74話 たれともう一つ必要なもの
お肉とお菓子を買い物かごに入れたわたしとてれすは、焼き肉のたれを求めてふりかけやドレッシングが置いてあるコーナーにやって来た。端っこから見ていくと、「焼き肉のたれ!」というポップを発見する。
「あ、あった」
「いろいろな種類があるのね」
「うん、わたしもびっくりしてる……」
メーカーによる違いはあれど、種類自体はそんなにないと思っていた。だけど、ここに置いてあるのはオーソドックスなものから塩だれやら何やらとパッと見ても5種類くらい、よく見れば10種類はあるだろう。
「どれがいいのかなぁ」
「……わからないわ」
わたしたちは再び頭を悩ませる。そしてわたしは、赤いラベルのものをチョイスした。
「これでいっか」
CMで何度も見たことがあるから、有名なのは間違いない。だから、変なことにはならないだろう。というか、たれで変わるものなのだろうか。そりゃあ、塩だれとの差はわかるけど、同じ系統のものは、一般人にはわからないような気がする。
買い物かごに入れる前に、てれすにも一応確認しておく。
「てれす、これでいい?」
「ええ。いいと思う。……ありす、それ中辛って書いてあるけど」
「え? あ、ほんとだ」
てれすに指摘されて初めて気がついた。適当に取ったから、気にしていなかったけど、焼き肉のたれにも、カレーみたいに辛さがあるらしい。だとすると、甘口にしておくべきかもしれない。
「甘口にするね」
買い物かごに入れようとしていた中辛のたれを棚に戻して、その隣にある甘口のたれをかごに入れる。
「他のも買っとく?」
「そうね、もう一つくらい……」
「じゃあ、塩だれにしておこう。てれす、いい?」
一列下の棚から、同じメーカーの塩だれを取って、てれすに見せる。すると、てれすは首肯した。
「ええ。わたしもそれがいいと思ってたわ」
「ほんと? よかったぁ」
塩だれをてれすの持っている買い物かごに入れて、てれすに尋ねる。
「他にいるものある?」
「ないんじゃないかしら」
野菜とかはお家にあるし、バーベキューではないのでお皿も紙コップもいらない。てれすの言葉と、かごの中身を見てわたしもうなずいた。
「そうだね。じゃあお会計して帰ろっか」
「ええ」
それから、わたしたちはレジへと向かったけど、その途中に重大なことを思い出した。
「あ……」
「ありす? どうしたの?」
「忘れてた」
「なにを?」
「プリン」
「プリン?」
わたしが言うと、てれすは首を捻った。
「食後のデザートはいるよね」
「い、いるのかしら……」
「いるよ!」
「でも、お菓子買ってたじゃない」
「それはそれ。これはこれ!」
わたしはてれすを引っ張って、パンのコーナーを通り抜けてデザートのコーナーに向かう。洋菓子に和菓子。たくさんの種類のお菓子を選びながら、てれすに質問する。
「てれす、甘いもの好きだよね?」
「ええ。好きだけれど……」
「じゃあこれね」
てれすの回答を聞いて、わたしはプリンを3つ買い物かごに入れた。今度こそ、これで買い出しは終了である。
「よし、お会計に行こう」
「こんなに余計なものを買って、よかったのかしら」
「いいのいいの。だって、てれすプリン好きでしょ?」
「好きだけど……」
「だったらいいじゃん。さ、早く帰ろう?」
「……ええ」
お母さんに貰っておいたお金で会計して、わたしとてれすは家を目指した。
打ち上げ焼肉大会楽しみだ。




