7話 おとがめは……
4時間目のチャイムが鳴ってすぐ、わたしはてれすを連れて教室へどたどたと大急ぎで戻っていた。
……やっぱり怒られるよね。今までサボりなんてしたことがないから怖い。どうなるのか、まったくわからない。
アニメや漫画だと、水の入ったバケツを持って廊下に立たされてるよね。嫌だなぁ。
そんな風にいくら考えても、教室に戻らないことにはお話にならない。
息を切らしながらやっと教室が見えてくる。
余計なことを考えると入りずらいので、走っている勢いそのままに、わたしは教室の扉を開け放つ。
「サボってすいませんでした!」
瞬時にわたしは謝罪する。こういうときは、まず謝罪。誠意を見せねば。
教室に入った瞬間、いっせいに教室中の視線がわたしへと向けられる。
ああ、ガッカリされているのだろう。学級委員のくせに、と。
そう思っていたけどなんだか違うみたい? どうやら、みんなの目線はわたしではなく、わたしの後ろ、つないだ手の先にいるてれすに向けられていた。
「最上さん、高千穂さん。早く席に戻りなさい」
先生に言われ、わたしは慌てて、とたとたと自分の席に戻る。……相変わらず、てれすは堂々といつも通り戻っていったけど。
「今回だけは最上さんの日頃の行いに免じておとがめなしにしてあげます」
ため息まじりに先生が告げる。
おとがめはないの? よかったぁ……。
「それじゃ、続きからやるから、教科書開けなさい」
先生の言葉に急いで教科書を開いて授業の準備を整える。
ふと、一緒に遅れてきたてれすが気になり、てれすを見てみる。
てれすは授業に出ているとき、外を見ているか寝ているかのどちらかだ。今回は前者のようで、つまらなさそうに窓の外を眺めている。
そういえば、この4時間目にてれすをみるのはいつぶりだろう。
もしかしたら、初めてかもしれない。
そう考えると、なんだかよかったのかも。そんな気がしてきた。ほんと、クビにならなくてよかったし。
でもでも、サボりのおかげで、てれすの知らなかったところ、新しいことをたくさん知ることができた。
例えば。……ダメだ、あのことしか思い出せない。今になっても、あれは理解できていない。どういうことだったのだろう。ほんとにただのお代だったのだろうか。
……少々腑に落ちないところもあるけど、お話するって目標はきっちり達成できた。いや、名前で呼び合うようになったのだから、出来すぎというものだろう。
そんなふうに、屋上でもサボりを思い返していると、なんだかニヤけてしまった。……危ない人と思われないだろうか。
今は、授業に集中しよう。
もっとてれすと仲良くなりたい。そんな想いがたしかにわたしの中にある。そう感じながら、わたしはペンを手にとり、ノートを書き始めた。