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ありすとてれす  作者: 春乃
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70話 何が食べたい?

てれすと別れてから少しして、わたしはお家に帰ってきた。お母さんが車のエンジンをきって完全に車が停止するのを待ってから、ドアを開けて降りる。

それから家の鍵を取り出して、ドアを開けて「ただいまー」というけれど、もちろん返事はない。お母さんは今車から降りたところだし、お父さんは仕事なので当たり前だ。

靴を脱いで、わたしは真っ先にシャワーに向かった。こけたということもあって、なかなかに汚れてしまっている。

髪の毛をバスタオルで乾かしながら、お風呂場から出てくると、お母さんがわたしに尋ねた。


「ありす」


「なーに?」


「打ち上げするのはいいけど、何にするの?」


「んー、なんでもいいかな」


 わたしが言うと、お母さんは困ったように苦笑を浮かべた。


「それが一番困るのよ~」


「なんでもいいの?」


「なんでもいいわよ。どんときなさい」


 お母さんはそう言って、自分の胸にどんと手を当てる。

 なんでもいいのかぁ。まぁでも、打ち上げと言ったら、だいたい相場は決まっているだろう。


「じゃあ、焼き肉がいい」


「おっけー。あ、でも待って」


 お母さんは考えるようなしぐさを見せてから、重大な事実をわたしに告げた。


「冷蔵庫にお肉がないわ」


「え? どうするの? それじゃ野菜炒め大会になっちゃうよ」


 焼き肉なのにお肉がないのはダメだろう。例えるのなら、カレーライスなのにカレーがないみたいなことだ。それではただの白ごはんである。白ごはん、美味しいし、好きだけどね。

 お母さんもそのことに頭を悩ませていた。


「どうしようかしら。今から買いに行くっていうのもねぇ」


 体育祭に来てくれていたから、お家のことがあまりできていないんだろう。お母さんは「うーん」と困った声をあげている。

 あ、お母さんがダメならわたしがいけばいいのではないだろうか。そうしよう。てれすもさそって一緒に行けばいい、というか、てれすと一緒に行きたい。

 わたしはお母さんに提案する。


「それなら、わたしとてれすで行ってくるよ」


「ほんと?」


「うん」


「じゃあお願い」


「はーい」


 勝手に決めちゃったけど、てれすならきっと頼んだら一緒に行ってくれるだろう。体育祭で疲れているところ申し訳ないけど、お願いするとしよう。断られたら、一人さみしくスーパーに行けばいいし……。


 それから髪の毛をドライヤーで乾かして、てれすが来るのを待った。お母さんの手伝いで洗濯物を内の中に取り込んだり、その他にもいろいろしたりしていると、やがてピンポーンとインターホンのチャイムが鳴った。


「はーい!」


 きっとてれすが来たのだろう。わたしは返事をして、急いで玄関に向かう。インターホンを覗くと、私服姿のてれすがドアの前に立っていた。その顔は、なんだか少し緊張しているみたいだ。

 わたしはガチャッとドアを開ける。


「やっほー、てれす」


「あ、ありす。こんにちは」


「さ、入って」


「お邪魔します」


 てれすは礼儀正しくそう言って、玄関に入って来て扉を閉める。それから、わたしは靴を脱ぐ前に、てれすに一緒に買い出しに行こうと頼むことにした。


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