなずいた。が、再度歩き始めてすぐ、てれすがわたしのことを呼んだ。
「あ、ありす……」
「持とうか?」
わたしが尋ねると、てれすは少しの間をおいてから素直に首肯した。
「お願い」
「うん」
てれすから片方の袋を受け取る。やっぱり最初からこうするべきだった。てれすが悪いことをしたわけじゃないし、かといってわたしがてれすのために荷物を持ってもらうようなことをしたわけでもない。
「ありす、ありがとう」
「ううん。普通だよ。てれすはもっとわたしを頼ってよ。気を遣わなくていいからさ。あと、わたしもてれすのことを頼るし」
いくら友達とはいっても、最低限の礼儀みたいなものは必要だと思う。だけど謙虚過ぎたり、遠慮しすぎたりするのはなんかわたしが嫌だ。もっとてれすと仲良くいい感じになりたい。
「……わかったわ」
「うん」
それからてれすとおしゃべりしながら、そんなこんなでお家に帰って来た。いよいよ、打ち上げの焼肉開始だ。




