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ありすとてれす  作者: 春乃
72/259

72話 お肉を選ぼう

 それから少しして、わたしとてれすはスーパーマーケットへとやって来た。夕方ということもあって、たくさんの人でにぎわっていた。

 正面の自動ドアからお店の中に入る。そして、入り口の近くに重ねておいてある深い緑色の買い物かごを取ろうと、手を伸ばす。すると、同じく買い物かごに手を伸ばそうとしていたてれすと手が重なった。


「あ、ごめんてれす」


「いえ、わたしこそ……」


 てれすは少しだけほっぺたを染めて、手を引っ込める。それを見て、わたしは買い物かごをとった。ここは入り口なので、あまり長いこといると、他のお客さんの迷惑になってしまう。

 

「てれす、いこ?」


「え、ええ」


 うなずいたてれすと、野菜や果物などが並べられている入り口付近のコーナーを通って、奥にある精肉コーナーへ向かう。すると途中で、てれすがわたしの名前を呼んだ。


「あの、ありす?」


「どうしたの?」


 わたしが首をおかしげると、てれすはわたしの持っている買い物かごを自身のほうに引っ張りながら言った。


「かごくらいはわたしが持つわ」

 

「それじゃあ、お願いしようかな」


 てれすはきっと、自分が何もしないことが嫌だったのだろう。てれすの言葉に甘えることにして、買い物かごを任せると、てれすは嬉しそうにうなずいた。


「まかせて」


 それから精肉のコーナーに来て、焼き肉用のお肉を物色する。


「てれす、どれがいいとかわかる?」


「わからないわ」


「わたしもわかんなくて……」


 意外と種類が多くて、困った。種類も多いし、糸つの種類でもたくさんのパックがあって、どれがいいのかいまいちわからない。お母さんなら、見ただけですぐに判断できるのかもしれないけど、今はお母さんはいない。だけど、できるだけ美味しいお肉を食べたい。

 たくさんのお肉とにらめっこしながら、頭を悩ませていると、てれすが携帯を取り出した。


「調べてみるわ」


「ありがと。お願い」


 てれすは慣れた手つきで携帯をポチポチと操作して、


「あった。キレイな赤色で、濃さがばらついていないものがいいって」


「うーん、これとか?」


「たぶん。あと、水分が出ているのはあまり良くないって書いてあるわ」


「これはやめといたほうがいいってことか」


 そんな調子で、てれすと相談しながらお肉をかごに入れていく。それなりの量になったところで、てれすの好みを聞いていなかったことに気がついた。


「そういえば、てれすはどのお肉が好きとかってある?」


 一応、どのお肉もバランスよく買ったつもりだけど、てれすが好きなものがあるのなら、それを多めにするとか、苦手なのがあれば減らすとかを、今ならできるので尋ねる。

 てれすは少しだけ考えるような仕草を見せて、首を振った。


「特にないわ」


「ほんと?」


「ええ」


「それなら、こんなもんかな?」


 わたしとてれすとお母さんの三人で食べるのなら、このくらいだろう。少し多いかもしれないけど、わたしとてれすはすごくお腹が減っているからなんとかなるはずだ。余っちゃっても、たぶん大丈夫だと思うし。

 てれすの持っている買い物かごの中を見ながら言うと、てれすもうなずいた。


「そうね」


「よし、それじゃあ次は――」


 他に必要なものを買いに行こう、そう言おうと思ったけど、瞳の先に映ったものに気を取られて、言葉を途中で止めた。


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